3. シニアの貯蓄が増加・減少した理由とは
同調査の「金融資産残高の1年前との増減比較(金融資産を保有していない世帯を含む)」によると、前年との貯蓄の比較は次のとおりでした。
〈60歳代〉
- 増えたと回答:28%
- 変わらないと回答:44.7%
- 減ったと回答:27.3%
〈70歳代〉
- 増えたと回答:22.9%
- 変わらないと回答:45.7%
- 減ったと回答:31.4%
では、貯蓄が増減した理由としてどのようなものが挙げられているのでしょうか。
3.1 貯蓄が増加した理由(金融資産保有世帯のうち金融資産残高が増えた世帯)
〈60歳代〉
- 株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから:40.2%
- 配当や金利収入があったから:36.7%
- 定例的な収入が増加したから:22.4%
- 定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから:20.3% など
〈70歳代〉
- 株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから:46.8%
- 配当や金利収入があったから:39.9%
- 定例的な収入が増加したから:10.1%
- 定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから:18.5% など
3.2 貯蓄が減少した理由(金融資産保有世帯のうち金融資産残高が減った世帯)
〈60歳代〉
- 定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから:60.2%
- 耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったから:19.9%
- 旅行、レジャー費用の支出があったから:11.5%
- 株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから:11.5% など
〈70歳代〉
- 定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから:47.1%
- 耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったから:25.8%
- 旅行、レジャー費用の支出があったから:15.2%
- 株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから:14.3% など
4. 老後に向けた貯蓄計画を
最新データより、「60~70歳代の貯蓄ゼロの割合」や貯蓄平均額等を確認してきました。
年度により、貯蓄事情には変動があるものです。コロナ禍が明け、消費行動が再開したことや物価上昇など、さまざまな要因が絡んでいると推察できます。
回答にもあったとおり、株式、債券価格の上昇や配当、金利収入がいい影響を与えている世帯も多いです。一方で、株式、債券価格の低下が貯蓄減に影響した世帯も多いです。
老後の資産バランスは、積極的な運用よりも安定的な預貯金等に移行するほうが安心かもしれません。とはいえ、今後もインフレのリスクはあるため、全てを預貯金とするのもリスクとする考え方もあります。
今後のライフプランをしっかり設計し、また年金収入の見込額も把握しながら、老後資金のバランスについて考えてみてはいかがでしょうか。
4.1 【ご参考】貯蓄額一覧表(金融資産を保有していない世帯を含む)
60歳代・二人以上世帯
- 金融資産非保有:21.0%
- 100万円未満:5.9%
- 100~200万円未満:4.5%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:3.0%
- 400~500万円未満:1.9%
- 500~700万円未満:7.2%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:6.8%
- 1500~2000万円未満:5.4%
- 2000~3000万円未満:9.5%
- 3000万円以上:20.5%
70歳代・二人以上世帯
- 金融資産非保有:19.2%
- 100万円未満:5.6%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:4.7%
- 400~500万円未満:2.5%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:5.8%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:7.4%
- 3000万円以上:19.7%
参考資料
太田 彩子