「内部留保」と「賃上げ」を語って恥をかかないための超入門

そもそも内部留保とは何か

内部留保という言葉を誤解している人が多い、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は嘆いています。

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内部留保という言葉を誤解している人が多いので、超入門的な解説をしておくことにします。厳密な説明ではありませんが、イメージを掴んでいただければ幸いです。

バランスシートは、持ち物と、それを買った金の出所の記録

筆者が50万円を出資して塚崎パン株式会社という会社を作ったとします。銀行から50万円借りて、100万円のパンを仕入れたとします。同社のバランスシートは以下のようになります。

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【表1:1日目のバランスシート】

左側は、会社が何を持っているのかを示しています。右側は、それを買うための資金をどうやって調達したのかを示しています。当社は、100万円のパンを持っており、それを買うために銀行から50万円の借金をし、投資家から50万円を調達した(株券と引き換えに50万円を受け取った)、というわけですね。

純資産は、資本金プラス内部留保

翌日、給料10万円で社員を雇い、パンを売らせたところ、120万円で売れました。社員の給料を支払って、10万円の利益が残ったわけです。資産としては110万円の現金がありますから、100万円分のパンを仕入れて、残った現金を金庫にしまいました。

10万円の使い道は決まっていませんが、電子レンジを買っても良いし、銀行に借金を返すのに使っても良いし、株主に配当しても良いですね。いずれにしても、株主の自由になる金ですから、使い道はゆっくり考えましょう。

バランスシートはどうなるでしょうか。左側は100万円分のパンと10万円の現金ですね。右上は銀行借入ですから、相変わらず50万円ですね。ところが、右下は60万円に増えるのです(表2)。

右下は「純資産」となっています。これは、資本金と内部留保の合計です。内部留保というのは、利益のうちで株主に配当されずに会社内部に留保しておく資金のことです。

ちなみに、バランスシートというくらいなので、左と右は同額です(バランスしています)。左と右上は容易に求まるので、右下については「左から右上を引いた値」だと考えても良いでしょう。

「会社が解散する時には、左側の資産を換金し、右上の負債を返済し、残りを株主で分配する。つまり、右下は株主の持分であり、会社解散時に株主に戻る金額を示すものである」という理解もできるわけです。

この時、自分が出資した50万円より多く戻ってくることになりますが、それは本来であれば既に配当として受け取っていたはずの10万円なのですね。

余談ですが、バランスシートの左側は、買った時の値段で記載されています。実際に会社を解散する時には、資産がバランスシートに書いてある通りの値段で売れるとは限りませんので、要注意です。

【表2:2日目のバランスシート(ケース1)】

表2の会社が、電子レンジを10万円で購入すると、バランスシートは表3になります。

【表3:2日目のバランスシート(ケース2)】

表2の会社が、現金10万円を電子レンジ購入に用いずに資金を借金返済に用いることもあるでしょう。その場合のバランスシートは表4になります。

【表4:2日目のバランスシート(ケース3)】

内部留保を賃上げに使うことはできない

参考記事

ニュースレター

塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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(雑誌寄稿等)
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