2.1 他者を「ケア」する職業を選ぶ女性が多いのはなぜなのか
【図表2】で気になるのは、「医療、福祉」で働く女性の割合が22.6%とダントツで高い点にあります。
「医療、福祉」で働く男性の割合は6%であることを考慮すると、この産業で働く女性の割合の高さがより感じられます。
なお「医療、福祉」には医師や看護師、准看護師、介護士などが一般的に含まれます。
これらの職業には医療や介護などの専門的知識・技術も不可欠ですが、他者を「ケア」する役割があり、患者や要介護者の日常生活におけるサポートが求められることも多いです。
そこには女性が家庭の中で担ってきた役割と重なる部分も少なからずあり、長い歴史の中で社会的に女性が求められてきた役割の延長線上にあるものもあります。
他者から性別を理由に特定の職業を促されることは現代社会において基本的にありませんが、職業を考えるにあたって男女の役割を無意識的に感じている人も少なくないとうかがえます。
また、「母性愛」といった言葉があり、お人形の世話を幼い頃にしていた女性が多いように、女性には「他者を世話したい」という母性本能のようなものがあるのかもしれません。
その他にも、「医療、福祉」にはパートタイムで働きやすい、退職しても同様の職種で再就職しやすいといった特徴もあります。
3. まとめにかえて
現代では、特定の職業に就くにあたって性別が決め手になることはほとんどありません。
しかし、男性と女性の産業ごとの就業者の割合を見てみると、男女で大きく異なることが分かります。
また、女性については「医療、福祉」と「卸売業、小売業」の割合が高く、この2つの産業で全体の約4割を占めています。
これらの結果には女性が求める働き方、もしくはそうせざるを得ない働き方や、現代人の無意識下にあるジェンダーロールを感じ取れます。
参考資料
- 厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書 ―令和時代の社会保障と働き方を考える―」
- 総務省統計局「国勢調査2020 ライフステージでみる日本の人口・世帯」
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構「コロナ下の女性への影響と課題について──「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」報告書より」
西田 梨紗