貯金が苦手な方にとって、計画的な老後資金づくりはなかなかハードルが高いものかもしれません。
今回、相談してくださった53歳の女性会社員の方は、勤め先の企業が財形貯蓄制度を導入しているようです。しかし、「増える」という表現から勘違いをしていることが伺えます。
収入額に関係なくコツコツと貯められる財形貯蓄も、ふわっとスタートしてしまうと「勧められるままに入ったけど、このまま継続していていいんだろうか」「そもそもNISAとの違いもわからない……」と悩むこともあるかもしれません。
そんな「財形貯蓄」の概要とメリット、NISAやiDeCoとの違いをチェックしていきましょう。
1. 【3種類】財形貯蓄の制度による違いを理解しよう
まずは財形貯蓄とNISAやiDeCoの制度を理解することが重要でしょう。
「財形貯蓄」制度には、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄、一般財形貯蓄の3種類があります。それぞれについて、詳しくみていきましょう。
1.1 勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)
〈おさえたいポイント〉
- 60歳以降の「年金受給」を目的とした財形貯蓄
- 55歳未満の勤労者が加入可能
- 5年以上の積立期間が必要
- 保険型:385万円(住宅と合算で550万円)、貯蓄型:550万円までが非課税の対象
「財形年金貯蓄」とは、55歳未満の勤労者が金融機関などと契約を結び、60歳以降から5年以上の所定の時期から年金としての受給を目的とした貯蓄のこと。定期的に賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立てる形です。
受け取る年齢が60歳以上と定められているため、定年を迎える60歳から年金受給が始まる65歳までの5年間の生活資金確保のために始める人もいるようです。
1.2 勤労者財産形成住宅貯蓄(財形住宅貯蓄)
〈おさえたいポイント〉
- 住宅購入・リフォーム資金を用意するための財形貯蓄
- 55歳未満の勤労者が加入可能
- 5年以上の積立期間が必要
- 550万円までが非課税対象(「財形年金貯蓄」と合わせて利用する場合、合算して550万円以内であれば非課税)
「財形住宅貯蓄」とは、年金貯蓄と同じく55歳未満の勤労者が金融機関などと契約を結び、持家の取得または持家の増改築(リフォーム)などを目的とした貯蓄のこと。
いずれかの財形貯蓄制度を1年以上利用していて一定条件を満たしていれば、公的住宅ローンである「財形住宅融資」を利用できるため、そのために検討する人も少なくありません。
1.3 勤労者財産形成貯蓄(一般財形貯蓄)
〈おさえたいポイント〉
- 目的が自由な財形貯蓄
- 勤労者が加入可能(年齢制限なし)
- 原則3年以上の積立期間が必要(ただし1年経てば払い戻しも可能)
- 非課税などの優遇措置はなし
「一般財形貯蓄」とは、使用目的を限定しない財形貯蓄のこと。契約時の年齢制限もなく、複数の契約も可能です。
ただし、上記2つの制度と異なり非課税対象ではありません。
ひとくちに「財形貯蓄」といっても、目的や積立期間などで制度がわかれています。まずは、自分がどの財形貯蓄をしているのかを確認する必要があるといえるでしょう。