2. 厚生年金と国民年金だけで生活できる高齢者世帯の割合は?
厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(老齢基礎年金を含む)の支給額平均は月額で14万3973円でした。また国民年金(老齢基礎年金)の平均年金月額は5万6316円です。
また、厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」によると「公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%」の世帯は44%と半数にも満たない数値となっています。
つまり、残りの世帯では稼働所得や財産所得、仕送りや個人年金などで補填している状況といえます。1回あたりに支給される年金額は高額に思えますが、実際に年金だけで暮らすのは難しいかもしれません。
さらに重要なのは、それぞれの働き方や保険料の納付実績によって年金額が大きく異なること。ねんきん定期便やねんきんネットなどで目安額を把握するようにしましょう。
3. 2023年度の「標準夫婦」で、年金はいくら受給できる?
年金は増額となりましたが、それでも年金だけで生活できるシニアは少数派でした。実際の支給額も確認しましたが、「標準的な夫婦」ではいくら受給できるのでしょうか。
厚生労働省は「標準的な夫婦」の年金受給モデルケースを公表しています。そのデータによると、2023年度の年金額の例は次のとおりとなります。
〈2023(令和5)年度の新規裁定者の年金額例〉
- 国民年金(老齢基礎年金):6万6250円(1人分)※1
- 厚生年金:22万4482円(夫婦2人分)
※1 2023年度の既裁定者(68歳以上)の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万6050円(対前年度比+1234 円)
国民年金と厚生年金ともに、2022年度より増額されています。
厚生年金には「平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準」との注釈があります。
厚生労働省の公表によると、上記の夫婦形態を「標準的な夫婦」のモデルケースとし、2023年度の年金額は月額22万4482円(夫婦2人分)を目安としているようです。
4. 【次回は2月15日】年金「約45万円」が支給されるカラクリとは
標準的な夫婦に対して1度に支払われる金額は「約45万円」とされます。この数値となるカラクリをみていきましょう。
年金支給日は偶数月の15日(土日祝日の前は直前の営業日)です。たとえば、次回の2月15日には2023年12月、2024年1月の2ヶ月分が振り込まれます。
つまり、22万4482円×2=約45万円が振り込まれるのです。ただし、この年金は「夫婦2人分」かつ「2ヶ月分」である点に注意しましょう。
さらに、この金額から税金や保険料が天引きされます。実際に振り込まれる金額はもっと少なくなる点も頭に入れておく必要がありそうです。
実際の振込額は、10月に送付される年金振込通知書で確認できます。
「振り込まれる年金が夫婦合計で約45万円」と聞くとうらやましく思えますが、あくまでも2ヶ月分の年金。月額あたりにすると余裕のある水準とも言い切れないのが現状です。
5. まだ間に合う! 自分にあった「老後対策」を考える
年金の受給額は、厚生年金と国民年金を合わせた20万円程度、国民年金だけの場合は6万円程度が目安。それをきいて、年金だけでは不足を感じる方もいるでしょう。
資金の不足を補うための手段は決して1つではありません。多少のリスクはありますが、収入源を増やす方法として資産運用を活用するのもひとつの手です。
新NISAや社会保険など、自助努力を後押しする仕組みや制度が用意されています。自分に合った方法はどれか、情報収集してみるのもいいでしょう。
また、収入と支出を改めて整理するのも手軽に着手できることのひとつ。会社の制度を利用して、退職時期を先延ばしにする選択を取る方もいらっしゃるでしょう。
何事も遅すぎるということはありません。時間を無駄にすることなく安心した老後を迎えられるよう、スタートしやすいことから考えてみてください。
参考資料
- 厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」
- 厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
笹村 夏来