老後の生活資金だけでなく、障害を負ったときや生計維持者が亡くなったときの保障も担う公的年金制度。

会社員の方などは、毎月のお給料から厚生年金保険料が天引きされていますよね。

しかし近年は少子高齢化などの影響により、「今後の年金受給額は減るのでは?」「年金制度は維持できるのだろうか」といった不安の声があがっています。

実際、現在の年金の受給額はいくらぐらいになっているのでしょうか。

今回は関西地方に焦点を当てて、関西の年金受給額と全国平均を比べてみます。

1. 国民年金はどの都道府県も同じくらい

日本国内に在住している20歳以上・60歳未満の人は全員加入することになっている国民年金。

自営業者や農業・漁業に携わっている第1号被保険者は自分で保険料を納め、会社勤め等の第2号被保険者の場合は、厚生年金保険に含める形で給与天引きされています。

2023年12月に厚生労働省年金局がまとめた『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』を見てみると、国民年金はほとんどの都道府県が月額5万4000円から月額5万9000円の間となっており、あまり自治体ごとのバラつきはないようです。

関西6府県の国民年金の金額と全国平均は【図表1】にまとめました。

【図表1】都道府県別・国民年金の月額平均

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に筆者作成

  • 全国平均:5万6428円
  • 滋賀県:5万8157円
  • 京都府:5万5314円
  • 大阪府:5万4259円
  • 兵庫県:5万6207円
  • 奈良県:5万5972円
  • 和歌山県:5万4789円

国民年金の支給額は、現役時代に納めた国民年金保険料の金額で決まります。

保険料自体は誰でも一律のため、あまり大きな差が見られないと考えられます。

2. 関西6府県の厚生年金の金額はそれぞれいくら?

厚生年金とは、会社や役所などに勤務している人が加入する公的年金のことです。

国民年金に上乗せさせる形で支給されるため、会社員や公務員は毎月受け取れる年金の金額が自営業者などよりも大きくなります。

以下、関西6府県の厚生年金の月額平均を【図表2】にまとめました。

参考までに、全国平均の情報も掲載しています。

【図表2】都道府県別・厚生年金の月額平均

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に筆者作成

  • 全国平均:14万4982円
  • 滋賀県:14万8134円
  • 京都府:14万5774円
  • 大阪府:15万477円
  • 兵庫県:15万3197円
  • 奈良県:15万6630円
  • 和歌山県:14万488円

関西地方では、どの府県も全国平均に近い金額の厚生年金を受け取っていることが分かりました。

全国平均を上回っている地域も多いですが、バラつきがそこまで大きくないのが印象的です。

2.1 【参考】47都道府県別厚生年金の金額ランキング

厚生労働省年金局の『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金の平均支給額は月額12万円台から月額16万円台と、都道府県によって違いがあるようです。

参考までに、47都道府県別の厚生年金の金額ランキングをまとめてみました。

  • 1. 神奈川県:16万4088円
  • 2. 千葉県:15万8918円
  • 3. 東京都:15万7478円
  • 4. 奈良県:15万6630円
  • 5. 埼玉県:15万5412円
  • 6. 愛知県:15万4191円
  • 7. 兵庫県:15万3197円
  • 8. 大阪府:15万477円
  • 9. 滋賀県:14万8134円
  • 10. 茨城県:14万6466円
  • 11. 京都府:14万5774円
  • 12. 三重県:14万5528円
  • 13. 静岡県:14万5456円
  • 14. 広島県:14万4695円
  • 15. 岐阜県:14万3622円
  • 16. 栃木県:14万2763円
  • 17. 山口県:14万2309円
  • 18. 群馬県:14万2216円
  • 19. 和歌山県:14万488円
  • 20. 岡山県:14万72円
  • 21. 福岡県:13万9693円
  • 22. 宮城県:13万8832円
  • 23. 山梨県:13万8308円
  • 24. 富山県:13万8275円
  • 25. 長野県:13万8241円
  • 26. 香川県:13万7904円
  • 27. 石川県:13万5622円
  • 28. 北海道:13万5428円
  • 29. 愛媛県:13万4239円
  • 30. 福井県:13万4001円
  • 31. 新潟県:13万2192円
  • 32. 長崎県:13万1373円
  • 33. 大分県:13万537円
  • 34. 福島県:13万101円
  • 35. 佐賀県:12万8083円
  • 36. 徳島県:12万7933円
  • 37. 島根県:12万7668円
  • 38. 鳥取県:12万7492円
  • 39. 鹿児島県:12万7243円
  • 40. 熊本県:12万6583円
  • 41. 岩手県:12万6451円
  • 42. 高知県:12万6353円
  • 43. 山形県:12万4586円
  • 44. 沖縄県:12万3459円
  • 45. 宮崎県:12万3237円
  • 46. 秋田県:12万3060円
  • 47. 青森県:12万2134円

3. なぜ都道府県ごとに厚生年金の金額が違うのか

国民年金の支給額はほとんどの都道府県が月額5万4000円から月額5万9000円であるのに対し、厚生年金は月額12万円台から月額16万円台と幅広くなっています。

いったいなぜ厚生年金は、都道府県ごとに金額が違うのでしょうか。

結論から言うと、都道府県ごとの賃金の水準や、自営業・共働き世帯の比率などが影響していると考えられます。

厚生年金の報酬比例部分は、以下の計算式で算出した金額の合計で決定します。

  • A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
  • B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数

つまり年収が高かったり、厚生年金保険への加入期間が長かったりすると、その分厚生年金の受給額も増加するのです。

平均給与が高い地域や会社員・公務員が多い自治体ほど、厚生年金の月額平均も大きくなりやすいと言えるでしょう。