「就職氷河期世代で、若いときはアルバイトで厚生年金に加入しておらず、現在も非正規で年収は450万円とあまり多くありません。そのため、年金もあまり期待できなくて老後が不安です」との相談がありました。
老後2000万円問題や老後破綻などが話題となり、老後生活に不安を感じている人も多いでしょう。
特に、厚生年金の加入期間が短い人や年収が少ない人は年金額が少ない傾向にあります。
本記事では、老後生活に不安を感じている人がこれからできる対策について解説します。
最新の老齢年金の平均額や老後生活費も紹介しますので、早めの老後対策を検討しましょう。
1. 老後にもらえる年金額はいくらか
会社員などで厚生年金に加入している人は、原則65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ります。
現在51歳の人が65歳から受け取る年金額は、いくらぐらいでしょうか。
1.1 老齢年金の計算方法
老齢基礎年金と老齢厚生年金の計算方法は次の通りです。
老齢基礎年金の保険料納付月数は20歳から60歳までの国民年金または厚生年金の納付月数、厚生年金には2003年4月以降に加入したものとします。
- 老齢基礎年金=79万5000円(2023年度、毎年更新)✕保険料納付月数÷480か月
- 老齢厚生年金=平均標準報酬額(※)✕(5.481/1000)✕加入月数
※平均標準報酬額は、厚生年金加入中の標準報酬月額と標準賞与額の総額を厚生年金加入月数で割った金額です。標準報酬月額は保険料や年金額の計算基礎となる金額で、毎年4~6月の報酬を基に計算し原則9月から翌年8月まで適用されます。
1.2 老齢年金額のシミュレーション
前述の計算方法を使って、老齢年金額をシミュレーションしてみましょう。
前提条件は次の通りです。
- 20歳から60歳まで国民年金または厚生年金に加入して毎月保険料を納付
- 60歳まで仕事を続けて厚生年金に加入
- 厚生年金加入中の平均標準報酬額は37万5000円(=450万円÷12)
老齢基礎年金額は、前述の計算式より満額の79万5000円です。
老齢厚生年金については、厚生年金加入月数によって年金額が異なります。
60歳までの加入年数を10年、20年、30年として年金額を計算してみます。
- 10年:老齢厚生年金=37万5000円✕(5.481/1000)✕120か月=24万6645円
- 20年:老齢厚生年金=37万5000円✕(5.481/1000)✕240か月=49万3290円
- 30年:老齢厚生年金=37万5000円✕(5.481/1000)✕360か月=73万9935円
厚生年金の加入年数が30年の場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計が約153万円(月額12万7500円)です。
加入期間が短かったり平均標準報酬額が前提より低い場合、年金額は少なくなります。
生命保険文化センターのアンケート調査によると、夫婦2人の老後生活の最低日常生活費は月額で平均23万2000円、ゆとりある老後生活費は平均37万9000円です。
配偶者の年金があるとしても、上記年金額では老後生活に不安を感じる人も多いでしょう。
2. 年金額が少ない人の老後対策3選
3/6
umaruchan4678/shutterstock.com
就職氷河期世代で厚生年金の加入期間が短い、年収が少ないなどの理由により、年金だけでは老後生活を賄えない場合、年金額を増やすなどの対策が必要です。
主な対策を3つ紹介します。
2.1 60歳以降も仕事を続ける
対策の1つ目は、年金収入を補うために60歳以降も仕事を続けて給与収入を得ることです。
年金が始まる65歳まで仕事をして生活費を賄うのは一般的ですが、70歳または75歳まで働けると年金を貯蓄したり、あとで紹介する繰下げ受給を活用したりできます。
また、70歳まで仕事を続けて厚生年金に加入すると、60歳で会社をやめた場合と比較して年金額は24万6645円(平均標準報酬額37万5000円の場合)も増えます。
2.2 老齢年金を繰下げ受給する
対策の2つ目は、老齢年金を繰下げ受給することです。
繰下げ受給とは、65歳から始まる年金の開始時期を遅らせる(繰下げる)ことで年金額を増やすことです。
4/6
出所:LIMO編集部作成
1か月繰下げすれば年金額は0.7%増額になるため、70歳で繰下げ受給すると年金額は42%、75歳なら84%もアップします。
65歳時点の年金額が153万円ならば、70歳までの繰下げ受給で年金額は約64万円増えて217万円(月額約18万円)です。
繰下げ受給するまでは年金収入がないため、仕事を続けて給与収入を稼がなければなりません。
なお、老齢年金を繰下げできるのは66歳から75歳までで、1か月単位で選択できます。
2.3 iDeCoで老後資金を貯める
対策の3つ目は、年金以外に自分で老後資金を貯めることです。
老後資金に限定するなら、税制上のメリットの大きいiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)がおすすめです。
iDeCoの主なメリットは次の通りです。
- 掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象で所得控除され、所得税や住民税が安くなる。
- iDeCoでは運用益が出ても税金がかからない(一般的に金融商品の運用益には約20%の税金)。非課税になった利益も再投資に回るため、投資効率が高まる。
- 老後に一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金の場合は「公的年金等控除」の対象となり税額を抑えられる。
加入できるのは会社員の場合は65歳までで、受給は60歳から75歳まで(加入期間が短い場合は一定の制約有り)で任意に決められます。
50歳を過ぎていても、10年以上利用できます。
3. 老後対策は50歳代からでも間に合うが
就職氷河期世代で厚生年金の加入期間が短かったり年収があまり高くないと、十分な年金を受け取れず老後生活が厳しくなるケースも考えられます。
主な対策は、「60歳以降も仕事を続ける」「老齢年金を繰下げ受給する」「iDeCoで老後資金を貯める」などです。
老後対策は50歳代からでも間に合いますが、自分にあった方法ですぐに取り掛かりましょう。
3.1 (参考)最新の年金月額
国民年金(老齢基礎年金)の受給額
〈全体〉平均年金月額:5万6316円
〈男性〉平均年金月額:5万8798円
〈女性〉平均年金月額:5万4426円
厚生年金(老齢厚生年金)の受給額
〈全体〉平均年金月額:14万3973円
〈男性〉平均年金月額:16万3875円
〈女性〉平均年金月額:10万4878円
※国民年金の金額を含む
参考資料
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)のメリット」
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」
西岡 秀泰