2017年は日本株のみならずグローバル株式の値動きも堅調で、投資家の方にとって満足の年だったのではないでしょうか。一方、2018年にじっくり、しっかりと資産運用を始めようとは思いつつも、数ある投資信託の中から納得できる投信を選ぶのは難しいと感じる場合も多いと思います。

今回は2018年の資産運用を充実したものにするため、主な運用会社の担当者に、自社でおすすめの投資信託、そして他社の投信だけれども気になっている商品について聞いてみました。2018年に資産形成をする際に気を付けておきたいポイントについてもあわせてご覧ください。

運用会社おすすめの自社投資信託まとめ

三菱UFJ国際投信 山口裕士氏

  • eMAXIS 最適化バランス
  • eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
  • トレンド・アロケーション・オープン
  • ワールド・ビューティー・オープン(為替ヘッジあり)
  • グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(愛称:健次)

日興アセットマネジメント 今福啓之氏

  • グローバル・ロボティクス株式ファンド

アセットマネジメントOne 花村泰廣氏

  • 投資のソムリエ
  • リスク抑制型世界8資産バランスファンド(愛称:しあわせの一歩)
  • AI(人工知能)活用型世界株ファンド(愛称:ディープAI)

スパークス・アセット・マネジメント 望月康平氏

  • スパークス・M&S・ジャパン・ファンド(愛称:華咲く中小型)
  • スパークス・少数精鋭・日本株ファンド
  • スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)
  • スパークス・新・国際優良アジア株ファンド(愛称:アジア厳選投資)

大和住銀投信投資顧問 栢光昭氏

  • 世界インパクト投資ファンド(愛称:Better World)
  • 日本成長テーマフォーカス(愛称:グランシェフ)

長期投資をより手ごたえのあるものにするために

長期投資とはいうけれど、どのような運用をしていけばよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。三菱UFJ国際投信の山口裕士氏は、長期投資に取り組むにあたって2つのアプローチをあげています。それは、資産形成の第一歩としてパスポート的な位置づけのバランス型ファンド、そして高いリターンを目指すための株式ファンドです。

バランス型ファンドの特徴としては、1本のファンドで世界各国の幅広い資産へ分散投資を行える点があげられます。これによって、リスクの低減と安定的な資産形成を目指すことができるようになります。資産形成を始めてみると、面倒なのが個別資産の選択や資産構成の見直し作業ですが、バランス型ファンドであればこうした作業を運用者が行うために初心者でも戸惑うことがありません。

資産形成の第一歩をサポートする投資信託として山口氏がピックアップした自社投信は「eMAXIS 最適化バランス」、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」、そして「トレンド・アロケーション・オープン」の3ファンドです。

「eMAXIS 最適化バランス」は、ファンド選びをサポートするロボアド(ロボットアドバイザー)機能と投信購入後のアフターフォローを備えています。

「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、機動的に信託報酬を引き下げることによって「業界最低水準」の信託報酬を目指すことを宣言しているインデックスファンドのシリーズ。純資産総額が500億円以上になると、段階的に信託報酬を引き下げる受益者還元型信託報酬という仕組みが組み込まれているので、購入者にはうれしい建付けといえます。

「トレンド・アロケーション・オープン」は負けにくい投資を目指したファンドです。同ファンドは相場が大きく動いても、一定のラインを超えて下落しないように投資する資産を調整する「自動ブレーキ」機能があります。これは過去1年の高値からの下落率が15%以内に収まることを目指すもので、資産を減らしたくないという投資家にはうれしい機能ではないでしょうか。

また、高いリターンを目指すためのファンドとして山口氏がピックアップした自社投信は「ワールド・ビューティー・オープン(為替ヘッジあり)」と「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(愛称:健次)」の2ファンド。いずれも「美」や「ヘルスケア」という切り口の投資で、長期的で成長する産業に注目し、恩恵を受ける企業などに投資をするというものです。

社会課題を解決する企業に集中投資

株式投資の醍醐味といえば、成長する産業の中でコアの銘柄に集中投資をすることではないでしょうか。その点、人手不足の解決策としての「自動化」は、日本のみならず世界にも共通するソリューションです。

日興アセットマネジメントの今福啓之氏がピックアップした自社投信は「グローバル・ロボティクス株式ファンド」。日本企業の割合は30%程度で、自動化という切り口で関連する技術やサービスを提供する世界の株式に投資をしています。銘柄数は50程度にまで絞り込んでいます。

自動化というテーマの注目度のみならず、パフォーマンスもよかったことから投資家の同ファンドに対する期待度は高く、為替ヘッジなし・ありのそれぞれ「1年決算型」、「年2回決算型」の4つのコースを合計すると純資産が約9,000億円にまで成長しています。

このように巨額の純資産となった同ファンドは、世界株式運用のベンチマークとしてよく使われるMSCIワールドを大きく上回るパフォーマンスを上げているため投資家も満足していることでしょう。最近は信託報酬値下げ競争が激しいインデックスファンドに注目が集まることが多いですが、これはアクティブファンドのよさが出た投信といえるでしょう。

負けにくい運用はみんなが求める運用

誰しも高いリターンを手にしたい!とは思いながらも、資産が減るのは避けたいもの。そして、昨今のAI(人工知能)ブームもあり、機械に運用を任せてみたらどうなるのかと興味のある方も多いはず。

アセットマネジメントOneの花村泰廣氏がピックアップしたのは「投資のソムリエ」、「リスク抑制型世界8資産バランスファンド(愛称:しあわせの一歩)」、「AI(人工知能)活用型世界株ファンド(愛称:ディープAI)」の3本です。

まず、負けにくい運用を目指す投資家に同社が提供しているのが「投資のソムリエ」と「リスク抑制型世界8資産バランスファンド(愛称:しあわせの一歩)」。いずれのファンドもクオンツ運用がなされています。

「投資のソムリエ」は国内外の株式、債券、REITなどの8資産に投資をするバランス型ファンドで、基準価額の変動を年率4%に抑える運用をしています。

また、「リスク抑制型世界8資産バランスファンド(愛称:しあわせの一歩)」も「投資のソムリエ」と同様の戦略で運用し、基準価額の変動を年率2%に抑えることを目指しています。インフレ率を上回る運用をしたいが、大きく損はしたくないという投資家が検討してみる価値のあるファンドです。

「AI(人工知能)活用型世界株ファンド(愛称:ディープAI)」は、世界株の銘柄選択にディープラーニング(深層学習)を活用した本邦初のファンドです。人間の分析には限界がありますが、AIが”漏れ”をカバーしてくれます。

ウォーレン・バフェットの投資スタイルに学び、投資に活かす

株式投資において超過収益を手にするために必要なこと。それは他の投資家が気づいていない価値を見出し、その価値よりも安い価格で投資をし、みんなが気づくまでじっと待つという姿勢です。

スパークス・アセット・マネジメントの望月康平氏は次のようにコメントしています。

「2016年以降、銘柄間のリターン格差が拡大傾向にあります。特定の業種・テーマに関連した銘柄が相場を牽引した一方で、割安銘柄の投資機会がより増していると考えています」

その中で望月氏がピックアップした自社投信が「スパークス・M&S・ジャパン・ファンド(愛称:華咲く中小型)」と「スパークス・少数精鋭・日本株ファンド」の2ファンドです。

「現在のような株式相場の二極化局面では、上記ファンドが主に投資対象とする、再評価余地の高い銘柄への投資が有効」と望月氏はいいます。

また、スパークスの運用に、世界的な投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ社の投資スタイルを見出す方も多いのではないでしょうか。

皆さんご存じのようにバークシャーは長期で安定したROEを重視していますが、そのアプローチに準じたファンドが「スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」と「スパークス・新・国際優良アジア株ファンド(愛称:アジア厳選投資)」です。望月氏はこの2ファンドもピックアップしています。

投資が難しい資産にアクセスできるのが投資信託の醍醐味

投資信託を購入するメリットは何かというと、プロが運用してくれるので銘柄選択や資産配分などを考えずに済むので楽だというのがよく聞く理由です。一方でもう一つ大きなメリットがあります。それは投資信託であれば、投資資金が限られた個人投資家がなかなかアクセスできない資産に投資ができるということです。

大和住銀投信投資顧問の栢光昭氏がまずピックアップしたのが、「世界インパクト投資ファンド(愛称:Better World)」です。

「このファンドは投信でないと購入できない銘柄が含まれた投信」と栢氏はいいます。ここには先進国の株式に加え、新興国の銘柄も組み入れられています。

栢氏がピックアップしたもう一つの自社投信が「日本成長テーマフォーカス(愛称:グランシェフ)」。ファンドマネージャーの銘柄選定の考え方やスキルをAIに覚えさせることで、人間では十分にカバーしきれない銘柄もリストアップし、最後は人間が判断してポートフォリオに組み込むというプロセスです。いわば、「人間×機械」を実現したファンドといえます。

実名では言えないけれど…私、他社ファンドで気になるものがあります

自社の商品に自信は持っているものの、他社にも「買ってみたい」「そのコンセプトは共感が持てる」という商品があるものです。今回は匿名を条件にヒアリングをした結果をまとめ、以下に”業界関係者が気になる投資信託”を紹介します。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド・シリーズ-野村アセットマネジメント

「まずはパフォーマンスがよい。海外でも高い評価を受けている」

東京海上・円資産バランスファンド・シリーズ(愛称:円奏会)-東京海上アセットマネジメント

「為替リスクをとらさず、そのリスクを避けたい投資家にとっては王道の商品」

大和住銀日本小型株ファンド-大和住銀投信投資顧問

「銘柄選定に強いこだわりを感じる」
「ポートフォリオの構築や運用には競合ファンドながら敬服」

ひふみプラス-レオス・キャピタルワークス

「外国株式を組み入れられるように対応し、純資産額の急増に対応している」

新成長株ファンド(愛称:グローイング・カバーズ)-明治安田アセットマネジメント

「商品性を含めた総合力が魅力」
「成長株式の運用において、高い実績と今後のポテンシャルがあるファンドだと思う」

フィデリティ・アジア株・ファンド-フィデリティ投信

「長期で高い運用実績のある同ファンドには運用水準の高さを感じる」

SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド(愛称:あんしんスイッチ)-アムンディ・アセットマネジメント

「過去のデリバティブ付き元本確保型単位型投信でもそうだったが、こうした商品が日本の投信ユーザーの裾野拡大に貢献するのかどうかを興味深く見ているという意味で注目投信としてリストアップ」

資産形成初心者必見! 2018年にここは気を付けておきたいポイント

資産運用に「絶対」はありませんが、自分なりの資産形成に取り組む心構えや、資本市場に対峙するための哲学やスタンスを確立しておくことは重要ではないでしょうか。

まずは、その姿勢を分かりやすくコメントしてくれたのがアセットマネジメントOneの花村氏。

「“長期・分散・積立”が資産形成の王道」

なかなか難しいかもしれませんが、「何年後にどのくらいの金融資産が必要かを明確にしたうえで、毎月積立できる金額を決めるのが重要」と花村氏はいいます。

この記事を読んだのをきっかけに、一度じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。

とはいえ、株式市場は毎日上下を繰り返し、株価が大きく下がるとがっかりして株価すら見なくなった、という方もいるのではないでしょうか。スパークスの望月氏はそうならないための心構えを面白いキーワードで整理してくれました。

「キーワードは“あおいくま(青い熊)”です。焦らない、怒らない、威張らない、腐らない、負けない、の頭文字をまとめたものです」

「資産形成は長期の時間軸で資金の性格や目的に合った商品を選定することが重要です。運用商品について十分に理解し、自分の投資に納得できることが大切でしょう。また、自分に自信を持つことは重要ですが、自信過剰は投資において致命傷を負うリスクにつながるので禁物です。さらに、マーケットは常に想定外のことが起こります。そうした中でも諦めずに資産形成に向かい続けることが肝要だと思います。最後に、損をしない、つまり負けないことを意識したいものです」(望月氏)

最近は、これから資産形成を始めようとしている方に向けた分かりやすいサービスも数多く登場しています。とはいえ、そうしたサービスを享受する際に発生している手数料についても十分認識すべきだという専門家もいます。

特に昨今はインデックスファンドの信託報酬水準に関する競争が注目を集めがちですが、日興アセットの今福氏は「コストよりもリターンが先」と強調します。

インデックス投資は投資家にとってシンプルで素晴らしい選択肢であるとしながらも、インデックスを大きく上回るリターンを享受できる「お得な」運用を享受するためには「リターンの観点」からの投信選びが必要といいます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。2018年の相場は相変わらず読みにくいものの、今回プロが選んだ投信の中にご自身の運用スタンスや目標を実現するために参考になるものがあれば嬉しく思います。

各プロも強調していましたが、資産形成は長期でじっくり取り組むものです。”人生100年”といわれる時代になりつつある中で、焦らずに取り組む姿勢も投資家に必要のようです。本稿がご自身の資産形成をあらためて考えてみるきっかけとなれば幸いです。

LIMO編集部