シスメックスとは

健康診断で病院に行くと、必ずと言っていいほど受けるのが血液検査ではないでしょうか。ここで活躍するのがヘマトロジー(血球計数検査)です。そのヘマトロジーにおいて世界No.1の市場シェアを有し、190カ国以上で頑張る日本企業があります。

ご存じない方が多いかもしれませんが、それは臨床検査装置、血液検査試薬、関連サービスなどを提供しているシスメックス(SYSMEX)です。同社の製品は品質が高く、効率が良く、そして小型化し続ける装置が世界中の病院の検査室や研究機関で使われています。

シスメックスの強みはどこにあるのか

血球計数検査などの分野では、検査システムに求められる品質は重要な要件です。その上でフル稼働することが求められます。また、医療現場では混雑を解消すること、手術を円滑に行うこと、判断を的確に適宜行うことなど、あらゆることが求められます。

そうした現場をサポートするのがシスメックスの商品やサービスと言えます。いわば医療現場の縁の下の力持ちという役回りですが、そこにシスメックスの強みを見ることができます。

メイド・イン・ジャパンの安定供給と高品質

同社の機器は日本国内で生産されています。工場では大勢の女性スタッフによって、細かい作業が丁寧に、かつスピーディーに行われています。というのは、細かい作業に関しては、男性より女性のほうが効率が良いという結果もあるようです。

また、地元に根づき、雇用を生むなど地域経済に貢献しつつ、世界に誇る最先端の品質管理および一貫した生産管理を行っています。ちなみに、試薬は国内および世界各地で生産されています。

故障予測に基づいた先を読むサービス体制

病院や検査機関にとって、安定した高い稼働率は非常に重要です。それを可能にしているのが、シスメックスのサービス体制です。同社では各装置を遠隔監視することによって利用回数を把握し、蓄積したデータをもとに故障を予測、消耗品の交換などをタイミング良く行っています。

また、不具合が生じた場合は、ウェブカメラが設置されているので、エンジニアが電話でサポートしたり、必要に応じて現地に駆けつけることもできます。同社ではエンジニアや営業の状況を把握しているので、最適なリソースで対応することが可能です。

国内のサービスやメンテナンスのシステムは24時間365日稼働の完成形です。海外でも、同じようなネットワークサービスを順次拡充していくことになるのでしょう。

このように、品質が良く、高稼働を可能にし、サービスとメンテナンスも徹底しているからこそ、医療・検査機関といった顧客に信頼されていると見ることができます。

シスメックスの競合状況は

シスメックスの競合相手は主に海外メーカーです。ただ、この分野に特化して、機器・試薬・システムを全て自社で保有し、総合的に供給しているのはシスメックスのみです。ここに同社の競争優位性があります。

ちなみに、各領域の競合企業は次の通りです。ヘマトロジー分野では、首位がシスメックス、第2位は米国のダナハー。血液凝固検査分野では、首位はシスメックスとドイツのシーメンスチームで、第2位はスペインのIL。尿検査分野(尿沈渣)では、首位がシスメックス、第2位が米国のダナハーとなっています。

研究開発と次世代への成長戦略

ここまで見てきたように、同社の既存事業は、これからも世界中で医療の普及や発達と共に成長し続けるでしょう。しかし、シスメックを評価すべき点は次世代の医療に向けて常に積極的に投資し、研究する姿勢にもあります。そこで注目されるのが個別医療です。以下、2つの例を見てみましょう。

リキッドバイオプシーとは何か

将来は、個人ごとの特性に合った医療方法や薬を提供することが理想とされていますが、そのためには「リキッドバイオプシー」という技術が有効になります。これは、血液や体液から疾患の検査を行うことを言います。

リキッドバイオプシーには、今までのバイオプシー(生検)と比べ身体への負担が少なくすむというメリットがあります。実際、患部組織を直接採取して分析するのは大変です。リキッドバイオプシーはそうした難点へのソリューションとも言えます。

一例として、血中循環がん細胞(CTC)を検出するシステムの開発があります。血液10mlの中に数個から数十個存在するCTCを見つけて、測定・検出していくのです。

ゲノム医療への取り組みとは

日本には先駆け審査指定制度というものがあります。これは、世界に先駆けて最先端の医療を日本で早期に実用化すべく、各種の支援を行おうという試みです。

厚生労働省のウェブサイトには、「患者に世界で最先端の治療薬を最も早く提供することを目指し、一定の要件を満たす画期的な新薬等について、開発の比較的早期の段階から先駆け審査指定制度の対象品目に指定し、薬事承認に係る相談・審査における優先的な取扱いの対象とするとともに、承認審査のスケジュールに沿って申請者における製造体制の整備や承認後円滑に医療現場に提供するための対応が十分になされることで、更なる迅速な実用化を図るもの」と記載されています。

ちなみに、シスメックスの「がん関連遺伝子パネル検査システム」は、「体外診断用医薬品の先駆け審査指定制度」の対象品目に選ばれています。これは、がん患者の腫瘍組織を遺伝子パネル、DNAシーケンサー、解析用プログラムなどを通じて調べ、専門家にレポートとして提供し、それをもとに医師などが個人に合った最適な治療をするための補助とするものです。

シスメックスが中期経営課題として目指す姿に、「個別化医療に貢献する先進的なグローバルプレイヤー」とありますが、インターネットが私たちの生活を激変させたように、個別医療も医療の形を変える可能性があると言えるでしょう。そして、そうした未来の姿は医療費の抑制にもつながります。

まとめ

このように、縁の下の力持ちとして私たちの生活に欠かせない存在となっているシスメックス。同社はメイド・イン・ジャパンを貫き、日本の徹底的な品質管理やサービスを世界で提供し、医療の普及や発展に貢献する、まさに世界に誇れる日本の企業と言えます。

今後もこうした技術やノウハウを背景に、世界で頑張っている日本企業を紹介していきたいと思います。

LIMO編集部