大相撲場所で平幕優勝を飾った栃ノ心の出身国はジョージア。アメリカのジョージア州は国だったのか?と勘違いした方もいらっしゃったようですが、ジョージアは黒海沿岸の国でアメリカの州ではありません。

今回は、ソ連の独裁者として知られるスターリンの生まれ故郷でもあり、ワインの名産地としても知られるジョージアについてご紹介したいと思います。

ジョージア出身の栃ノ心が大相撲初場所で優勝

相次いだ不祥事で揺れる相撲界ですが、初場所は伏兵・栃ノ心が平幕優勝。いわゆる外国人力士である栃ノ心の出身国はジョージアです。「ジョージア」と言われると真っ先にアメリカの州を思い浮かべるという方もいらっしゃるでしょう。もしかすると「ジョージアなんて国あったっけ」という方もいらっしゃるかもしれません。ですが、「グルジア」と聞けば、ピンと来る方も多いのでは?

実は、2015年4月に日本政府は国名呼称をそれまでのグルジアからジョージアに変更しました。グルジアは現在、ジョージアと呼ばれるようになっています。

歴史あるジョージア

ジョージアは黒海沿岸に位置する国です。面積は日本の約5分の1、人口は約400万人。北のコーカサス山脈を境としてロシアと、南ではトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンと接しています。

紀元前にはすでにこの地に王国が成立したとされ、古くからアジアとヨーロッパの十字路として栄えてきました。また、337年にキリスト教を国教として認めており、非常に歴史の古いキリスト教国のひとつといえます。一方で交通の要所というその地理的要因から、他民族から侵略を受け続けてきた歴史を持つ国という側面も有しています。

6世紀、西ジョージアは東ローマ帝国(ビザンツ帝国)に併合、東ジョージアはペルシアに征服されています。7世紀後半には東ジョージアをアラブが征服。16世紀以降、オスマン朝とサファヴィー朝により東西に分割されます。19世紀になるとロシア帝国に併合され、1922年ソ連邦結成に参加。そして1991年に独立しました。

ちなみに、ジョージアの歴史を紐解いていくと、東ローマ帝国をはじめ、世界史における主役級の大国が相次いで登場します。国内でジョージアの歴史を扱った書籍は数が限られていますが、歴史好きな方であれば、非常に興味が引かれる歴史を有している国家と言えます。

参考:外務省ホームページ「国・地域>欧州>ジョージア」ジョージア政府観光局(GNTB)サイト

ワインもスターリンもジョージア

ところで、ワインが好きな方なら、グルジア=グルジアワインという方も多いのではないでしょうか? 実はジョージアが位置するコーカサス山脈一帯は、ブドウ発祥の地とも言われる土地であり、ジョージアは世界最古のワイン生産地とも言われています。また、ジョージアワインは、クヴェヴリという甕(かめ)を地中に埋めて作るという伝統的な製法でも知られます。

さらに、ジョージアといえば、ソ連の独裁者・スターリンの故郷でもあります。ソ連の独裁者にまで上りつめたスターリンが、意外にもロシアではなく、歴史的にはロシアに併合された側の出身者だった事実は興味を抱かざるを得ません。このスターリンが愛飲したのがジョージアワインです。彼は政敵に勝利した後に飲むジョージアワインほどうまいものはない、と語ったとも言われます。

ちなみに同時代を生きたイギリスの首相チャーチルも、ジョージアワインの虜となった一人です。ジョージアはワインの産地としてヨーロッパでは広く知られた存在となっています。

おわりに

栃ノ心の出身国がジョージアと報じられ、アメリカ人力士もいたのか?と驚かれた方も多いようです。ジョージアは、国としての長い歴史を有してはいますが、日本国内でジョージアと言えば、まだまだアメリカのジョージア州の知名度が勝っているというのが現実なのでしょう。

一方で、近年では、ジョージアワインが日本でも知名度を増してきているようです。ご興味のある方は一度お試しになりつつ、ジョージアという国の歴史に思いを巡らせてみるのはいかがでしょうか。

石井 僚一