就職活動が本格的にスタートしました。面接に臨む前に、企業研究などの準備をどうするか困っている方もいるかもしれません。そこで今回は、企業分析を専門としている証券アナリストに、どのような資料をもとに調べていけばよいかを聞いてみました。

はじめに

「就活中に企業研究は欠かせない!」とよく言われますが、実際は「どうやって企業分析をしたらよいかわからない」、「どのような資料やデータを見たらよいかわからない」という場合も多いのではないでしょうか。

就活情報誌などでは、アニュアルレポートに目を通すようにという記述も目にします。ただ、アニュアルレポートは以下で説明する決算資料をまとめたものです。したがって、アニュアルレポートが公開されるのは、各種決算資料の中でも遅いタイミングになってしまいます。

その1:決算短信

決算短信は「けっさんたんしん」と読みます。これは、企業が決算発表をしてから約1カ月後に公表する資料です。企業が発表する決算資料には、有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)という決算短信よりも詳細な決算資料がありますが、就活や転職で決算状況を知る上では、決算短信でも十分でしょう。

決算短信は3カ月に1度の頻度で開示されるので、最新の四半期決算の内容と直近の通期の内容(12カ月の決算内容を示したもの)を確認しておくとよいでしょう。

決算短信を見る際のポイントは、まず損益計算書では売上高や営業利益、営業利益率などから収益をしっかり稼いでいるかを確認します。また、1ページ目の一番下にある、発行体から開示される連結業績に関する見通しも重要です。少なくともこれらを確認しておくだけで、その企業がどのような状況にあるかを把握できると思います。

日本の製造業などでは、なぜか営業利益率5%を目指すという企業が多いのですが、これは、景気が冷え込んだり、為替レートが円高に振れたりすると赤字になりかねない水準とも言えるので、利益率が安定して10%を超えている企業は要注目です。

さらに、貸借対照表で総資産に対する株主資本の比率や負債の比率を知っておくとよいでしょう。もちろん株主資本比率が高い企業は財務体質が良好と言えますが、昨今、あまり現金を持ちすぎると株主から配当を増やせと指摘されることも多いので、そうした傾向も考慮しながら見ると面白いでしょう。

その2:決算説明会資料

決算発表と同時に、上場企業は主に機関投資家向けの決算説明会を行うことがあります。その際に、決算短信よりも事業内容がさらに詳しく解説されている決算説明会資料が開示されます。

必ずしもすべての企業が投資家向け説明会を行い、説明会資料を開示するわけではありませんが、仮に開示しているのであれば参考にしてみてはどうでしょうか。

決算短信や決算説明会資料は「IR(アイアール)資料」とも言われ、上場企業であれば各社ウェブサイトの「投資家向け情報」や「IR情報」といった項目から閲覧できます。今まで知らなかったという方は一度見てみてください。

その3:会社四季報

会社四季報は投資と無縁だった学生には馴染みがないかもしれませんが、個人投資家のみならずプロ投資家と呼ばれる機関投資家も重宝する書籍です。

上場企業は3500社近くありますが、そうした上場企業を網羅的にかつ四半期ごとに調査し、過去の業績や将来の予想、また従業員数や給与水準、主な株主などを記載していますので、就活を始める前に手元に置いておきたい一冊です。

会社四季報をどう使えばよいかについては、話が長くなるので今回は省きますが、自分が面接を受けようとする企業だけではなく、同じ業種・産業の企業についても横断的に目を通すことができるので便利です。

さらに情報収集に関して意識の高い方へ

冒頭で触れたアニュアルレポートは、多くの人が読めるように情報が選別され、わかりやすく書いてある一方、発行までにタイムラグがあるため必ずしも最新の情報というわけではありません。

そのアニュアルレポートよりもやや早めに公開される決算資料として「有価証券報告書」がありますが、ここには詳細な決算情報が記載されており、証券アナリストが初めに目を通し、また最後にも目を通すような資料です。

就活生が読み込むには詳細すぎるかもしれませんが、面接は情報格差を生み出せば有利に展開することができるものです。時間があるときにでも目を通してみてはいかがでしょうか。

LIMO編集部