65歳以上の夫婦が直面する老後生活における問題点は、年金収入と生活費の調和が崩れがちであるということ。
しかし、年金収入とそれに対する貯蓄や支出の健全なバランスを理解することによって、この問題を回避することができます。
国民年金や厚生年金は老後の生活を支える柱となりますが、年金収入が不十分な場合には貯蓄や別の収入源を確保する必要があります。
では、老後に向けて何をどのくらい準備すべきなのか。対策を考える上で把握しておくべきものが年金受給額です。
本記事では、65歳以上世帯の「国民年金」と「厚生年金」について確認していきます。
1. 【令和6年度の年金額改定】「厚生年金」標準夫婦はいくらか
2024年1月19日、厚生労働省が令和6年度の公的年金の増額改定を発表しました。
年金額の例は以下のとおりです。
1.1 令和6年度の年金額の例(国民年金と厚生年金)月額
- 国民年金(満額):6万8000円(+1750円)
- 厚生年金※:23万483円(+6001円)
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で 40年間就業した場合、受け取り始める「老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)」。
国民年金で見ると月額で+1750円、厚生年金のモデル夫婦は+6001円の増額となりました。
なお、公的年金の見直しは毎年度行われており、令和5年度、令和6年度と2期連続の増額改定となっています。
2. 年金増額なのに「実質的に目減り」なワケ。物価上昇は+3.2%
物価上昇における家計支出アップや、税金・社会保険料の負担増などネガティブな「増」が続く中、年金増額は嬉しいニュースとなりました。
しかし、実質的には目減りとなります。その理由は、年金額改定の仕組みにありますので確認していきましょう。
年金額を見直す際に用いられるのが物価変動率と名目手取り賃金変動率です。
令和6年度の指標となる物価変動率は3.2%、名目手取り賃金変動率は3.1%。
双方を比較し、物価変動率が名目手取り賃金変動率※を上回る場合には、名目手取り賃金変動率を用いて年金額が改定されます。
今回、「物価変動率3.2%>名目手取り賃金変動率3.1%」となるため、名目手取り賃金変動率を用いることになりました。
加えて、社会情勢(現役世代の人口減少や平均余命の伸び)に合わせて年金の給付水準を自動的に調整する仕組みであるマクロ経済スライドによる▲0.4%のスライド調整が行われ、以下のように年金額改定率が決定しました。
名目手取り賃金変動率3.1%ーマクロ経済スライド調整0.4%=2.7%
上記のとおり、物価の上昇には追いついていないため増額改定となるものの実質的には目減りとなるわけです。
※名目手取り賃金変動率とは、2年度前~4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に、前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたもの