父さんが赤字である一方で、母さんが金持ちでなかったら、父さんは家庭外から借金をしなくてはいけません。そうなると、いつ厳しい取り立てがくるかわかりません。母さんから借金をしていれば、夫婦喧嘩くらいは起きるでしょうが、厳しい取り立てに遭う可能性は小さいでしょう。

それと同様に、実は民間が金持ちだということは政府にとって極めて大きな安心材料なのです。

海外の投資家にとっては、日本国債はリスク資産です。日本政府が破産するリスク等々に加え、為替リスクがあるからです。彼らにとっては、円建ての日本国債を持っていると、円安になった時に損をする可能性があるのです。一方で、日本人の投資家にとっては、日本国債はリスクの小さな資産です。したがって、民間の投資家は日本国債を喜んで買うのです。

遠い将来のことはともかく、日本政府が近日中に破産する可能性はほとんどゼロでしょうから、当分の間日本政府に金を貸しておくことはリスクではないでしょう。一方で、余った金を海外に貸すためには円を外貨に替えなければならないため、為替リスクを負うのです。「それなら、日本政府に貸そう」と国内投資家が考えるので、日本政府は資金繰りに困らないのです。

今ひとつ、日本国が赤字だと、日本政府は海外から外貨で借金をしなくてはなりません。そうなると、借金を返すのが大変です。

最初の返済は楽かも知れませんが、最初の返済のためにドルを買うと、ドルが値上がりします。すると、2度目の返済は最初の返済より辛くなります。返済が進むたびにドルが高くなり返済が厳しくなって行くのです。これは辛いです。国内の借金であれば、最後まで一定額の円を返済していけば良いのですから、苦労が全く違うのです。

本稿は以上ですが、財政収支や国際収支などについての基本的な事項は拙著『一番わかりやすい日本経済入門』をご参照ください。なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>

塚崎 公義