2月13日、日本漫画協会は、マンガの「海賊版サイト」の広がりを受け、これらのサイトを批判する異例の声明を発表しました。
著作権侵害はもちろん、さまざまな問題をはらんでいる海賊版サイトですが、どう捉えていくべきなのでしょうか。
サイトの主な収入源は広告費
海賊版サイトでは、マンガの単行本や雑誌がネット上で違法に公開されています。その主な収入源は広告費ですが、無断で作品を公開している海賊版サイトで上がった利益は、作家に還元されることがありません。
一方、海賊版サイトとしてしばしば名前が挙がる「漫画村」は、「ウェブ上にある画像データをクローンして表示している」として、違法性はないと主張しています。また、日本の法律では、そうしたサイトの閲覧そのものは違法ではありません。
このような海賊版サイトは、利用者が約23万人とも言われており、それに伴う経済損失は500億円と推計されています。今回の日本漫画協会の声明では、現状のような状態が続けば作家は作品を作り続けられず、漫画文化が衰退してしまうことが危惧されていました。
売上減の「本当の原因」は?
しかし、コミックやマンガ雑誌の売上が落ちているのは海賊版の影響とは言えないと主張する漫画家もいます。『ブラックジャックによろしく』などの作者・佐藤秀峰氏や、『やれたかも委員会』の作者・吉田貴司氏が挙げられます。
彼らは、「違法なデータサービスはどの時代にもあり、いま必要なのは海賊版サイトを批判することではなく、それに対抗しうる新たな合法のサービスを作り上げることだ」と言います。
また、海賊版サイトを撲滅したからといって、雑誌や単行本の売り上げが伸びるとも限りません。電子コミックにおける有料サービスの市場はここ数年で大きく成長していることに加え、古本や図書館、漫画喫茶など、正規本より安く漫画を読めるサービスはすでに存在しているからです。
音楽業界で、違法ダウンロードに対抗してiTunesやSpotifyが台頭してきたことも鑑み、そうしたストリーミングサイトと同様のシステムを出版社がつくることが求められているとも言えます。そうした観点で、「違法サイトの存在によって、初めて業界はその体制を時代に合わせて変えられる」という意見もあるようです。
子どもはどう考えて使っている?
とはいえ、「海賊版に対抗する新たなサイトがないこと」は、違法サイトを閲覧してよい理由にはなりません。
小中学生の違法サイト利用者の中には、サイトが違法であるとわかった上で利用している人も一定数いるようです。こうした状態は、モノに対する価値観に大きく影響します。消費者としては、安く済むならそのほうが良いかもしれませんが、そうした意識はモノ、ひいては労働や創作の価値を下げることにもつながりかねません。
実際上でのリスク
加えて、海賊版サイトにはウイルスが仕組まれているものもある、と言われています。実際、そのサイトにアクセスしただけで不正なプログラムが作動し、利用者の端末に大きな負荷がかかるようなサイトも見つかっています。そしてこれらのウイルスは、個人情報を抜き取るようなものにいつ変わってもおかしくありません。
道義的な意味だけでなく、実質的な意味でこうしたリスクを避けるためにも、海賊版サイトでの閲覧は控えるべきではないでしょうか。
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