日本経済はバブル後最高の年になる

融け始めているデフレマインド

景気回復が実感できない人も多いなか、久留米大学商学部の塚崎公義教授は、今年の日本経済に大変楽観的です。

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あけましておめでとうございます。この挨拶は、暗い年でも明るい年でも交わされますが、今年は特に「日本経済が明るい年を迎えた」ことを祝いながら書きました。今年がバブル後最高の年になると思っているからです。

景気は自分では方向を変えない

経済学の教科書には景気循環という言葉が載っていて、在庫循環や設備投資循環などが説明されていますが、そうした循環は、昨今の経済では実際には見かけません。

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経済がサービス化する以前は製造業のウエイトが大きかったですし、在庫管理技術も未発達だったので、在庫循環はあったのでしょうが、今は事情が異なります。

かつては「設備投資が一度盛り上がると、10年後に一斉に更新投資が盛り上がる」というようなこともあったのでしょうが、今ではコンピューターのように更新投資のサイクルが短いものも多いので、そうしたことは起きにくいのです。

景気が回復すると、物が売れるので企業が生産を増やし、そのために労働者を雇います。すると給料を受け取った「元失業者」が消費をするので、物がいっそう良く売れるようになるのです。企業は増産のために新しい工場を建てるので、設備機械が売れます。設備投資資金は銀行が喜んで貸すでしょう。景気回復時は借り手企業が黒字ですから。

景気が自分では方向を変えないとすると、景気の方向を変える力が働くか否かが焦点となります。

景気を腰折れさせる要因は見当たらず

政府日銀が景気を腰折れさせるとは思われません。消費税増税は来年の話ですし、日銀も緩和姿勢を維持するでしょう。

海外の景気後退で日本の輸出が減少する可能性も小さそうです。欧米経済の専門家は総じて楽観的ですし、そもそも中央銀行が緩和を修正しつつあるほどですから、心配は無用でしょう。中国についてはリスクを指摘する向きもありますが、万が一の場合には政府が強権発動で景気の底割れは防ぐでしょう。

そもそも、米国の景気に比べて中国の景気の重要性は高くありません。第一に、日本の対中輸出には、中国が米国に輸出する製品に組み込まれる心臓部の部品が大量に含まれているので、米国の対中輸入が落ち込まない限り、その部分は大丈夫です。

それから、米国の景気が後退すると金融緩和でドルの金利が下がり、ドル安円高になり、日本の対世界輸出が打撃を受けますが、中国が金融緩和をしてもそうした影響は受けませんから。

国内でバブルの崩壊があれば景気は後退しかねませんが、景気を腰折れさせるような大規模なバブル崩壊は見込まれません。局所的なバブルの懸念はあっても、崩壊した場合の影響は限定的でしょう。

デフレマインドが融け始めていることに要注目

バブル崩壊後の長期不振によって、人々にはデフレマインドが深く染みつきました。

「景気は回復しているが、どうせ遠からず腰折れするだろうから、設備投資はやめておこう」「円安だが、どうせ遠からず円高になるだろうから、輸出増強のための生産ライン組み替えはやめておこう」「企業収益は好調だが、どうせ遠からず不況による収益悪化に見舞われるだろうから、日本株は買わずにおこう」といったマインドです。

最近、こうしたマインドが少しずつ融け始めているようです。企業は「景気回復で労働力不足はしばらく続きそうだから、省力化投資を検討しよう」「欧米が金融政策を転換したことで、ドル高円安は続きそうだから、輸出用に生産ラインを組み替えよう」「日本企業の収益はしばらく好調だろうから、日本株を買おう」という動きが見られるのです。

「景気は気から」ですから、こうした変化は重要です。もしかすると景気が一気に拡大するかもしれません。そうなれば、労働力不足による賃上げや値上げが加速して、日銀の目指すインフレ率2%が視野に入ってくるかもしれません。そのあたりは次回。

個人消費だけは、伸び悩んでいます。個人所得は、一人当たりは増えていませんが、労働者数が増えているので、マクロ的には増えています。それにもかかわらず消費が伸びないのは、「少子高齢化で年金が受け取れない」という懸念からかもしれません。

そうだとすると、氷が融けるのは大変かもしれませんが、労働力不足が続けば正社員の給料も増え始めると期待されますから、個人消費が増えるのも時間の問題だ、と期待しておきましょう。

今年は日本経済の黄金時代の幕開けかも

バブル崩壊後、日本経済を悩ませてきた多くの問題が解決に向かっています。失業は既に解決済みです。非正規労働者の時給アップでワーキングプアの生活がマトモになり、労働力不足でブラック企業の存続が難しくなりつつあります。

労働力不足は省力化投資を促し、日本経済の生産性を劇的に上げるでしょう。これまで企業は安価な労働力が容易に得られたために省力化投資に不熱心でしたから、日本経済には少額の投資で生産性が上げられる余地が大きいのです。

そう考えると、今年はバブル後最高の年になりそうです。もしかすると、今年が日本経済の黄金時代の幕開けになるかもしれません。大いに期待しましょう。拙稿『少子高齢化による労働力不足で日本経済は黄金時代へ』も併せてご覧いただければ幸いです。

本稿は以上ですが、景気の見方などについての基本的な事項は拙著『一番わかりやすい日本経済入門』をご参照ください。

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久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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