2. 厚生年金の支給額はどうやって把握する?
厚生年金の支給額は、次の数式で計算します。
- 平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481×2003年4月以降の加入月数/1000
なお、こちらの「5.481」は、報酬比例部分の「乗率」と呼びますが、この数字は数年に1度変化するため、厳密に支給額を計算するためには乗率の変化も加味する必要があります。
この記事では簡略化のため、現行の「5.481」を前提として計算します。
さらに複雑なのが、多くの人は年々月収・賞与が上昇していくため、平均標準報酬額が変化していくことです。
正確に計算するためには、月ごとの標準報酬を記録して平均を算出する必要があります。
ここでは簡便に、生涯の平均年収(12カ月分の月収+賞与)が600万円だったとして計算してみます。
なお、年金の支払額の計算と異なり、支給額の計算では賞与も含む点に注意してください。
すると、月あたりの標準報酬は50万円にあたります。
仮にここでは23歳から65歳まで働いたとします。
年数は43年間で、月数は516月となります。
以上を踏まえると計算式はつぎのとおりです。
- 50万円 × 5.481 × 516 ÷ 1000 ≒ 141万4000円
月額に換算するとおよそ11万8000円です。
仮にパートナーが専業主婦・主夫だったとすると、こちらの厚生年金と二人分の国民年金が受け取れる計算となります。
令和5年度の老齢基礎年金は6万6250円です。
したがって、二人世帯の月あたりの年金受給額は25万円となります。
年換算するとおよそ300万4000円を受け取れます。
ちなみに、日本年金機構が公表する2023年度の年金額はつぎのとおりです。
- 国民年金の満額:6万6250円
- 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):22万4482円
こちらは平均標準報酬を43万9000円、40年間就業した前提で計算したものとなります。
3. 年金受給額の見通しを立てた上でライフプランを作成しよう
年金の受給額は、老後の収支見通しを立てるうえで重要な要素となります。
厚生年金の金額計算がやや複雑ですが、社会人としての年収推移の見通しを立てたうえで、年金受給額の予測も立ててみましょう。
受給額を踏まえて老後の収支が赤字になりそうな世帯は、早めに老後に向けた資産形成を進めてください。
参考資料
- 厚生労働省「令和3年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況 」」
- 総務省統計局「2022年(令和4年) 家計の概要」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 公益財団法人生命保険文化センター「年金額を増やす方法は?」
- 国民年金基金「国民年金基金」
- 日本年金機構「厚生年金保険料率および協会けんぽ管掌の健康保険料率」
- 日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「年金額の計算に用いる数値」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
太田 彩子