4. 65歳以上世帯「就業率」と「平均給与」はいくら?
近年は、定年年齢引き上げや定年制度の廃止、70歳までの雇用機会拡大などシニアの労働環境が大きく変化しています。
働く高齢者を見かける機会も増えたように感じます。現に、高齢者の就業率は上昇傾向にあるようです。
内閣府の資料より、高齢者の就業率を見ていきましょう。
4.1 シニアの就業率は上昇推移
内閣府「令和5年版高齢社会白書」によると、シニアの就業率は下記のとおり年々上昇しています。
60~64歳までの就業率は73%、65歳~69歳までの就業率は50.8%です。また70歳以上でも、約34%と多くのシニアが働いています。
4.2 65歳~69歳の平均給与
では働くシニアは、どれくらいの給与を得ているのでしょうか。
2023年9月27日に発表された国税庁「民間給与実態統計調査」より、65歳~69歳の平均給与を見てみましょう。
65~69歳の平均給与
- 男性:428万円
- 女性:227万円
- 男女全体:342万円
男性においては、日本の平均給与となる458万円に遠くない水準の収入を得ていることになります。
なお、65歳は公的年金の受給開始年齢となりますが、希望すれば受給開始を遅らせることが可能です。
年金を受け取りながら働くこともできます。
ただし、いずれも損をするケースがありますので、年金受給とのバランスを考え、慎重に判断する必要があります。
5. 【赤字!?】65歳以上世帯の生活費をチェック
最後に、年金暮らしを送るシニア世帯の毎月の生活費を見てみましょう。
「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」によると「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支は次のとおりです。
5.1 65歳以上「無職世帯」家計の収支
- 実収入:24万6237円(うち社会保障給付:22万418円)
- 消費支出:23万6696円
消費支出が20万円を超えていますね。内訳は以下の通りです。
- 食料:6万7776円
- 住居:1万5578円
- 光熱・水道:2万2611円
- 家具・家具用品:1万371円
- 被服及び履物:5003円
- 保健医療:1万5681円
- 交通・通信:2万8878円
- 教育:3円
- 教養・娯楽:2万1365円
- その他:4万9430円
さらに、非消費支出として3万1812円があるため、支出の合計は26万8508円となりました。
65歳以上の無職夫婦世帯の平均的な収入と支出では、毎月2万2271円の赤字となります。
2万円程度であれば、変動費を削れば赤字を回避できると考えるかもしれません。
しかし、昨今の物価高騰で体感したように、年金暮らしが始まった後に物価が上がればすぐに赤字に転じるでしょう。
老後の家計収支については、ギリギリではなく少しゆとりを持たせておきたいものです。
6. 老後資金づくりは、なるべく早めの着手を
今回は、65歳以上のシニア世帯の平均支出や貯蓄額について確認してきました。
一昔前には老後2000万円足りなくなるということが話題になりました。しかし、あくまで日本の平均年収や平均的な年金受給者から割り出された数値であるため、正確ではありません。
もらえる年金も年齢や年収により違いがあるため、自分がどのぐらい不足するのかを一度計算してみると良いでしょう。
また、老後資金が足りないと感じた方は、早めの対策が吉です。働き続けることも立派な老後対策ですが、年齢が上がると身体的なリスクも伴います。
現在はお金に働いてもらう資産運用をすることも老後対策として当たり前になってくる時代となりました。2024年からスタートした新NISAなどの制度も充実してきています。
投資にはリスクも伴うため、きちんと制度や仕組みを理解して自分に合う方法を取ることが大切。ご自身の老後のマネープランについて、今から考えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 株式会社パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査」(PR TIMES)
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2022年(令和4年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」
- 内閣府「令和5年版高齢社会白書」
- 国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」
菅原 美優