発達障害の子を持つ父として〜経済学部を出て医師になった僕が考えること

筆者と子どもたち(2009年、北海道の離島にて)

我が家には発達障害の子がいて、地元の小学校に通っています。この小学校では、5年前は支援学級は1教室だったのに、今はなんと4教室に増えています。子供全体の数は減少傾向なのにもかかわらず、です。

昨夏には『急拡大する「発達障害ビジネス」その功と罪』(現代ビジネス)という記事がありました。では、この障害が、最近すごい勢いで増えているのでしょうか?

そうではなく、「昔から発達障害の子はいて、その数(率)は大して変わっていないが、一方で "発達障害" という障害についての一般社会への周知は進んだ、理解は深まった。(=診断の機会が増えた)」という方が近いような気がします。

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その流れの中で、記事のような「発達障害ビジネス」が急増してきているのだということでしょう。
 
今回は、経済学部を出てから医学部に入り直し医師になった者として、親の視点、医師の視点、経済の視点、いろいろな立場からこの件について考えてみます。

 親として:子にどう接するか

うちの子は普通小学校に通い、特殊学級と普通学級と半々の生活を送っています。欠点を挙げればキリがありません。聴覚が敏感すぎるのか、耳を塞いで教室から逃げ出すこともあります。

友達との距離感が近すぎるためか、バカにされるからなのか、クラスメートとトラブルになることが多く、ケガをさせてしまった時は、親子3人で菓子折りを持って謝りに行きます(泣)。

ただ、ほんの一部かもしれませんが、長所もあります。たとえばレゴブロックだったり、恐竜の図鑑だったり、好きなものに集中するときの集中力には驚くほどすごいものがあります(それも障害の一部なのかもしれませんが)。
 
そういうと、何か「発達障害」に特別な、すごい教育法でもあるのか、と思われるかもしれませんが、うちに限って言えばそういうものはありません。
 
一つだけ挙げるなら、無理に欠点を克服しようともせず、無理に長所を伸ばそうともせず、「自分は自分、ありのままの自分でいいんだ。それだけでお父さんにもお母さんにも、みんなにも愛されるんだ」というメッセージを全身で伝えようと思っています。

 そして、できた時は一緒に喜んで、「君の力が伸びるとお父さんも嬉しいよ」ということを伝える。ただそれだけです。それだけなのですが、今は、好きな分野だと中学レベルの本も読んでいたりします。

一方で、算数などは悲惨です。それは、そのうちなんとかなるかもしれないし、ならなければそれでもいいと思っています(笑)。
 
流行りの言葉で言うと「自己肯定感」を育てる、というのに似ているかもしれません。そういう意味では、この姿勢はほかの兄弟も一緒で、つまり発達障害がどうこうではなく、我が家の普遍的な教育法なのだと思います。
 
加えて、近隣や地域の方々に決して隠さず、どんどん発信しています。「こういう子が地域に住んでいる」と知ってもらって、地域のみんなで理解して支えてくれたほうが、彼が生きやすい、そして親も楽かな(笑)と思っています。

医師として:治療と支援をどう考えるか

僕は彼を治そうと思っていません。発達相談・療育などの支援は早いうちから受けていましたが、投薬などの「治療」は全くしていません。発達障害についてはまだまだわからないことが多いのが現状で、今のところ「根本的な治療法」はありません。

というより、治療の対象と思うことすら僕は間違っていると思っています。多分、これは生来のもので、彼の個性です。例えは悪いかもしれませんが、「ダウン症を治す」「陰気な性格を治す」という医師がいないのと同じ感じでしょうか。

ニュースレター

森田 洋之

1971年横浜生まれ、一橋大学経済学部卒後、宮崎医科大学医学部へ。内科研修終了後、財政破綻後の北海道夕張市・夕張市立診療所に勤務。同診療所所長を経て妻の実家の九州へ戻る。
2011年、東京大学大学院H-PAC千葉・夕張グループにて夕張市の医療環境変化について研究。2014年、TEDxKagoshima出演。同年、研究論文『夕張市の一人あたり高齢者診療費減少に対する要因分析』(社会保険旬報)発表。2015年、『破綻からの奇蹟〜いま夕張市民から学ぶこと〜』を出版(日本医学ジャーナリスト協会優秀賞受賞)
現在、南日本ヘルスリサーチラボ代表、日本内科学会認定内科医、日本プライマリ・ケア連合学会指導医、鹿児島県参与(地方創生担当)。