再びテレビで稼ぐと報じられたソニー

2018年1月21日付け日本経済新聞は、かつてはお荷物であったソニーのテレビ事業が、半導体やゲームなどに続く収益の柱となる可能性があると報じています。

同社はテレビ単独の営業利益を2017年3月期からは開示していませんが、この記事によると、オーディオなどを合わせたホームエンタテイメント&サウンドセグメントの営業利益を、2018年3月期会社予想の760億円から3年後には1,000億円規模にまで伸ばすことを目指しているとのことです。

なお、2018年3月期会社予想において1,000億円台の営業利益の確保が見込まれているのは、全部で8つあるセグメントのうち半導体(1,500億円)、ゲーム(1,800億円)、金融(1,700億円)の3セグメントのみとなっています。

低迷が続く国内テレビ市場

ところで、国内のテレビ市場が最近どのようになっているかをご存じでしょうか。答えを先に申し上げると、あまり好調とは言えません。

電子情報技術産業協会(JEITA)の月次データによると、2017年11月の薄型テレビ出荷台数は前年同期比▲22%減と7月から5カ月連続でマイナス成長が続いています。また、11カ月累計(1月~11月)でも同9%減となっているため、年間でも3年連続でマイナス成長となる可能性が高いと考えられます。

国内のテレビ市場はかつて年間800~1000万台強で推移していたものが、ブラウン管テレビから液晶テレビへの買い替え需要やエコポイント特需などにより2010年には2,520万台まで急拡大しました。しかし、その後は落ち込みが顕著で、ここ数年間は500万台前後で推移しています(下図参照)。

また、業界では2010年頃に買われた製品の買い替え需要がそろそろ活発化してくると期待されていましたが、実際にはまだそうした動きは見られない状況となっています。

国内薄型テレビの出荷台数推移(単位:千台)

出所:電子情報技術産業協会(JEITA)

ソニーのテレビはなぜ復活したのか

このように国内市場が冴えないなかで、なぜソニーはテレビ事業を1,000億円台の利益を見込めるまでに復活させることができたのでしょうか。

同社の場合、テレビ販売の大半が海外市場であるということもありますが、それ以外に、その理由を一言でまとめると「数を追わない」戦略への転換が奏功したということになります。

同社のテレビ事業を見ると、営業利益では2005年3月期から2014年3月期まで10年連続で赤字が続き、この間、2012年3月期には▲1,480億円という巨額な赤字を計上しています。

こうした慢性的な赤字が続く状態から脱するために同社が取り組んだのは、規模を追わなくても採算を確保できる体質への転換(固定費削減)と、ソニーらしさを追求した高採算モデルの積極的な投入でした。

この結果、同社のテレビ販売台数は2011年3月期の2,240万台をピークに毎年減少が続き、2017年3月期には1,210万台まで落ち込んでいますが、営業利益は2015年3月期から黒字に転換し、その後は継続的に黒字を計上するまでに回復しています。

ソニーのテレビ事業の復活は続くのか

では、今後も同社のテレビ事業は回復が継続していくと期待できるのでしょうか。先述した日経の記事によると、ソニーは今後、欧米に続き中南米や中東で高画質の4Kテレビを拡販し、業績の拡大を目指すとされています。

世界のテレビ市場はおよそ2億台程度とされていますので、同社のシェアは約6%ほどと推察されます。このため、シェア拡大の余地は大きいとは考えられますが、一方で闇雲にシェア拡大に走ると、再び以前のような価格競争に陥ることになります。よって、市場自体が伸びている中南米などの新興市場に注力する考えは理に適っていると考えられます。

また、日本を含む先進国市場において、今後拡大が期待される4Kや8Kといったハイエンド市場に注力することも重要なポイントではないかと考えられます。実際、国内市場でも全体的には低迷が続いているものの、4K対応タイプに限れば伸びており、他の先進国市場も同様な傾向にあるためです。

今後の注目点

ソニーは、2018年3月期に20年ぶりに過去最高益を更新する見通しです。とはいえ、株式市場はもはや今期の業績ではなく、最高益更新後のソニーの行方に関心が集まっています。このため、2月2日に発表予定の決算では、テレビ事業を含め、各事業の回復の持続性について精査していきたいところです。

また、今年は2月に平昌冬季五輪、6月にはロシアでサッカーワールドカップが開催されます。こうしたイベントによりテレビ事業の販売に弾みつくのかについても注目していきたいと思います。

LIMO編集部