公的年金(国民年金・厚生年金)は「老齢年金・遺族年金・障害年金」といった保障を必要とする人を支えるために欠かせない制度です。この年金制度を維持するために、現役世代が納める年金保険料のうち積立金は国内外の株式や債券などに投資をして運用されています。

年金積立金を運用するのは「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」です。長期的な運用目標「賃金上昇率+1.7%」を掲げ、年金積立金の運用がスタートした2001年度から2023年度第3四半期までに年率+3.99%と着実に年金積立金を増やしています。

本記事では、年金積立金の安定的なポートフォリオ運用から、個人の資産運用のヒントを見つけていきたいと思います。

1. 公的年金の保険料は何に使う?「年金積立金」は運用

現役世代が納める年金保険料は、老齢年金・遺族年金・障害年金といった保障を必要とする人の年金に充てられます。

日本の年金制度は、現役世代(年金保険料を納める人)が受給世代(年金給付を受ける人)を支える「賦課方式」といわれる仕組みですので、現役世代の人口が少なくなるとバランスが崩れてしまいます。

しかしながら日本は少子高齢化が加速。将来的に「現役世代<受給世代」となると予測されています。

このままでは現役世代の保険料負担が増えるか受給世代の年金額が大きく減ることになるでしょう。

そこで年金保険料のうち年金に充てられなかったものを積み立て、この積立金を年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF※)が国内外の株式や債券などで運用を行い、増やす努力をしています。

現役世代が納めた保険料の全てをリスクが伴うもので運用しているわけではありませんが、将来の大切な年金の財源ですので運用状況は気になるところです。

GPIFが発表しているレポートより運用状況を見てみましょう。

(※)年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)とは、厚生労働大臣から寄託された年金積立金の管理・運用を行う組織です。運用収益は国庫に納付することにより年金財政の安定に貢献しています。

2. 公的年金「年金積立金」の運用状況は?

2024年2月2日、GPIFが公表した「2023年度第3四半期運用状況(速報)」によると、2023年度第3四半期は、+5兆7287億円で収益率は+2.62%となりました。

年金積立金の運用がスタートした2001年度から2023年度第3四半期における収益率は年率+3.99%。

2022年度は急速な円高によりマイナスとなりましたが、バランスのとれた運用で長期的にはプラスとなっています。

2.1 公的年金「年金積立金」の運用状況《2001年度~2023年度第3四半期》

  • 運用資産額:224兆7025億円(2023年度第3四半期末現在)
  • 収益率:+3.99%(年率)
  • 収益額:+132兆4113億円(累積収益額)
  • うち、利子・配当収入:+50兆5529億円

グラフを見ていていただくと運用開始直後はマイナスですが、2年経過後は値下がりの時期もあったものの複利効果もあり着実に収益を積み上げているのが分かります。

年金積立金は、現世代の人たちに支給される原資ではないため、こうして長期的視野に立った安定運用が可能となるのです。

2.2 公的年金「年金積立金」資産別の運用状況《2023年度第3四半期》

2023年度第3四半期における年金積立金の運用状況は以下の通りです。

資産:収益額(収益率)

  • 資産全体:5兆7287億円(2.62%)
  • 国内債券:5307億円(0.95%)
  • 外国債券:1兆3632億円(2.55%)
  • 国内株式:1兆1126億円(2.05%)
  • 外国株式:2兆7222億円(4.91%)

2023年第3四半期の収益は、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の全ての資産においてプラスとなりました。

このうち、収益アップに最も寄与したのは外国株式です。次に外国債券、僅差で国内株式が続きます。

なお、2023年第1四半期は、円安・株高によって、外国債券・国内株式・外国株式の含み益が膨らんだことにより、収益率9.49%と第3四半期の約4倍もの収益をあげています。