昨年10月〜12月、英国オックスフォード大学サイードビジネススクールにてオックスフォード・フィンテック・プログラム(オンラインキャンパス)を受講しました。
世界中から966人の受講生、そのうち日本人は・・・
このオンラインキャンパスに世界各国から集結した受講生は966人。その職業は、フィンテック起業家、フィンテック関連業務に従事する銀行員、フィンテックに興味を持つ金融機関の役職員、投資家・VC、大学の教授・助教・講師、企業CEO・CFO、会計士・弁護士・コンサルタントなど多岐にわたります。
金融機関の役員や、台湾、米国、英国の大学の教授・助教らと知り合いになりましたが、そういうシニアの方々までこうした講義を受講していたことは驚きでした。いくら偉くなってもこういう機会を使って一生勉強しているのです。
受講者リストから日本人を探したところ、残念ながら3人ほどしかいませんでした。もし自分が今、日本で銀行員だったら、金融の将来がどうなるのかと必死にフィンテックを学び、生き残るためのスキルを磨くでしょう。
昨年、メガバンクで発表したリストラ計画、また、金融庁の報告にもあるように、多くの地域金融機関はメガバンクより深刻な状況になろうかというご時世ですので、危機感を持って当然でしょう。日本国内でも書籍・セミナー等で勉強できるかとは思いますが、海外で世界各国の同級生と英語で切瑳琢磨するのもお勧めです。
その理由としては、やはり非常に刺激を受けること、先端のトレンドをアップデートできること、関係する人脈が一気に世界各国に広がることなどです。
オンラインキャンパスでどのように学ぶのか
これが人生で初めてのオンラインキャンパス受講でしたが、実際に体験してみて、授業料2,500ポンドを考えるとコスパはとても良かったと思います。
まず、オンラインキャンパスですが、ウェブサイト上の過不足ない諸機能、たとえば学校からの通知、問合せ、討論サイト、オフラインのミーティングのセッティング、ライブカンファレンス(ビデオ会議)など、そのインフラの素晴らしさには圧倒されました。
Getsmarterというオンライン学習事業者とのコラボによりプログラムが運営されましたが、同社は約1年前に実施されたMITの世界初フィンテック講座でもコラボしていた会社です。
カリキュラムはビジネスプランとイノベーションロードマップのコースに分かれています。前者は最後にビジネスプランを仕上げるもの、後者はマーケット機会を探索してプレゼンするもので、受講者はそのいずれかを選択することになります。
10週間にわたり毎週、提出課題が水曜日の朝10時(ロンドン時間)に発表され、締切は翌週火曜日の夜10時というサイクルでした。うち、6週はグループとして共通の課題に取り組み、課題を共同で提出しました。評価点はグループメンバー全員が同じになります。
私の所属したチームのメンバー5人の所在地は、ロンドン、オックスフォード、ヨハネスブルグ、香港、ジョホールバル(私)で、時差は8時間ありました。どうも意図的に国籍が違うメンバーと時差がある仕事環境で作業するトレーニングにしているようで、時間管理、課題提出までのチームワークには学びが多くありました。
実践的なカリキュラムを通じて感じたこと
カリキュラム内容は理論だけではなく、極めて実践的な内容です。フィンテック分野で起業を考えている人にとっては、プログラム修了後、得た知識や人脈をそのままフル活用して、即、起業できそうな感じです。確かにそれを促すような流れも感じました。
また、教材(ノートとビデオ)に登場する先生(オックスフォード大学の助教、有名なフィンテック起業家)や、多数のフィンテック起業家、専門家、金融監督者等の知見に触れることができました。たとえば、教材に登場した英国のシニア起業家に直接コンタクトしたところ、いろいろ励ましの言葉をいただき、成功者ならではの言葉に刺激されたこともあります。
さらに、一緒にグループ課題学習を行った5人、そのほかLinkedInやシンガポール同窓会などでつながった同級生が世界各国にいますが、このネットワークは何かをグローバルに始める際には貴重な財産となりそうです。
振り返れば3カ月という短い期間でしたが、非常に密度の濃い時間でした。2年弱かかったExecutive MBA取得よりもきつかったかもしれません。毎週、グループメンバー5人がそれぞれ出張移動、あるいは仕事が多忙な時期もあったものの、チームワークで何とか乗り切りました。締切時間の3秒前に駆け込みで課題をオンライン提出したこともあります。
こうした講義を通して、金融の未来はどうなっていくのか、その中で金融マンの働き方はどうなるのかなどを考える貴重なチャンスを得ることになりました。その具体的な内容は、今後、継続的にお伝えしていきたいと思います。
その中で一つ感じたことを挙げれば、金融マンにとっては従来の金融イノベーション(IT活用)と大差はないなどと軽く見ている場合ではないということです。
金融の世界にはとてつもない地殻変動が起きていて、近い将来、ふと気付いたら従来とは全く異質な世界に放り込まれていくのではないか、そこでの働き方や求められるスキルもかなり変貌するのではないか、そう強く感じています。
大場 由幸