2. 10月から年金の手取り額が変わる人とは?
10月から国民年金、厚生年金の手取り額が変わるとはどのようなことなのでしょうか。
2.1 年金の手取り額とは?
年金の手取り額とはいくらなのでしょうか。年金は決定した年金受給額を受け取るのではなく、納めなければならない税金や保険料を天引きしたあとの金額を受け取ります。
これは会社員の月々の給与から先に保険料や税金が引かれているのと同じです。
納める必要のある税や保険料が先に差し引かれているので、のちに個人で金融機関等に納めに行くなど納税の手続きをしなくともよくなります。
また税・保険料を徴収する市区町村側としても、高齢者の納税にかかるさまざまな手続きを減らすことができます。これを特別徴収といいます。
年金から特別徴収されるものとは、おもに以下の4つです。
- 個人住民税
- 所得税および復興特別所得税
- 介護保険料
- 健康保険料(国民健康保険や後期高齢者医療制度)
2.2 10月の手取り額が変わるのはなぜか?
10月から年金手取り額が変わる可能性があるのは、天引きされる金額が変わる可能性があるためです。
年金から特別徴収される介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税の各種保険料(税)の金額は、市区町村が決定しています。
自治体によって違いがありますが、上記の天引きされる項目のうち住民税や介護保険、健康保険などについては、10月に本決定されるケースがよくあります。
後期高齢者医療の保険料の場合、保険料が決定し通知書が送られるのが7月という自治体が多いです。
年度が替わった4月・6月・8月の年金支給月は、7月の決定を反映した特別徴収額が決まっていないため、仮に前年の2月と同額を天引きしています。
7月に決定した特別徴収額が年金の手取りに反映されるのは、8月・9月分の年金が支給される10月のタイミングからとなります。
東京都の例ですが、後期高齢者医療保険料は所得によって徴収額が変わります。
もし前年の所得が一時的にあがった場合、4月・6月・8月に天引きした金額では大きく不足します。このため、残りの10月・12月・2月で天引きする金額がかなり多くなってしまうケースもあるのです。
高齢者でも保有する不動産を売却した、株の売買で多額の利益を得たなど、一時的に所得が増える場合も想定できます。
1月から12月の1年間の所得に対して、所得税や住民税、その他の保険料が決定されていきますので、タイムラグがあって特別徴収額に反映していくことになります。
一方では所得が減って天引き額が減り、手取り額が増えるということもあります。実際の特別徴収額については税金や保険料などの決定通知書で確認することができます。
3. 年金受給額の仕組みを知ろう
厚生年金や国民年金の受給は額面通りに受け取れるのではなく、受給額から天引きされるものを差し引いた金額を受け取ります。
年金受給額の改定時期は年度の初めですが、天引き対象となっている保険料などの金額決定時期が年度初めからずれてしまうため、どうしても年度の途中で天引き後の手取り額が変わってしまうことになります。
年金受給の額の決定と反映時期や、天引きされる項目の金額決定の時期が異なることなど年金受給に関するしくみを知っておくと、年度の途中で振込額が変わっても、慌てることはないだろうと思います。
また年金の受け取り額が多少減額する場合にも、安心して生活が送れるように自分で老後資金をつくっておくことも大切です。
現役のときにはまだ先のことに興味が持てないかもしれませんが、だれもが老後を迎えることになります。そのときになって急に慌てないように、資金面でも準備しておくようにしましょう。
参考資料
- 厚生労働省 「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収するのはどうしてですか。」
- 東京いきいきネット 東京都後期高齢者医療広域連合「保険料の決め方・賦課」
高橋 禎美