2023年12月4日に行われた、オープンワーク株式会社個人投資家向け説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:オープンワーク株式会社 代表取締役社長 大澤陽樹 氏

INDEX

大澤陽樹氏(以下、大澤):オープンワーク代表取締役社長の大澤陽樹です。よろしくお願いします。

さっそくですが、ご説明を始めたいと思います。本日使う資料は、「事業計画及び成長可能性に関する事項」という資料と、11月に発表した第3四半期の開示資料を統合したものです。

この資料を基に、初めてオープンワークを知る方に向けて、オープンワークが取り組んでいることや直近の業績などについてご説明したいと思います。

本日はスライドのとおり、4つに分けて進めていきます。チャプター1からチャプター3まではオープンワークの概要や強み、チャプター4では最新の決算についてご説明します。

企業概要

企業概要です。オープンワークは、2007年に創業し、今年で17期目を迎えました。2022年末に東証グロース市場に上場しました。社員数は2023年9月末時点で95名と、まだ小規模な会社です。

Slogan / Mission

本日1つだけ覚えて帰っていただきたいのは、当社の事業ドメイン、こだわりを持っているポイントです。

コーポレートスローガンは、「さあ、自由に生きよう。働きがいをすべての人へ」です。ミッションは「ひとりひとりが輝く、ジョブマーケットを創る。」です。当社はジョブマーケット(労働市場)の領域に特にこだわりを持ち、サービス、事業を展開している会社です。本日はこのことを覚えて帰っていただけるとうれしいです。

最新の調査では、日本の「働きがい」は、125ヶ国中124位です。少し意訳していますが、熱意のある社員の割合を「働きがい」と捉えると、当該の調査では5パーセントしかいないことになります。また、やる気のない社員が60パーセントから70パーセント程度を占めており、世界で非常に高いレベルの「やる気のない社員の多さ」となっています。

労働人口が減っていく我が国において、生産性に効いてくるエンゲージメント、熱意のある社員をどのようにして増やしていくかは、非常に大きな課題だと考えており、当社ではここに注力して取り組んでいこうと決めています。

オープンワークが目指す世界

オープンワークが目指す世界です。終身雇用や年功序列が悪い制度だとは思っていませんが、環境変化の非常に激しい社会では、人材の流動化がさらに進み、職種別採用や、能力や成果によって評価する会社が増えていくだろうと考えています。

社会の変化に伴い、「働く」の主役は会社から個人へと変化しています。自分のキャリアを会社に預けて、1つの会社で一生を過ごしていく時代から、いろいろな会社を渡り歩きながら自分のキャリアを作っていくのが当たり前になる時代が来ると考えています。

一方で、個人が「働く」に関する意思決定をする仕組みに関しては、まだ整備が不十分です。複数社を渡り歩くのが普通であると言っても、現状は高度経済成長期に作られた採用マーケットの中で企業が中心となっており、企業にとって都合のよい、企業の魅力ばかりを押し出した広告が出ています。

労働者が減っていく中、労働者が売り手市場になっていきます。労働者が優位になっていく社会では、企業も個人も対等であるべきです。

情報を透明にしていくことで、個人は入社する前からその会社の実態を知り、働く会社を正しい情報を基に選んでいくことができます。そして企業も、従前どおり個人を選んでいきます。このように、お互いが相互に選択し合う社会を作っていく必要があります。

このために、オープンワークは「情報の透明性」を高めていこうと考え、メインの事業である社員クチコミに注目しました。

At a glance

この後、オープンワークのサービスについてご説明しますが、オープンワークがどのくらいの規模の会社かご存知ない方もいらっしゃると思いますので、簡単にご説明します。

2022年12月期の売上高は20億3,000万円、営業利益率は30.0パーセントでした。当社の主力事業であるリクルーティングサービスの売上高CAGRはこの3年間で241.6パーセントでした。

2023年11月末時点の「OpenWork」の累計登録ユーザー数は600万人、「OpenWork」の累計クチコミ数は1,600万件、社員クチコミ掲載がある東証プライム上場企業の割合は95パーセントでした。(注:累計登録ユーザー数と累計クチコミ数は、説明会では9月末時点の数字でお伝えしていますが、本記事では最新の数字に更新しています)

当社の事業

オープンワークのサービス概要についてご説明します。当社の事業は、「OpenWork」と「OpenWorkリクルーティング」の大きく2つに分かれています。先ほど2022年12期の売上高が20億3,000万円とお話ししましたが、この2つのサービスが売上の99パーセントを占めています。

みなさまの中にも使用した方がいるかもしれませんが、「OpenWork」は、日本最大級の社員クチコミ情報サービスです。その会社で働いている人や働いていた人が、特定の企業に対してさまざまな観点からクチコミを投稿することが可能です。このクチコミを見たい、クチコミをもとに転職したい方が集まり、累計登録ユーザー数は2023年11月末時点で600万人となっています。

600万人と言ってもあまりピンと来ないと思いますが、日本でトップのダイレクトリクルーティングサービスを展開している企業でも、ユーザー数は200万人強です。「OpenWork」のユーザー数がどれほど多いか、当社がどれだけのビジネスポテンシャルを秘めているかが、わかるのではないかと思います。

その中で、転職や就職を希望するWeb履歴書登録者が95万人、履歴書登録者にスカウトや求人を送るダイレクトリクルーティングのサービス「OpenWorkリクルーティング」の契約社数が2023年9月末現在2,640社となっています。

契約した企業は、求人として会社情報を掲載することができます。その情報と投稿されたクチコミを見るユーザーが増え、ユーザーが増えると履歴書が増え、履歴書が増えるとスカウトを打ちたい企業が増え、企業が増えると掲載情報が増え、掲載情報が増えると掲載情報と併せてクチコミを見たいユーザーが増えていきます。

このように、2つのサービスが相互に好影響を及ぼしながら成長しています。これが、オープンワークの2つのサービスです。

日本最大級の社員クチコミサイト「OpenWork」

この後にご説明する収益構造に関係しますので、「OpenWork」の仕組みについて簡単にご説明します。「OpenWork」は社員クチコミを見られるサービスです。「待遇面の満足度」「風通しの良さ」「20代成長環境」「コンプライアンス」などの8つの定量的な項目について5点満点で評価いただきます。

また、「ワーク・ライフ・バランス」「働きがい・成長」「組織体制・企業文化」「経営者への提言」などの8つの定性的な項目について、クチコミを投稿することができます。さらに、「年収」「残業」「有給休暇消化率」といった3つの実情報も見ることができます。

残念ながら、クチコミは無料では閲覧できません。4つの選択肢があり、「OpenWork」上に自身のWeb履歴書を登録するか、自身の経験・クチコミを投稿するか、当社が提携している人材サービスに履歴書を登録するか、月額1,000円(税別)の有料会員に登録すると、クチコミが見られるようになります。

企業向けダイレクトリクルーティングサービス「OpenWorkリクルーティング」

「OpenWorkリクルーティング」については、先ほどご説明しましたので割愛します。「OpenWorkリクルーティング」がなぜ伸びているか、選ばれているかについては、後ほどご説明します。

ワーキングデータを活用した新サービス

先ほど、「当社の売上の99パーセントはこの2つのサービスで成り立っている」とお話ししましたが、残りの1パーセントである新サービスも立ち上がりつつあります。一例を挙げると、「FIS(Financial Indicator Service)」というサービスをスタートしました。

これは、企業の投資をしているヘッジファンドなどの金融機関に、投資判断に活用できるデータとして、財務情報や非財務情報などの公開データに加えて、非公開データであるオルタナティブデータを提供するサービスです。

オルタナティブデータとは、スライドに記載の情報を指しますが、他には衛星写真やクレジットカードデータなどもオルタナティブデータにあたります。

実は、日本で唯一、「OpenWork」の社員クチコミが企業の2年から3年後の業績や株価と相関があると、すでに査読付きの論文で証明されています。また、最近では、スイスのバーゼルに本社がある国際決済銀行が、「OpenWork」のデータを活用して、企業のリスク面と相関があることをペーパーで発表しています。

このように、「OpenWork」のワーキングデータが、企業の将来の業績や株価を予測するために活用されており、複数の投資機関や金融機関が、加工済みの当社のデータを購入しています。こちらを新サービスのオルタナティブデータサービスとして立ち上げました。

事業系統図

オープンワークの収益源は、大きく3つあります。1つ目は、スライド上段の「OpenWork」です。有料会員として月1,000円支払っていただくか、「OpenWork」を見る代わりに提携している人材サービスに履歴書を登録してもらい、当社がその紹介料をいただく収益モデルです。

2つ目はスライド中段の「OpenWorkリクルーティング」です。「OpenWork」に履歴書を登録したユーザーに、企業やエージェントがスカウトを打つことができるサービスです。

3つ目はスライド下段のその他です。ヘッジファンド等が当社の匿名加工した社員クチコミデータを購入するオルタナティブデータサービスから成り立っています。

カンパニー・ハイライト

チャプター3のカンパニー・ハイライトに進みます。「OpenWork」がなぜ選ばれているのか、また、機関投資家からも高い評価をいただくことが多いのですが、どのような点が特に評価されているかについてご説明します。

本日は時間が限られていますのでポイントだけ絞ってお伝えしますが、当社には4つの強みがあると考えています。

高いクチコミクオリティーによりネットワーク効果を発揮

1つ目の強みは、日本最大級のワーキングデータプラットフォームであることです。「OpenWork」には1,600万件の社員クチコミが集まっていると先ほどお話ししましたが、これだけのクチコミが集まるには理由があります。

「OpenWork」では、クチコミ投稿があった時に、そのクチコミすべてを公開することはしていません。クチコミの品質に徹底的にこだわっていますので、そもそも投稿するまでのハードルも高いです。1年以上働いている、もしくは働いていた方しか投稿することはできませんし、投稿の際に500文字以上書かないと投稿できないなど、非常に厳しいルールになっています。

また、すべてのクチコミをAIだけではなく、目視でチェックしています。そのクチコミを目視でチェックする部隊では、毎年、弁護士も入れて審査ルールを改定し続け、より品質の高いクチコミを公開するように心がけています。

クチコミも年々更新されていきますので、例えば、古いクチコミはスコアにあまり反映されなくなるなど、この会社が今どのような状態なのかユーザーに正しく伝わるように、独自のアルゴリズムを入れて、スコアの管理を行っています。

その結果、書かれたものを全部そのまま公開することはしていませんので、良質なサイトコンテンツが形成され、結果としてユーザーの満足度が高くなり、回遊率や滞在時間等が増えていって、アクティブユーザーが増加していきます。

そうしますと、検索サイトからの評価も高くなることがありますので、上位表示され、さらにユーザーが増えてきます。ユーザーが増えると、クチコミを見るためにクチコミの投稿が増えます。その投稿を1件1件すべてチェックしていきます。

このサイクルをぐるぐると回すことで、当社では数億円の広告費で、ユーザー数を毎年80万人以上増やすことができています。他社の場合、数十億から100億円近くの広告費・テレビCM費を使って、年間の履歴書増加数が40万件程度と出している企業もあります。

そのような企業と比べると、いかに当社がよいエコシステムを作って、低コストで多くのユーザーに活用されるサービスを作れているかがわかるのではないかと思います。

登録ユーザー数590万人を誇る日本最大級の社員クチコミサイトを構築

スライドのグラフは「OpenWork」の累計登録ユーザー数や、累計社員クチコミ・評価数の推移を示したものです。ご覧のとおり、非常に順調に伸びていることがわかります。

OpenWorkリクルーティングが選ばれる4つの理由

2つ目の強みは、高い提供価値と広範な市場機会がもたらす競争優位性です。データ量・データの品質だけではなく、それぞれのサービスが選ばれる理由、つまり競争優位性を持っています。

当社は「OpenWorkリクルーティング」で、最後発として採用サービスに参入しましたが、年々倍々で成長しています。先日、売上の上方修正も行いましたが、予想を超える成長を続けています。

データ量はもちろんですが、お客さまに「OpenWorkリクルーティング」をご評価いただくポイントが4つあります。

1つ目は、優秀人材の獲得がしやすいことです。非常に優秀なデジタルネイティブや、情報にアンテナが立っている方、キャリアオーナーシップを持っている方が多いと言われます。

2つ目は、採用力の強化です。「OpenWorkリクルーティング」では、「OpenWork」上で各企業の評価スコアやクチコミを見ているユーザーに対してスカウトを送るかたちになります。

他のサイトでは自社発信情報しか候補者に届けられないのに対して、「OpenWork」上での評価やクチコミという第三者発信情報で採用ブランディング向上を狙うことができ、規模や社名認知では業界トップ企業でなくても、候補者に魅力訴求できる点が企業からも評価されています。したがって、そもそも良い会社しか「OpenWorkリクルーティング」を使うことが難しくなっています。

また、他社のように、お金をたくさん使えば採用ができるサービスになっていませんので、隠れた優良企業、知名度はないが実はすごく良い会社が、採用ブランドを強めることができます。評価スコアを採用力に前面へしっかりと押し出していけますので、知名度はない優良企業が世の中に出ていく手助けができています。

3つ目は、ミスマッチの防止です。私も人事部長をしていたことがあるためよくわかるのですが、採用してすぐに辞められるのが一番しんどいです。大量の採用コストをかけて、オンボーディングにもお金を使って、ようやく育ったと思ったら辞めてしまう、採用のミスマッチがコストとしては一番大きいと思います。

「OpenWork」では、非常に厳しいこともクチコミとして書かれており、そのような点も踏まえて入社するため、ギャップを感じにくいという結果が出ています。したがって、なかなか辞めにくい人が採用できると好評を得ています。

4つ目は、低コストの採用です。「OpenWorkリクルーティング」は初期費用0円、掲載料金0円、報酬はどのような年収の方を採用しても一律80万円(キャリア採用の直接求人企業の場合)と、業界ではおそらく最安値に入る料金体系となっています。

「OpenWorkリクルーティング」は最後発でスタートしたことも理由の1つですが、先ほどお話ししたとおり、費用をあまりかけずにユーザーを獲得することに成功していますので、その分よい企業に採用してもらいたい、価格を抑えて展開していきたい、また、ユーザーにもよい企業に出会ってもらいたいとの思いから、低コストで採用ができる料金体系にしています。

早期のアタッチメントによるユーザーの囲い込みの実現

一般的に転職サイトは、「今、転職しなければ危ない」と煽って転職させるため、登録ユーザーは転職をすでに検討している人ばかりになります。一方、「OpenWork」では、「無自覚期」や「悶々期」など、まだ転職するかどうか悩んでいるタイミングからアプローチできます。

少し悩んでいる段階で「OpenWork」は見られることが多いため、早期から優秀人材にアプローチできる点も、非常に重宝されています。また、ユーザーからも「早くから企業と接点を持ててよい」と高く評価されています。

保有するワーキングデータは外部機関からも認められるクオリティ

当社が保有するワーキングデータは、外部機関からも認められるクオリティの高さです。先ほどお話ししたとおり、業績や株価との相関があることが、すでに査読付きの論文で証明されています。

社員クチコミが企業の業績や株価を予測できるほど品質が高くなっているのは、日本において当社のみであり、2018年には日本証券アナリスト協会の最優秀賞にあたる「証券アナリストジャーナル賞」も受賞しています。

そのような品質の高いクチコミサービスを維持できていることも、当社の強みだと評価されています。

自律的成長モデルがプラットフォーム拡大を加速

3つ目の強みは、成長を加速させるユニークなビジネスモデルです。ビジネスモデル自体も非常にユニークだと言われることが多いです。先ほどお話ししましたので、詳しくは割愛しますが、ユーザーが増え、履歴書が増え、企業が増え、求人が増え、ユーザーが増えていく「ネットワークエフェクト」が起きています。これが相互によい循環を回していることで、ユーザーを増やすことができています。

広範な収益機会とユーザーのスティッキネスがもたらす高いLTV

当社のユーザーは非常に満足度が高いという特徴もあります。転職サービスでは、一度転職すると離脱してしまうのが一般的です。

一方、「OpenWork」では、収益ポイントがたくさんあります。多くのユーザーが転職した後も「OpenWork」を使い続けていたり、就活が終わった後も転職者として「OpenWork」をそのまま使ってくれたりします。

売上の約75パーセントは、3年以上も前の登録者から収益化できている部分で、そこが非常に特徴的だと考えています。

つまり、マーケティング費用をかけてユーザーを獲得しても、それがもう収益にならないことはなく、1回獲得したユーザーが、その後何回も「OpenWork」を使ってくれて、時にはマネタイズにつながっています。

ユーザーが増えていけばいくほど、しっかりと収益が上がっていく構造を作れており、高いLTVを実現できています。

ストック性の高い積み上げビジネスモデル

スライドのグラフは、社会人入社人数推移を導入年別に色分けしています。例えば、2019年に契約した企業を見ると、最初はそれほど使ってくれていませんが、使ううちに「非常に良い人を安く採用できるじゃないか」と、同じ企業群でどんどん採用の人数が増えていきます。

他社よりも「OpenWork」のほうが優秀な人材が採用できる上に3分の1くらいしかコストがかかりませんので、「OpenWork」に乗り換えない手はないと、他の採用チャネルから「OpenWork」に乗り換えてくれているわけです。

1,000人採用している会社から「他社から『OpenWork』に100人分切り替えるだけで、採用費を2億円から3億円ほど抑えることができる」と、褒めていただいたこともあります。このように、採用コストを抑えていく観点でも、当社の「OpenWorkリクルーティング」に乗り換えが起きています。

したがって、ストック型のビジネスモデルではないのですが、結果としてストック型のビジネスモデルのようなかたちになっていることも、当社の利益率が高くなっている理由の1つだと思っています。

OpenWorkリクルーティングサービスの成長戦略

4つ目の強みは、ワーキングデータプラットフォームとしての成長ポテンシャルです。未来のお話になりますが、「OpenWork」はまだ伸ばす余地があると考えています。

「リボン図」をご存知だと思いますが、マッチングビジネスは、売り手と買い手の厚みを増やして、その両者をマッチングさせ、混雑を解消していくことができると、市場が成立して機能していくと言われています。

履歴書登録者数の拡大ポテンシャル

「OpenWork」では、国内最大級の590万人の登録ユーザーを抱えていますが、労働人口から考えるとまだ伸ばせると考えています。また、Web履歴者登録数は95万件と、ユーザー全体の6分の1程度に留まっています。残念ながら、「OpenWork」が社員クチコミのサービスとして認知されてしまっているのが理由だと思います。

ユーザーにインタビューすると、「『OpenWork』で転職できるのですか?」「履歴書を登録したらスカウトが届くのですか? そのような認識はなかったです」と、よく言われます。

このように、クチコミサイトとして認知されてしまっているのが当社の課題です。ユーザー数を増やすだけではなく、ユーザーの中から履歴書の登録者を増やせるポテンシャルがある点も、当社の今後の成長可能性の1つだと考えています。

求人数の拡大ポテンシャル

「OpenWork」の2023年9月末時点の求人数は6万件でした。世の中全体の求人に比べるとまだ少ないため、拡大余地は大きいと考えています。ただし、求人数をいたずらに増やしていくというより、質が高く、鮮度の高い求人を少しずつ載せていくことが大事だと考えています。

50万件、100万件を目指すというより、今の6万件を6万5,000件、7万件としていく中で、みなさまが応募したくなる品質の高い求人を、どのようにして用意するかがポイントになってくると思います。

OpenWorkの長期戦略

現在、「OpenWork」と「OpenWorkリクルーティング」の2つの事業が当社を支えています。先ほど新サービスのオルタナティブデータ事業についてお話ししましたが、データをどんどん蓄積していく中で、「OpenWorkリクルーティング」を就活生向けの事業として収益化することも考えています。

「OpenWorkリクルーティング」は就活生の2人に1人に利用されている状況です。今はまだほとんど収益化できていないのですが、今後の当社の長期的な成長戦略の1つになり得るのではないかと考えています。

決算サマリー

オープンワークが本当に伸びているか気になると思いますので、直近の決算について簡単にご説明します。2023年12月期第3四半期累計の決算サマリーです。当社の決算期は12月ですので、1月から9月までの数値となっています。

営業収益は21億9,800万円で、前年同期比50.5パーセント増となりました。期初計画に対する通期達成率は86.2パーセントですが、上方修正を行いました。その上方修正数値に対しては77.1パーセントの達成率となっています。

営業利益は7億6,300万円で、前年同期比63.9パーセント増となりました。こちらは上方修正していませんので、通期達成率はすでに93.1パーセントになっています。こちらに対して、「少しコンサバ過ぎるのではないか」「営業利益は間違いなく計画を超えるのでは」との声をいただくこともあります。

しかしながら、オープンワークとしてはしっかりと売上を上げて利益が出た分、第4四半期は、成長に向けて投資したいと考えています。来年の成長にすぐにつながるわけではないのですが、新しい新サービスの企画等にしっかりと投資したいと考えています。

営業利益に関しては、年始にガイダンスとして出した8億2,000万円にしっかりコミットしていくものの、それ以上に関しては、来年、そして来年以降の成長にしっかりと投資したいと考えています。

「OpenWork」と「OpenWorkリクルーティング」をサービス別に見ると、「OpenWork」は営業収益が7億9,100万円で、前年同期比6.5パーセント減となっています。一方、「OpenWorkリクルーティング」の営業収益は13億8,100万円で、前年同期比128.0パーセント増となっています。

「OpenWork」に関しては、先ほどもお話ししましたが、提携している他社の人材系サービスに、当社のユーザーを紹介してしまっているのです。もちろん収益は上がるのですが、私たちのデータベースには履歴書が貯まっていきません。

オープンワークの今後の方針としては、一番ストック性の高い「OpenWorkリクルーティング」上に、「OpenWork」のユーザーのデータもしっかりと貯めていき、優良企業がしっかりと採用していけるプラットフォームにしていきたいと考えています。

つまり、「OpenWork」に関しては、基本的には現状維持、もしくは少しずつ減収にしていく考えです。今回の前年同期比6.5パーセント減は、不慮の事故などではなく、狙いどおりですのでご安心ください。

KPIをいくつか開示していますが、本日のセミナー参加者に特別にお話ししますと、一番見るべき数字はWeb履歴書登録者数だと思います。当社で一番伸びているのがOpenWorkリクルーティング事業で、採用市場は売り手市場です。つまり、ユーザーである働き手側が足りていない状態です。

みなさまご存知のとおり、最近は人手が足りずに倒産する会社も出てきています。それほど、働き手が足りなくなっていますので、履歴書の登録者数がどれくらい増えているか、特に、昨年と比べてどれくらい増えているかが、次の3ヶ月、6ヶ月先の「OpenWorkリクルーティング」の成長につながります。

オープンワークに興味を持った方は、この1年、2年の間は、Web履歴書登録者数がどのくらい増えているかに着目するとよいと思います。

それ以降は、その中でもアクティブになっている履歴書はどのくらいかなど、着目すべきポイントは変わっていきますが、現時点で開示しているKPIの中で一番当社の業績を予測するのに使えるのは、Web履歴書登録者数およびその増加数だと捉えてください。

ハイライト

ハイライトでは数値の詳細を記載していますが、ほとんど説明済みですので割愛します。

業績推移(四半期ごとのサービス別営業収益の推移)

四半期ごとのサービス別営業収益の推移です。先ほどご説明したとおり、「OpenWork」はやや減益、「OpenWorkリクルーティング」は倍の成長をしっかりと遂げることができました。

各種KPI / OpenWorkリクルーティング

スライドは「OpenWorkリクルーティング」の契約社数と、累計Web履歴書登録数の推移のグラフです。すでにご説明済みですので割愛します。

各種KPI / OpenWork

スライドは「OpenWork」の累計登録ユーザー数と、累計社員クチコミ・評価スコア数の推移のグラフです。こちらも同じく、ご説明は割愛します。

営業費用の推移

営業費用に関するご質問を時々頂きますので、簡単にご説明します。企業の成長に合わせて販管費が増加していっています。

このあたりのコストコントロールについては、現状は人件費・広告宣伝費ともに25パーセント程度の増加となっており、事業の成長に合わせて人材と広告を増やしています。

「なぜ広告を出稿するのですか?」というご質問をよく受けます。「『OpenWork』の強みとして、広告費をかけなくてもユーザーやクチコミを集められていると言っていたのに、嘘ではないか」と思うかもしれません。こちらは、認知度をしっかりと高めて、認知を変えていくために投資しています。

冒頭にお伝えしたとおり、「OpenWork」は社員クチコミサービスとしての認知が強いため、実は社員クチコミだけではなく、転職・就職までできる総合のプラットフォームになっていると認知を転換させていきたいと考えています。

また、多くの方が、実は「OpenWork」と知らないまま使っているケースが多いこともわかっています。例えば、「企業名 年収」などで検索すると、検索結果で「OpenWork」が上のほうに出てきます。年収を見たくて登録してみたものの、年収を見ることができて満足して離脱してしまい、登録したサイト名はわざわざ覚えていません。

そのようなユーザーも多くいますので、しっかりと「OpenWork」の認知を上げ、認知の内容自体も変えていくために、特にマス広告を少しずつ展開していきたいと考えています。

営業利益(3Q累計期間)の増減要因

第3四半期累計期間の営業利益の増減要因です。大部分が好調による増収と、先ほどお伝えした人件費とテレビCMの増加によって、その差分が利益につながっています。

主要コストの営業収益比率の推移

営業収益比率に関しては、同じようなお話ですので割愛します。

2023年12月期 通期業績予想の修正

先ほど簡単にお話ししましたが、もともと当社は、営業収益25億5,000万円で当初計画を出していました。みなさまの応援もあり、今年に関しては営業収益予想を28億5,000万円に上方修正しました。

その他コーポレートアクション

これも褒めていただくことが多いのですが、コーポレートアクションとして、当社株式の流通活性化や、株式市場で認知度向上、投資家との対話をより積極的に図っていきたいと考え、株式分割や自己株式の取得を行いました。これにより、資本戦略をもう少し柔軟に行えるようにしていきたいと考えています。

質疑応答:「OpenWork」の成長見込みについて

司会者:「『OpenWorkリクルーティング』は非常に堅調ですが、『OpenWork』は前期比6.5パーセントの減収となりました。来期以降の成長の見込みをどのように考えていますか?」というご質問です。

大澤:よくいただくご質問の1つです。おっしゃるとおり、「OpenWorkリクルーティング」は堅調ですが、「OpenWork」の有料会員と提携送客の2つに関しては、基本的に現状維持、もしくは、やや減らしていくと捉えてください。

「OpenWork」のクチコミを見るために月額1,000円支払っていただいている有料会員は、この数年は年2パーセントから、3パーセントくらいの成長で伸びていますので、基本的には現状維持プラスアルファ程度です。

提携送客では、「OpenWork」のクチコミを見るために、ユーザーに提携の人材サービス等に登録してもらい、当社はその紹介料をいただきます。当社にとっては、当社のデータベースや貴重なユーザーを競合他社に渡していることと同義ですので、できるだけ避けていきたいと考えています。

当社にデータを蓄積していくことが、結果として、ユーザーのみなさまにより良い情報を還元できることにつながると考えていますので、提携送客に関しては少しずつ減らしていく、もしくはほぼ現状維持と考えています。

したがって、来年以降も「OpenWork」に関しては、前年を少し割るか、現状維持になると考えてください。その分、「OpenWorkリクルーティング」をしっかりと成長させる経営方針となっています。

質疑応答:ユーザー数・クチコミ数と収益の相関について

司会者:「KPIであるユーザー数とクチコミ数は増加していますが、実際の転職数も比例して増加し、収益の増加につながるのですか? 今後、収益がどのように増加すると予想していますか?」というご質問です。

大澤:非常に鋭いご質問だと思います。結論からお話ししますと、直接影響するわけではありません。簡単にからくりをご説明すると、クチコミ数が増えると、それを見たいユーザーが増え、ユーザーのトラフィックが増えます。

そして、登録ユーザー数だけではなく、既存の登録ユーザーがまた見に来ることで、アクティブユーザーが増えていきます。アクティブユーザーが増えると、その中の一部のユーザーが、クチコミを見るために履歴書を登録します。

履歴書を登録すると、「OpenWork」上でスコアの高い優良企業が、「この方と一緒に働きたい」と、スカウトを送ります。すると、「OpenWorkリクルーティング」での採用数・入社数が増え、「OpenWorkリクルーティング」自体の売上が上がっていく構造になっています。

つまり、直接的につながりがあるわけではありませんが、クチコミ数が増えればユーザーも増え、ユーザーが増えれば履歴書が増え、その結果、「OpenWorkリクルーティング」の売上が上がっていきます。少し遠いですがつながっていると捉えてください。

質疑応答:オープンワークで積極的に採用している職種について

司会者:「主要コストについて質問です。スライドには、今期、『人件費率は採用の積極化で増加に転換』との記載がありますが、どのような職種の方を採用することが多いのでしょうか?」というご質問です。

大澤:当社の場合、プログラミングやプロダクト等の制作を担うエンジニアと、セールスが特に多いです。ただし、ほぼ全職種でまんべんなく採用しているのが正直なところです。

「OpenWork」は「営業人員を増やして売上をとにかく伸ばしていこう」というよりは、プロダクトとセールス、そして「OpenWork」に投稿されるクチコミの品質管理が三位一体となって伸びていくビジネスです。

エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャー、データアナリスト、データサイエンティスト、セールスコンサルタント、コーポレートスタッフなど、まんべんなく採用した結果、人件費が増えていると捉えていただければ幸いです。

質疑応答:データ提供サービスの展開について

司会者:「ヘッジファンドに加工データを提供して利用料をもらうビジネスをスタートするとのお話がありました。御社のデータが欲しい方はたくさんいると思うのですが、ヘッジファンド以外にもデータ提供サービスを展開することは考えているのでしょうか?」というご質問です。

大澤:ホームページに少し公開しているように、まだテストマーケティング中ではありますが、検討しています。

今、特に上場企業において、人的資本の情報開示が課題になっています。そのようなニーズに合わせ、投稿されたクチコミデータを当社が分析してレポートにするサービスをスタートさせました。

例えば、とある企業のクチコミと、より業績や株価の良い同業他社のクチコミを比較して、どんな差異があるか、例えばどのようなキーワードが投稿されているかを分析できます。

また、AIを使って、投稿された定性の文章をベクトル化し、スコア化することで、働きがいや働きやすさ、組織文化などの数値化しにくいデータを数値化することに当社では成功しました。

それよって、今、自社にはどのような課題があるか、なぜ採用で負けてしまうのか、なぜ人が辞めてしまうのか、といった疑問に一定のインサイトを与えられると考え、テスト的にサービスをスタートしています。

まだ数社しか納入できていないのですが、好反応をいただいていますので、今後はこのようなサービスも展開していけるかなと思っています。ただし、収益に大きく跳ね返るようになるには少し時間がかかる見込みです。

質疑応答:オルタナティブデータサービス事業の見通しについて

司会者:「オルタナティブデータサービス事業の拡大可能性に非常に魅力を感じますが、『OpenWorkリクルーティング』などの既存事業もある中で、社内のリソース配分が難しいと思います。この事業を何年で、どのぐらいの規模にしたいのか、イメージはあるのでしょうか?」というご質問です。

確かに、新サービスだからといってたくさんの従業員を割り当てるのは難しいですね。

大澤:非常に鋭いご質問です。フェア・ディスクロージャーの観点から詳細はお伝えできませんが、お答えできる範囲で回答します。

おっしゃるとおり、現時点では新事業に対する社内リソースの配分を非常に控えめにしています。事業として伸びるかどうかまだわからない上、オルタナティブデータ市場の規模については諸説あるものの、世界でもまだ数千億円と言われるほど小さいです。日本の中途採用市場は5,000億円から6,000億円規模と言われていますが、それ以下ということになります。

ただ、ある市場調査会社の調べによると、オルタナティブデータの市場規模は2030年までに15兆円にまで成長すると言われています。

それならばそちらに力を注いだほうがよいのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、その中で、日本の投資市場や企業に投資したいというファンドや機関投資家は限定的で、予算も限られています。

私は今年、オルタナティブデータのカンファレンスへ参加するためにニューヨークを訪れ、直接営業に行ってきました。全体で800社ぐらいある中で、日本のマーケットに興味がある投資ファンドやデータソーサーはそれほど多くない印象でした。

このように、マーケットサイズがそこまで大きくならない可能性がある中では、まだ大きなリソース配分ができません。スライド上で「その他サービス」と記載した事業の売上については、全体の1パーセントにも満たないのが現状です。このまま展開しても、おそらく2年から3年後にも1パーセントから2パーセント程度にしかならないのではないかと思います。

まだ難しい市場だと思っていますので、タイミングを見ながら展開していく予定です。ただ当社としては、「OpenWork」が扱うデータの品質の高さを証明する事業にもなりますので、まずは少ないリソースで粛々と進めていきたいと考えています。

質疑応答:来期の転職市場の見通しについて

司会者:「来年度の転職市場の見通しを教えてください」というご質問です。

大澤:簡単にお答えします。個人的には、来期においても転職市場は活況が続くのではないかと捉えています。DX推進によるコンサル業界の採用人数はいったん落ち着くかもしれない感覚もありますが、一部の層はまだ活況です。

実は、人的資本情報の開示において、今年はキャリア採用の比率を開示する企業が増え続けています。2022年、2023年ほどの勢いはなくなるかもしれませんが、大手企業のキャリア採用がさらに進み、採用のターゲットは変化しながら活況が続くのではないかと考えています。

質疑応答:『OpenWork』ユーザーの属性について

司会者:「『OpenWork』は転職を目的とするユーザーが多いのでしょうか、それとも、企業分析のために閲覧したい人が多いのでしょうか? ボリュームがある年齢層や男女比率など、属性を教えてください」というご質問です。

大澤:おっしゃるとおり、キャリア採用での転職を目的とするユーザーが多く、新卒の就活生と比べればすでに働いている方の割合が圧倒的に大きいです。と言うのも、2024年卒の就活生は50万人弱と言われていますが、全体の労働人口は数千万人いますので、必然的にキャリア採用目的で利用される方が多数を占めます。

ただし、就活生に関しても、2023年卒の就活生のうち29万人が「OpenWork」に登録してくれていました。就活生の2人に1人以上が「OpenWork」を使っていることになりますので、労働市場における(登録率の)割合としては、実は新卒のほうが大きくなっています。

ユーザー全体の年齢層ですが、一番のボリュームゾーンは20代後半から30代前半です。なぜ20代前半は利用しないかと言いますと、大学生が就活を終えて就職し、まずはその企業でがんばろうと考えて、2年から3年は「OpenWork」から離れるケースが多いためです。その後、25歳から26歳ぐらいでまた戻ってくるユーザーも多いように感じています。

男女比率の詳細は非公開ですが、実際の労働者比率に近く、男性のほうが大きくなっています。ただし、男性ユーザーが圧倒的に多いということはなく、あくまで世間の労働人口の男女比がそのまま反映されていると捉えていただければ幸いです。

司会者:就活生の半分以上が登録されているというのは、大きな宣伝をしたわけではなく、周囲のクチコミから「OpenWork」を利用する流れが生まれているということなのでしょうか?

大澤:おっしゃるとおりです。就活生のユーザーに「OpenWork」を利用し始めた理由を聞いたところ、一番多いのは「先輩や親から紹介された」というものでした。

就活で何を使えばよいか先輩に聞いた時に「『OpenWork』は絶対に入れておけ」と言われたり、「本当にその企業に行くかどうか、最後に『OpenWork』で確認しろ」と親御さまから言われたりして使い始めた方が多いようです。「OpenWork」そのものがクチコミで広がっていることを知り、驚きました。

質疑応答:「OpenWork」の有料会員比率について

司会者:「『OpenWork』では自分でクチコミを投稿するほかに、有料会員としてクチコミを閲覧することもできるかと思います。全体のユーザーのうち、この有料会員が占める割合はどの程度でしょうか? また、その比率は『OpenWork』のユーザー数が増えるにつれて低くなるという理解で問題ないでしょうか?」というご質問です。

大澤:有料会員による月額課金収入と提携送客の紹介料収入を足し合わせたものが「OpenWork」の売上で、8億円から9億円程度になります。その割合は非公開としていますので、残念ながら詳細はお答えできません。

おっしゃるとおり、「OpenWork」のユーザーは自分でクチコミを投稿することもできれば、月額1,000円を払う有料会員になることもできれば、履歴書登録や提携先の紹介を選ぶこともできます。ただ、「OpenWork」はクチコミ数が多くなるほど、もしくは魅力的な企業からスカウトが届きやすくなるほど、履歴書を登録したりクチコミ投稿をしたりするユーザーが増えていきます。

結果的に、現在は有料会員の割合が低くなっており、どちらかといいますと履歴書登録やクチコミ投稿をしてくれるユーザーが増えてきている傾向にあります。

質疑応答:「OpenWorkリクルーティング」におけるエージェントとの利益配分と、全体の売上に占める割合について

司会者:「『OpenWorkリクルーティング』の採用成功報酬は1人あたり80万円ということですが、エージェント経由での採用となった場合、御社の取り分はどのぐらいなのでしょうか? また、エージェント経由の売上は全体の何パーセントを占めていますか?」というご質問です。

大澤:「OpenWorkリクルーティング」において、企業が直接対応して採用に至った場合の成功報酬は一律80万円で、エージェントさま経由で採用した場合は別のプランがございます。売上構成比はお伝えできないのですが、おおよそ半々で、企業の直接対応のほうがやや大きい程度にお考えいただければと思います。

エージェント経由の場合をご説明します。例えば、エージェントさまが「OpenWork」のデータベースを使ってA社への採用を決定した場合、まずはエージェントさまからA社へ手数料を請求します。

この手数料は、「採用された方の理論年収×35パーセント」に設定されているケースが多いです。年収1,000万円であれば350万円の手数料がエージェントさまに支払われ、当社はそこから30パーセントを「OpenWork」のデータベース利用料として頂いています。

この場合は「1,000万円×35パーセント×30パーセント」となり、105万円が当社の取り分になります。この額は、ユーザーの理論年収やエージェントさまが企業と結んでいる手数料率によって変動します。

最近は手数料率を100パーセントとしている会社も増えていますし、逆に30パーセントや25パーセントなど低めに設定しているエージェントさまもいらっしゃいます。それらの数字次第で当社が頂ける金額が変わってきますので、一律には言えないところです。

質疑応答:市場鞍替えの検討について

司会者:「東証グロース市場に上場されていますが、市場鞍替えに関する情報は出されていますか? 出されていない場合、方向性についてお話しいただけないでしょうか?」というご質問です。

大澤:市場鞍替え計画に関して、現地点では情報は出しておらず、方向性についてもお答えできる内容はありません。今後、当社の資本政策上必要になってくるタイミングや多くの方とともに歩んでいく必要があると判断したタイミングでは適宜検討することがあるかと思います。今のところはなんともお伝えできない状況です。

質疑応答:競合他社の実態と対策について

司会者:競合他社に関するご質問が2つ来ています。「御社と同様のサービスを提供している競合他社は存在するのでしょうか?」「仮に大手の競合が出てきた場合、どのような対策を取られるのでしょうか?」というご質問です。

大澤:結論からお話ししますと、競合はたくさん存在します。社員クチコミに特化したサイトとして、例えばエン・ジャパンさまが運営する「ライトハウス」や、リブセンスさまが運営する「転職会議」があります。ダイレクト・リクルーティングの観点からはリクルートさま、ビジョナルさまなどが競合と言えます。

ただし、これらの要素をすべて備えた競合企業は、日本ではなく海外に2社あると捉えています。1つは、オーストラリアに本社を置くSEEK社です。「クチコミ×採用」という切り口でサービスを約20ヶ国に展開しており、日によって、また為替によっても変わりますが、時価総額は1兆円程度と非常に大きな会社です。

もう1つは、みなさまご存知のリクルートさまが買収したIndeed社が、さらに買収したGlassdoorという会社です。これは、アメリカではおそらくクチコミ数No.1かと思いますが、非常に多くのクチコミを集めている会社で、Indeedの求人情報とも連携しています。

当社はまだグローバルには展開していませんが、クチコミというCGMとマッチングサイトを統合できているという意味で、私が把握している限り、世界ではこのSEEKとGlassdoorが非常に強い競合だと思っています。

このような海外勢の日本市場への展開についてですが、Indeedさまはすでに圧倒的に展開しており、Glassdoorとの連携もされていますので、すでに日本市場に競合はいます。ただし、日本の自然言語データに関しては当社が圧倒的なデータ量を保有しており、まだ先行優位性があるのではないかと思っています。この優位をしっかりと活かし続けていくことが大切です。

今後も良質なクチコミを集めて、ユーザーのみなさまにとって価値ある情報を提供し続けることで、ネットワーク・エフェクトの逆回転が起こる可能性をできる限り低く抑えていきます。そのような対策を続ける一方で、ユーザーのみなさまに新しい価値を届けていかないと飽きられてしまいますので、対策として新サービスのリリースを検討しているところです。

質疑応答:海外展開について

司会者:「海外に競合がいるというお話でしたが、逆に御社が海外展開する可能性はあるのでしょうか?」というご質問です。

大澤:機関投資家向けのデータベースサービスに関しては、すでに売上の半分以上は海外の企業さまからいただいていますので、そのような意味では小さな海外進出を果たしていると言えると思います。

ご質問の意図は「OpenWork」による「社員クチコミ×採用」のサービスを海外展開しないのかということだと存じますが、こちらに関しては、残念ながら現時点ではお答えしかねます。

個人的には大変興味を持っています。「OpenWork」ほど質の高いクチコミを集めるノウハウは非公開にしていますが、実は海外の同業他社の経営者などから「どのようにして、ここまで品質の高いクチコミを集めているのか」というご質問をいただくこともあるほど、競争優位性の高いものです。

このようなサービスを持っていれば、海外でも良質なクチコミを集めてマッチングプラットフォームと統合することはできなくはないと思うのですが、現時点ではお答えできないという回答にさせてください。

質疑応答:現金の使い道について

司会者:現金の使い道に関するご質問が2つ来ています。「貸借対照表を見ますと、9月末時点で現金が56億円積み上がっているようですが、どのような使い道を考えていますか?」「現金の使い道として、M&Aなどはお考えでしょうか?」というご質問です。

大澤:上場の際に、集めた資金は広告と人材に投資するとお話ししています。ただし、現在のキャッシュフロー等を見ると、どちらかと言いますと積み上がっている状況ですので、何か違うのではないかと思われるかもしれません。

実は経営チームにおいて、明確な時期は決まっていないものの、当社の経営方針として認知度を一気に拡大させていく必要があるのではないかということが、度々議論されています。

「OpenWork」はまだ認知が進んでおらず、ユーザーは増えているものの、クチコミサイトとしか思われていないような状況です。そのような時に、他社は年間のマス広告費に50億円、100億円と投資しています。

広告投資をしてから履歴書が登録され、入社した日に入金されると考えれば、広告を打ってから大体8ヶ月から10ヶ月後に売上が上がる計算です。そのように考えると、例えば広告に50億円投資した場合、その期間は現金がなくなりますので、キャッシュフロー的にはかなり不安な状況になるかと思います。

現在、現金が50億円から60億円積み上がっているとはいえ、広告に本当にコストをかけて日本のトップ企業に挑む方針を採るには、まだ安心できないレベルだと思っています。

また、これは2つ目の質問につながりますが、当社の経営方針として、自社でサービスを開発してデータを積み上げていくよりも、他社と一緒になったほうが経営戦略を実現するスピードが上がるのではないかと判断した場合は、M&Aも検討する余地があります。

どれもお約束できることはなく、今開示できるものはないのですが、そのような考えからBS上で現金をしっかりと積み重ねていると捉えていただければ幸いです。

質疑応答:配当について

司会者:「御社は今後も成長されると思いますが、現金は配当に使われたらいかがでしょうか?」というご質問です。

大澤:ありがとうございます。そのようなご提言もよく頂くのですが、今は考えていません。集めた資金は成長に向けて投資して企業価値を上げ、より多くの企業やユーザーに価値を届けたいと考えています。

当社の企業価値が向上することで、結果として投資家のみなさまに還元できるものが大きくなるのではないかと思っていますので、現時点では現金を配当に回すことは考えていません。

質疑応答:「OpenWorkリクルーティング」のユーザー属性と、企業が期待する職種について

司会者:「『OpenWorkリクルーティング』に登録するユーザーの属性や、企業側が期待する職種について教えてください」というご質問です。

大澤:特に多い職種は3つあります。1つ目は営業系、2つ目はIT系として、エンジニア、デザイナー、データサイエンティスト、データアナリスト、プランナー、プロダクトマネージャーといった、いわゆるDX職種です。

3つ目はバックオフィス系で、人事、経理、総務などコーポレートスタッフとなります。これらの職種は登録ユーザーとしても、実際に採用される職種としても多くなっています。

質疑応答:「OpenWork」に登録された履歴書の扱いについて

司会者:「『OpenWork』にWeb履歴書を登録したユーザーの就職が決まった際には、履歴書の登録は抹消するのでしょうか? 数年前の転職者の履歴書がカウントされているということはないのでしょうか?」というご質問です。

大澤:ご本人が希望すれば履歴書の登録は抹消しますが、ほとんどの方は抹消しません。そのため、数年前の転職者の履歴書ももちろんカウントし続けています。スライドに記載したWeb履歴書登録者数は延べ人数ということになります。

今は1回転職して終わりではなく、特にエンジニアの方などは2年から3年に1度は転職するのが当たり前になってきています。「OpenWork」で転職してもそのまま履歴書を残しておく方もいますし、もっと良い会社から引き抜かれたらすぐにそちらへ行こうということで、転職した後も常に「OpenWork」にログインして情報を閲覧しているユーザーもいます。

そのような意味でも履歴書登録を抹消する方はほとんどおらず、数年前の転職者の履歴書もカウントし続けていますが、事業上はまったく問題ありません。

問題があるとすれば、アクティブユーザーを開示する場合かと思います。現在は非開示にしていますが、今まさにログインしている、もしくは求人を見ているユーザーの中で履歴書を持っている方がどのぐらいいるかを開示したほうが、事業予測のKPIとして有効かもしれないと考えており、今悩んでいるポイントです。

司会者:現在アクティブユーザーを開示していないのは、何か理由があるのでしょうか?

大澤:この事業自体が始まって間もないこともあり、Web履歴書登録者数が比較的売上に直結しやすいKPIになっています。そのため、あまり細かい数字を出すよりも、売上との連関が強いWeb履歴書登録者数や、その1年間での増加数のほうが投資家のみなさまの判断材料になるだろうと考え、こちらを開示しています。

質疑応答:リンクアンドモチベーションとの関係について

司会者:親会社のリンクアンドモチベーションとの関係に関するご質問が2つ来ています。「親会社であるリンクアンドモチベーションとの今後の資本関係について、答えられる範囲で教えてください」「リンクアンドモチベーションとの事業シナジーはあるのでしょうか?」というご質問です。

大澤:こちらもよくいただくご質問ですので回答します。リンクアンドモチベーションは、当社における発行済株式の総数に対する所有株式数の割合の51パーセント以上を占めており、会社法上は親会社と子会社という関係で、親子上場しています。

具体的な連携として、リンクアンドモチベーションは組織の人事開発をお手伝いしていますので、その領域で採用ニーズがあります。ただし、リンクアンドモチベーションは自社で採用メディアやCGMを持っているわけではありません。

採用を検討されているお客さまに対して「子会社にオープンワークという会社もありますよ」というかたちで他のサービスと一緒にご紹介いただき、お客さまが「ではオープンワークに声をかけてみよう」となれば、当社のほうで商談がスタートすることもあります。

逆のパターンとして、「OpenWork」を利用されている当社のお客さまから「組織のことで困っているんだよね」とご相談があれば、当社からリンクアンドモチベーションを含めたいろいろな会社をご紹介する場合もあります。お互いのドメインが非常に似ていますので、相互にお客さまを紹介できるという点は、一番わかりやすいシナジーだと思います。

そもそも、当社とリンクアンドモチベーションは目指している方向性がかなり似ているところがあります。リンクアンドモチベーションは働きがいのある会社をたくさん作ることを目指しているため、リンクアンドモチベーションが伸びれば伸びるほど、「OpenWork」を使って採用できる企業が増えていきます。

同時に、当社が成長して市場での影響力が増すほど、「OpenWork」に掲載する企業は組織を良くしなければスカウトが打てなくなります。しかし今は売り手市場で「OpenWork」に多くの求職者が集まっているため、「『OpenWork』を利用せざるを得ないけれども、なかなか組織が良くならない」という時に、リンクアンドモチベーションを頼ろうという会社が増えていきます。

お互いが伸びていると、結果としてシナジーが生まれやすくなっていきます。もちろん、お客さまを相互に紹介することもありますが、双方が持っているミッションを実現していくと、結果的に双方の社会的ニーズが高まっていくということが、一番のシナジーだと私は感じています。

資本関係の今後の予定についてはお答えできないため、「現時点では特に何か決まった予定があるわけではない」と回答させてください。

質疑応答:リンクアンドモチベーションからオープンワークへの要望について

司会者:リンクアンドモチベーションからオープンワークに対して、要望や指摘などはあるのでしょうか?

大澤:ありません。経営としては独立しており、私も実はリンクアンドモチベーション出身ですが2018年に退職し、経営チームとしては完全に独立して運営しています。

経営として、ガバナンスを利かせるという意味では当たり前だと思いますが、やはりリンクアンドモチベーションにとっても、当社の企業価値が上がることが、資産を増やすことにつながっていきます。

また、先ほど言った双方のシナジーも大きくなっていくため、何か依頼があるということではなく、とにかくオープンワークの企業価値を高めることに注力するよう期待されており、他の株主さまと変わらないと思います。

質疑応答:アクティブユーザーを優先的に通知する機能について

司会者:「Web履歴書の更新タイミングが新しいほどアクティブユーザーであり、求職の希望度合いが高い可能性があると思うのですが、そのようなユーザーを優先的に人材紹介エージェントや、求人企業に通知するような機能はあるのでしょうか?」というご質問です。

大澤:同業者の方か専門家の方からのご質問でしょうか? 非常にお詳しいなと感じました。結論から言うと、あります。

人材採用には、いわゆる「ホットホット」という概念があります。採用意欲の高い企業と、転職意向度の高いユーザーという、お互いホットな人同士をつないでいくと、できるだけ早く採用が決まっていくというものです。

当社があまりしたくないこととしては、採用意欲がある会社を、ユーザーに無理やりつなぐということです。これはまず行いません。確かに、採用意欲がある会社につなげば売上は上がるのですが、当社は、やはり「ユーザーには優良企業に入社してほしい」と思っています。

したがって、「今、転職したい」「自分のキャリアに非常に興味がある」というアクティブユーザーには、「転職意欲が高く、ホットです」というマークが検索結果に表示される機能を持っています。このように、その方のキャリア形成をサポートする機能は、すでに「OpenWorkリクルーティング」に実装されています。

質疑応答:良いクチコミの基準について

司会者:「良いクチコミを集めるとお話しされていましたが、『良いクチコミ』の基準があればいくつか教えてください」というご質問です。

大澤:こちらも大変鋭いご質問ですね。哲学などを嗜まれている方だったら、非常に仲良くなれそうだと思います。

ルールは開示できませんが、非常にすてきな質問なのでお答えします。やはり、良し悪しは人間が主観で決めるものです。前提としては、使っていただいているユーザーの方が「このクチコミは価値が高い」と感じたものが、良いクチコミになります。

芥川龍之介の『羅生門』で、老婆が死体から髪を抜いていたことを、下人は最初「悪いことだ」と思っていたが、後から「いや、生きるためには俺もしよう」と思うようになったように、同じ事象でも、同じクチコミでも人によって感じ方が変わるため、なかなか「良いクチコミ」の定義はしにくいと思います。したがって、イメージが湧かないというのも、そのとおりだろうと思います。

基準が1つだけあるとしたら、「OpenWork」のクチコミに設置されている「GOOD!」ボタンの押された数です。

ユーザーの方が「このクチコミがすごく役に立った」と思った時に、この「GOOD!」ボタンを押せるようになっています。こちらは無制限に押せるものではなく、1企業で1回しか押せないことになっているため、多く押されている場合は、相当良い、本当に役に立ったクチコミだと思います。

「OpenWork」では、クチコミの中で新しいもの、「GOOD!」ボタンが多く押されているものが、みなさまに見ていただきたいクチコミですので、できるだけ上に表示されるようになっています。多くの人にとって役に立ったクチコミという観点では、「GOOD!」を押された数の多いものが「良いクチコミ」と言ってよいのではないかと思います。

質疑応答:他社によるダイレクトリクルーティングサービスについて

司会者:「採用企業がダイレクトリクルーティングをする際に、『OpenWorkリクルーティング』以外の採用方法は、どのようなものがあるのでしょうか?」というご質問です。

大澤:オープンワークのサービス以外ということかと思います。一番有名なのは、やはり「ビズリーチ」でしょうか。最近だと「リクルートダイレクトスカウト」も、ダイレクトリクルーティングとしては非常に有名なサービスだと思います。

質疑応答:マッチングのアルゴリズム研究開発について

司会者:「リクルーティングにおいて、投稿者と企業をうまくマッチングさせることが、御社のビジネスの優位性だと思います。そのためのアルゴリズムについての研究開発は、どのように行っているのでしょうか?」というご質問です。

大澤:これも良い質問ですね。当社の中では、2つあります。

1つは、R&Dというよりも、シンプルな業務として取り組んでいることです。2012年のノーベル経済学賞受賞者であるアルヴィン・ロス先生がおっしゃっているのは、「マーケットデザインの要素は、厚みを増して、お互いに行き来する混雑を解消する」ということですが、私たちも、マッチングをいかにスムーズに行うかについて、日頃からABテストを行っています。

このように、「どのような仕組みにすると、よりユーザーと企業が出会え、満足度が高くなるか」という課題に、ふだんの仕事で取り組んでいます。これは、当社がデータサイエンティストを採用している理由の1つになっています。

もう1つは、どちらかというとR&Dに近いのですが、自社だけではなく、外部の企業や研究機関と連携しての取り組みです。実は、論文が出ているのも、このあたりの取り組みです。

例えば、投稿されたクチコミを自然言語でクラスタに分類し、「この企業はこのようなクチコミが投稿されやすい」などの傾向を出していきます。その技術はもちろん、自社でもできるのですが、自社でリソースが足りない時は、他の企業と共同研究することもあります。それを活用したマッチングは、今後自社で取り組んでいきますが、このように外部の研究機関とのR&Dも進めています。

以上のように、日常業務と外部機関との連携によって、アルゴリズムの進化に取り組んでいます。

質疑応答:「OpenWork」の得意分野について

司会者:「他社には、例えば『外資系に強い』『ハイクラスに強い』など得意分野を持つものがあり、それに応じて求職者もサービスを使い分けている気がします。私の印象では、『OpenWork』は得意分野がなさそうに見えます。

得意分野を意図的に作っていないのかもしれませんが、一方で、得意分野形成は、全体的な認知度向上にプラスになるのではないかとも思います。このあたりの現在の方針について、お話をお聞かせください」というご質問です。

例えばハイクラスの人は「『ハイクラスに強い』と謳う『ビズリーチ』を使おう」と考えそうですが、「OpenWork」には得意分野がなさそうに見えるため、クチコミを見る人はいても、「この分野に強いから『OpenWork』を使ってみよう」と考えて利用する人が少ないのではないかというご質問ですね。

大澤:こちらも、当社のCMOなのではないかと思うぐらい鋭いお話です。おっしゃるとおりだと思います。

意図的に「OpenWork」は全方位に向けて作っており、非常に多くのユーザーが登録しています。特に多いのは20代後半で、年収が平均よりもやや高い、ハイクラス予備軍の方です。

これまでは得意分野を作らず、まず「どのような分野でのマッチングが生まれやすいか」「どのようなところにニーズがあるか」について、模索している時期でした。

今後は「初めての転職で失敗がない」というポジションを取っていこうと思っています。したがって、得意分野としては、20代後半くらいの1回目の転職で、今まで非常に順調にキャリアを築いてきている優秀層に対して展開していきたいです。

このように、ハイクラス予備軍の方によく使っていただけるサービスということは、1つの特徴としていってもよいのではないかと考えています。

質疑応答:社員クチコミと業績の相関性について

司会者:「私も投資家ですので、『OpenWork』の社員クチコミと、その会社の業績に完全相関がないか、統計を取ってみようとチャレンジしたことがありますが、なかなか有意な相関性は見られませんでした。

先ほどのご説明の中で、『相関性がある』とおっしゃっていましたが、それは素人がデータを何個か取っただけでは見いだせなくても、ビッグデータ分析を活かした、御社にしかない情報があるということになり、優位性があるのではないかと思いました」というご感想です。

大澤:そのとおりだと思います。まず、そのように興味を持っていただき、大変うれしいと思います。情報は2段階あります。

1つは、査読付きの論文に通っているものの多くは、定量的なコメントではなく、定性のクチコミの良し悪しを、センチメント分析と呼ばれる機械学習を使って測っており、まず、この技術がないとできないということです。

もう1つは、これがヒントになると思うのですが、スコアではなく微分値を取っていただくと、プロでなくても、もしかしたらわかるかもしれません。

実は論文では、絶対的なスコアではなく、その企業のスコアが改善傾向か、悪化傾向かという点との強い相関があることがわかっています。もし、もう一度チャレンジしていただくとしたら、この微分値を見ていただくとおもしろいと思います。

質疑応答:「ONE CAREER」等の新卒特化型採用支援事業との違いについて

司会者:「リクルーティング事業は、『ONE CAREER』等の新卒特化型採用支援事業とバッティングしていますか?」というご質問です。

大澤:「OpenWork」において、現時点では新卒採用向けのサービスをそれほど大きく展開していないため、著しくバッティングしているというわけではありません。

先ほどお伝えしたとおり、実はもう「ONE CAREER」に負けないぐらい、新卒の方のユーザー数が増えてきており、「今後バッティングする可能性はあるかもしれない」という回答とさせてください。

質疑応答:契約社数の中長期目標数について

司会者:「ダイレクトリクルーティングサービスの契約社数は、2,640社と資料に記載されています。中長期の目標数はありますか?」というご質問です。これも非開示の部分もあると思いますが、答えられる範囲でお願いします。

大澤:もちろん現場で追っている目標はありますが、開示はしません。今後もしないと思いますが、あまり契約社数が、売上に寄与する感覚がありません。

2つの観点があるのですが、1つは、現在、売り手市場であり、加えて「OpenWork」は初期費用が無料であるため、企業の契約を取ることはそれほど難しくありません。

どちらかといいますと、ただ契約社数を増やすのではなく、どのようにすれば「OpenWork」上で、 スコアの高い会社・魅力的な会社に、参画・契約してもらい、求人を出してもらうかのほうが大事だと考えています。

中長期の目標数よりも、「このような会社に『OpenWork』のリクルーティング契約をしていただきたい」という、ABM上での目標を持っていますが、個社名になってしまうため、開示はしないと思います。今後も契約社数を増やすよりも、品質を高めていくというのがポイントになると思います。

質疑応答:クチコミを閲覧できる株主優待について

司会者:「御社のクチコミを、株主投資の参考にされている投資家も多いと思います。ぜひ、クチコミを参照できる株主優待をお願いします」というご質問です。

これは、「クチコミが3ヶ月間見られる」などのような株主優待ということになるでしょうか? このような意見もあるようですが、いかがでしょうか?

大澤:このように言っていただけるのは、率直に大変うれしいです。ぜひ検討させていただきたいと思います。

1つだけお願いをすると、みなさまもぜひ、クチコミを見るために、クチコミや履歴書を書いていただけるとうれしいです。それがさらに「OpenWork」のユーザー数を増やして、業績向上につながり、みなさまに返ってくるものになると思います。

司会者:自分が今勤めている会社のクチコミを書けば、見ることができるサービスですものね。

大澤:そのとおりです。助けていただけると大変うれしいです。

質疑応答:他社と比較した時の収益性での強みについて

司会者:「営業利益率が30パーセント近くありますが、クチコミの検閲をすべて目視で確認する点で、今後クチコミが増えると、人件費が増えるのではないでしょうか? また、他社と比べて収益性で強みを感じる部分が、もしありましたら教えてください」というご質問です。

大澤:クチコミ数が増えるほど、また、自動的にリスク判断を強める機械学習等を入れて、教師データが増えていくほど、精度は上がっていくため、無駄に増えることはないですが、おっしゃるとおり、人件費は拡大していきます。

ただし、他社と比べて収益性では強みを感じています。他のダイレクトリクルーティングのリーディングカンパニーは、40万人のユーザーを集めるために、年間100億円以上のマス広告費をかけている一方で、当社では、年間80万人の新規ユーザーを集めるために、広告費とクチコミチェックの人件費を合わせて、数億円程度にとどまっています。

このように、2倍の人数を、数十分の1ほどのコストで集められていることは、当社が営業利益率を高められる最大の競争優位性になると思います。今後、人件費は拡大していくと思いますが、一定の収益性の高さは維持できると確信しています。

質疑応答:転職者のプライバシー対策について

司会者:「閉鎖的な考えを持ち、オープンにするのは良くないと考える企業や、『OpenWork』のようなサービスを好ましく思わない企業が、まだ一定数いると考えています。そこで、転職者のプライバシー対策は重要だと考えていますが、いかがでしょうか?」というご質問です。

大澤:本当に少なくなってきましたが、そのような企業もあります。

先日、大きなイベントで登壇した際に、若者を研究している方のお話があり「若手の方は、SNSなどで情報収集して転職するのが当たり前になっている昨今、そのような方を避けていると、企業は採用できなくなります」という話を発表していました。

「そのとおりだな」と思いますし、最近は、このようなことを気にしている人事の方も少なくなってきたと思います。

ただし、転職者のプライバシー対策は、これまでもこれからも、非常に重要だと思います。匿名加工情報について、しっかりと法律に従ってプライバシー保護をするのは、当たり前にやっていくべきことです。

それに加えて、安心してクチコミを書いていただけるように、どのレベルでユーザーのプライバシー対策をしていくかについて考えています。

まずは、感情が先行し過ぎて、法律に触れるようなクチコミを投稿してしまった時に、それを非公開にするということに取り組んでいます。そのようにして、その方が訴えられてしまうなど、法律的に問題があることに関しては、当社でできるだけ事前に検証し、問題にならないようにしています。

これは、現在もかなり厳しく取り組んでいますが、今後もしっかり保証していく必要があると思っており、重要だと考えています。

質疑応答:「評価スコアが高い企業ほど多くのスカウトを送ることが可能」という方針の課題について

司会者:「ダイレクトリクルーティングのご説明で、『評価スコアが高い企業ほど多くのスカウトを送ることが可能』とあるのですが、この方針について何か課題があれば教えてください」というご質問です。

大澤:非常に鋭いご質問ですね。課題は「売上が上がりにくいこと」です。そのことをキャッチしてのご質問だと思います。

採用マーケットは、「OpenWork」上の評価が悪い会社のほうが、多くの人が辞めて、多く採用しなくてはならないため儲かります。したがって、「OpenWork」スコアが低い会社に、より多く使ってもらったほうが、正直なところ「OpenWork」の売上は上がると思います。

ただ、当社は「その戦略は取らない」と決めています。あまり経営環境の良くない会社にユーザーを押し込んできたのが、これまでの日本の人材マーケットだと思います。日本の働きがいが世界で最下位なのは、これが1つの要因になっていると思います。

したがって、売上が上がりにくくはなるものの、「評価スコアの高い企業ほどスカウトを多く打てる」というのは絶対に譲りません。ユーザーが良い会社と出会うための方針として課題はありますが、絶対に変えないと決めています。

ただし、良い会社の定義は人によって違うと思います。「総合スコアはそれほど高くなくても、20代の成長環境はものすごく点数が高い」「スコアは全部低いが、待遇面の満足度だけ非常に点数が高い」など、人によって重要視するポイントが違います。

スコアはまったく高くない会社でも、その会社を良いと感じる価値観を持つ人とマッチングできるように、精度を上げていくことで、より多くの出会いを創出していくことは可能だと思います。

そのように、「総合スコアが高い会社でないと出会えない」という点を変えていくことが、さらなる当社の業績拡大、そして、日本のジョブマーケットで、働きがいを持って働く人を増やしていくことにつながるのではないかと思います。

司会者:経営者ならば、逆に悪い会社に人を集めて、売上を上げようと考えると思います。

大澤:そうですね。商売人だとそうなりますよね。

質疑応答:「OpenWorkリクルーティング」の業界シェアについて

司会者:「『OpenWorkリクルーティング』は、転職業界の中でどれくらいのシェアを獲得していますか? また、今後どれぐらいシェアを伸ばしていけそうでしょうか?」というご質問です。

大澤:現在、シェアは0.5パーセント程度だと思います。キャリア採用の市場が4,000億円程度と言われており、当社の「OpenWorkリクルーティング」の今年の売上高は18億円程度です。したがって、およそ200分の1です。

今後どこまで伸ばせるかについては、例えばダイレクトリクルーティングで「ビズリーチ」が売上高500億円程度です。そうすると、すでに4,000億円市場の8分の1、12.5パーセントを獲得していることになります。

「ビズリーチ」の総登録ユーザー数は現在200万人で、「OpenWork」のユーザー数が600万人弱と3倍あるため、単純計算すると3倍に到達できるのではないかと思われるかもしれませんが、価格や平均単価が違います。

求職者本人の意思によって、いい会社を選んでいくことが、今後の日本では絶対に受け入れられていくと思います。これまでの「とにかく押し込む」とはまったく違う、「いい会社と、いい人材を結びつけていく」という概念のビジネスを続けることで、10パーセントから15パーセント程度のシェアNo.1をとり、日本だけでも数百億円までは伸ばしていけるのではないかと、私自身は思っています。

司会者:ライバルが大変多い業界だと思うのですが、実際、他社からシェアを奪うのは、かなり大変ではないのでしょうか? それとも、「業界自体が大きくなっていて、しばらくは成長している」というニュアンスもあるのでしょうか?

大澤:おっしゃるとおり大変です。やはり最後発であるため、「OpenWorkリクルーティング」を使うメリットが相当大きくないと、このレッドオーシャンの市場で乗り換えるということは起きません。

したがって、当社は初期費用・基本使用料がすべて無料で、採用が成功した時だけ80万円いただきます。これは、他のサービスより安い料金設定としているため、まずは併用していただくケースが多いです。例えば、「他の媒体を使っているが、無料だし当社はスコアも高いからとりあえず『OpenWork』も使ってみよう」と考えて使っていただくケースです。

人事のほうで年間の振り返りをすると、ほとんどのお客さまが「『OpenWork』が一番採用単価が低く、辞める人がほとんどいないか、活躍している」とおっしゃいます。よい採用ができたと実感していただくと「合理的に考えて『OpenWork』で10倍、20倍の採用をしたほうがいいのではないか」という思いになり、徐々にシェアを奪っていくイメージです。

現在、この戦略が成功している状態になります。まずは併用していただき、採用成功を経験していただくことで、少しずつシェアを「OpenWork」に移していただくというのが、シェアを増やしていくプロセスだと考えており、実際に、現在そうなっています。

質疑応答:中期経営計画の公開予定について

司会者:「中期経営計画を出す予定はありますか?」というご質問です。

大澤:ないとも言えないため、「現状では回答しかねる」という回答です。

質疑応答:求職者の評価蓄積サービスについて

司会者:「Web履歴書について質問します。『LinkedIn』は、求職者のクチコミを累積評価し合う仕組みを採っています。『OpenWork』くらいの蓄積データやユーザー数があると、『この求職者はいい人だ』とお互いに評価するような、求職者の評価蓄積サービスがあってもいいのではないかと思います。

ただし、確かアメリカでは実名でもいいようですが、日本では難しいかもしれないと思います。これらについて、何かお考えはありますか?」というご質問です。

大澤:私もそのようなサービスがあっていいと思いますが、この方のおっしゃるとおりで、日本では、まだ受け入れられないのではないかと思います。「LinkedIn」は、「この人はリーダーシップがある」「この人はこのような力がある」といったことが総合評価でき、それを使って企業がスカウトを打てるという仕組みです。

「LinkedIn」も村上臣さんの時代に、日本で展開しようとかなり注力されたと思います。私の感覚では、かなりのハイキャリアか、海外でも通じるようなキャリアを持っている人は日本でも使っていますが、そうでない方は使っていません。

非常に良いサービスなのですが、あまり使われない理由は、自分のキャリアを常にオープンにして、お互い評価し合うという、キャリアに対するオーナーシップを持っている人材が少ないことだと思います。あるいは、他人からの厳しめのフィードバックを受け入れる文化がないため、まだ難しいのではないかと思います。

受け入れられるタイミングが、そのうちに来るだろうと思っているため、「まったくゼロではない」という回答とさせてください。個人的にはこのような仕組みがもっと日本にも広がるといいと思っています。

質疑応答:ダイレクトリクルーティングとエージェント経由の将来展望について

司会者:「今後、ダイレクトリクルーティングとエージェント経由、どちらも伸びていくと思いますが、どちらがよりメインになっていくのでしょうか? お考えを教えてください」と、転職事情全体のことについてのご質問です。

大澤:「もちろんダイレクトリクルーティングです」と言いたいのですが、個人的には、しばらくエージェントのほうが伸びると思います。日本では、転職を1回でもしたことがある人の数が著しく少ないため、転職慣れしていない人が多いわけです。

初めての転職が怖くて、「何から始めたらいいかわからない」「年収の交渉も自分ではできない」という人が非常に多いです。実は、「OpenWork」がエージェントにデータベースを開放している理由はここにあるのですが、日本市場でエージェントが果たす役割は、非常に大きいのではないかと思っています。そのため、しばらくはエージェント経由が広がっていくのではないかと思います。

しかし、10年から15年後に、転職経験者の比率が増えていくと同時に、転職が当たり前になり、自分で完結できるものになっていくと、ダイレクトリクルーティングのようなもの、もしくはダイレクトリクルーティングに代わるような、直接企業とやりとりできるようなもののほうが、増えていくのではないかと思います。

これは、ユーザーの成熟度によって変わっていくため、徐々にダイレクトリクルーティングが増えていくのは、もう少し先の世界になるのではないかと思います。

大澤氏からのご挨拶

司会者:最後に、こちらをご覧の方に一言メッセージをお願いします。

大澤:今まで参加したセミナーの中で、一番多くの質問をいただいたと思います。本当にありがとうございました。

私からのお願いとしては、もし「OpenWork」に興味を持っていただき、応援してもいいという方には、まずぜひ「OpenWork」を使っていただきたいと思います。本当に自信があるサービスであり、「OpenWork」の良さをよりわかっていただけると思います。

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