2023年8月14日にイベントス社のYouTubeチャンネル「投資WEB」にてライブ配信された、株式会社ツナググループ・ホールディングス2023年9月期第3四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ツナググループ・ホールディングス 代表取締役社長 米田光宏 氏
2023年9月期第3四半期決算説明
司会者:みなさま、こんばんは。本日は、投資WEBのセミナーにご参加いただき誠にありがとうございます。
今回は、本日、好決算を発表されたばかりの株式会社ツナググループ・ホールディングスにご講演いただきます。第1部では、米田社長から今回の決算とツナググループ・ホールディングスという企業についてご紹介していただきます。第2部では決算について詳しくお伝えいただき、その後、質疑応答の時間を取ります。
それでは、ご紹介します。株式会社ツナググループ・ホールディングス代表取締役社長の米田光宏さまです。米田社長、どうぞよろしくお願いします。
米田光宏氏(以下、米田):よろしくお願いします。
第3四半期業績 ハイライト
司会者:本日発表された決算は、投資家から見るとかなり強い内容だったと思いますが、米田社長から見てどのような感想をお持ちでしょうか?
米田:後ほど詳しくお伝えしますが、本日発表した決算は、コロナ禍の中でしっかりと準備してきたことが、第2四半期に続いて、第3四半期も数字として結実したものだと考えています。
収益構造 四半期推移
司会者:第3四半期の強い決算の背景についておうかがいできますか?
米田:コロナ禍の中、我々は収益構造を思い切って変えなくてはいけないと考えました。その中で、非常に筋肉質な収益構造が実現できていると思います。固定費だけではなく、限界利益率も改善し、今回の決算につながったと考えています。
連結売上高 四半期推移
米田:ご承知のとおり、今、空前の人手不足です。特に観光業や飲食業で非常に人手が不足しており、今までのお客さまを中心に採用支援へのご要望にしっかりとお応えしたことが継続した売上の高成長につながったと考えています。
司会者:どのように筋肉質にしてきたかという点については、ぜひみなさまからご質問をいただき、第2部でも詳しくうかがいたいと思います。
スタッフィング事業 株式会社LeafNxT四半期業績推移
司会者:人手不足についてお話がありましたが、派遣事業のLeafNxTの売上伸長が寄与しているとのことです。そちらについても詳しくおうかがいできますか?
米田:我々は創業以来、サービス業を中心に採用を支援してきました。コロナ禍の2年間で、我々のお客さまも営業が厳しくなったり、そもそもお店を開くことができなくなることもありました。そんな時にこれまでのお客さまだけではなく、コロナ禍でも忙しく、人手を必要とする業界の企業に対して我々のサービスを提供し始めました。
その多くが物流業・倉庫業と言われる業界です。コロナ禍の巣ごもりによりEC需要が高まり、物流量が圧倒的に増えました。そこで、「ドライバーや倉庫のピッキングスタッフはどうする?」との声が上がり、我々のサービスをご提供できるのではないかと考えたのです。
「人を直接派遣してほしい」というまさに悲鳴のような声をいただき、2022年3月1日に日総工産株式会社とともに、合弁会社として物流業や倉庫業のみなさまを中心としたロジスティクスのところに人を派遣する事業を始めました。
その事業開始からおおよそ1年が経ち、四半期収益化が実現し、あわせて売上も対前年成長で191.2パーセントとなりました。今も続く物流の人手不足という中で、直接人を派遣するビジネスが一定の手応えをもって数字として表れてきたと考えています。
司会者:そのような中でかなり強い数字を出せているとのことですが、その成長力は今後も変わらないと考えてよいのでしょうか?
米田:物流業においては、2024年問題があります。ドライバーの残業時間について、2024年に規制が強化されるというものです。その結果、ドライバーが約17万人少なくなると言われています。コロナ禍から物流量の増加が続き、物流における人材確保ニーズは今後も続くだろうと考えています。
もう1点は、もともとのお客さまであるサービス業のみなさまからの採用ニーズが、インバウンド需要の中で急速に復活しています。
例えば、2019年は訪日の観光客が3,200万人に届いていたのが、2020年のコロナ禍は19万人まで落ちました。しかし、2023年は1,200万人から1,300万人は間違いなく、2,000万人に届くのではという中で、観光業や飲食業など当社のもともとのお客さまからのご相談が復活してきています。
ですので、今までのお客さまと新たに開拓したインダストリーの2つが掛け合わさったところが、我々の中長期戦略のもとになるこれからの人手不足に相乗的にかかわっていると思います。ここに我々のサービスやソリューションをお届けすることで、我々も成長していきたいと考えています。
会社概要
司会者:ツナググループ・ホールディングスがどのような会社なのかをご存じない方がいらっしゃるかもしれません。ビジネスの内容や業績、成長性について、御社がどのような企業なのかを社長からお話しいただきます。
米田:お話しいただいたとおり、おそらくほとんどの投資家のみなさまは我々の社名をご存じないかと思います。
我々は毎年、新卒採用を行っており、私は必ず「就活前に当社のことをご存じでしたか?」と聞きますが、100パーセントの確率で我々の社名を知らなかったと返ってきます。そのため、今日は少しお時間をいただき、当社についてお伝えできればと考えています。
設立は2007年で、それまで私はリクルートという会社で、営業からスタートして商品企画や事業企画を担当していました。
リクルートは今も昔も求人広告業界ではナンバーワンです。ところが、2007年に有効求人倍率が1倍を超えると、そのナンバーワン企業でさえ、1つの会社でお客さまの採用をすべて解決することは難しくなります。
有効求人倍率が1倍を超えると、飲食業の職種別有効求人倍率はおおよそ1.4倍になり、1人の求職者を1.4店舗で奪い合う状態になります。
例えば、八王子の駅前にあるチェーン店で「昼間のランチの時間だけ人が足りない」という要望があった場合に、ナンバーワンのプロダクトを扱って持っていた当時の私でも、採用を支援しきることが難しい状況でした。そのエリアではリクルートで取り扱っていない、折り込みチラシのほうが応募が来ることもあります。
また、例えば、花火大会がある日はコンビニエンスストアのお客さまが増えるため、直接雇用ではなく、その日だけ派遣スタッフで対応するという方法もあります。その時だけ人がほしいという場合に求人広告で採用してしまうと、その後の固定費を圧迫することになりうるため、採用ではなく、派遣のご提案をした方が良い場合もあるのです。
「このような場合は派遣のほうがよいのでは」「このような場合は折り込みチラシのほうがよい」「このような場合は求人広告を使って、しっかりとした人を採用しましょう」など、プロダクトを提供するのではなくお客さまの側でコンサルティングし、ソリューションを提供したいと思いました。
2007年当時の人手不足だった時代に、そのようなビジネスモデルで起業したのが、ツナググループ・ホールディングスです。
売上高推移
米田:その結果、ご要望が非常に多く、マクロ環境的にも人手不足の中でお声をかけていただくことがよくあり、CAGRでプラス32パーセントの成長率を達成しました。
ご支援実績
米田:求人の最適ポートフォリオを必要とされるお客さまは大企業が多いです。チェーン展開している企業、エッセンシャルワーカーと呼ばれる方々、日本全国で人を募集している企業を中心に、現在約300社、10万事業所を超える採用の支援を一手に引き受けています。
スライドに記載の企業のお客さまに、年間240万人の求職者の方をお届けするビジネスとなっています。
株価推移
米田:株価の推移です。2017年に上場し、コロナ禍の中、業績悪化とともに株価も低迷しましたが、昨期より業績回復とともに株価が上昇中です。
「人手不足」は更に進み、日本の大きな社会課題に
米田:これからどのような事業環境になっていくのかというお話です。先ほど株価の推移を示しましたが、我々は業績成長とともに株価がそのままついてくるという特徴のある企業です。そのため、今後の人手不足をどのように見立てるのかは大きなポイントだと考えています。
パーソル総合研究所のシンクタンクが発表している数字では、2030年にはおおよそ644万人の労働需給GAPが発生します。「644万人は非常に大きな数字ですが、本当ですか?」というお声を聞くことも多いです。
例えば、多くの方が定年を迎えるのが65歳かと思います。2030年に65歳になる方は1965年生まれで、この年の年間出生人口は、約180万人です。
逆に、社会人になるのが22歳として、2030年に社会人になる方は2008年に出生となりますが、2008年の出生人口は約100万人です。
つまり、2030年には約180万人の方が65歳になり、22歳になる人は約100万人です。この差80万人のうち、働いている方がその半分としても40万人です。これだけの労働者数が2030年1年で減るということです。それが積み重なっていくと、今と比べて約644万人の人手不足になっていくことになります。これをなんとか担保しなければなりません。
例えば、スライドの表中にある「労働生産性の向上」では、AIやロボットなどを活用し、644万人のパイを減らすこともソリューションの1つとしてありますが、それだけではなかなか足りません。
追加就労希望者と呼ばれるような、「本当はもっと働きたいが、130万円の壁があるから働けない」という方に、いかに働いていただくかもソリューションの1つであり、非労働力人口の労働化になります。
実は、1980年代後半から1993年に至っては、アルバイトで働く人の平均月間労働時間は100時間ありました。それが直近では70時間強となっています。つまり、働いていない方、働いていない時間が非常に多いのです。
この非労働力人口をいかに労働力化していくかを考えていくことが必要です。さらにそれだけでは足りないため、外国人にいかに活躍していただくかも考えていく必要があります。このように組み合わせていかないと労働需給GAPは埋まらず、結果として日本の国力を下げます。少なくとも2030年には、日本の大きな社会課題として顕在化していきます。
この課題に向けて、いかにコンサルティングを行ってソリューションを提供していくかが、我々のビジネスの根幹となっています。
「人手不足」の背景-業種別就業者-
米田:特に、我々はサービス産業のお客さまが中心です。いわゆる非正規雇用、現場人材、エッセンシャルワーカーと呼ばれる方の採用の支援が我々のターゲットになっています。
実は、日本における各業種の実質GDPに占める割合では、就業者の7割がそのようなサービス業に従事されています。また、サービス業はロボット化が遅れ、AIの入っていく余地が少ない業種です。
人口減少の影響をダイレクトに受ける産業にお客さまが多くいる我々は、なんとか日本の社会課題解決の一助になりたいと考えています。
「人手不足」は更に進み、日本の大きな社会課題に
米田:我々のサービスは、「働く場所/回数を増やす」「働く女性/シニアを増やす」「働く外国人を増やす」「機械化導入等、生産性を上げる」「既存労働力を維持する」というそれぞれの対策の中で存在しています。
そのサービスを一気通貫で提供していく、もしくはそのサービスの中で必要とされるものを提供していくことを積み重ねることにより、引き続き高い成長率を持って成長を実現していきたいと考えています。
ツナググループとは
米田:従業員だけではなく、社会やお客さま、市場に向けてお伝えしていることですが、我々は2030年に予想される644万人の労働需給GAP解消を目指す、社会課題解決のソリューションカンパニーになることを目指しています。以上を自己紹介とします。
司会者:自己紹介とともに、強い成長性についてご説明いただきました。また、「私は誰に介護されるのだろう。ロボット?」「働き方も自由になってきましたよね」というコメントもいただきましたが、人手不足という身近な社会課題に取り組まれていたり、社会課題を解決しながらも成長できる銘柄を探している方は、今日は見逃せないセミナーなのではないかと思います。
司会者:決算について詳しくうかがっていくため、第2部に移ります。本日発表された決算説明資料の数字も交えて、あらためて背景などについて米田社長にお話をうかがっていきます。
米田:2023年9月期第3四半期の決算についてご説明します。まず、第3四半期業績のハイライトです。
第3四半期において、過去最高の売上高・営業利益・営業利益率を達成しました。売上高は、前年比15.7パーセント増の38億円です。営業利益は1億3,200万円と、前年に比べて非常に大きな数字となっています。
営業利益率は、前年比3.2ポイント増の3.5パーセントとなりました。冒頭でお話ししたとおり、固定費比率を下げ、筋肉質な収益構造が実現できました。非常に大きな投資もあわせて行っています。
第3四半期業績 概要
米田:先ほどお話ししたとおり、第3四半期においては、スタッフィング事業の売上高が大幅に伸長しました。
今は非常に人手不足の中、求人広告を出し、面接・採用していては間に合わず、「派遣してもらってでも何とかしたい」というご要望が非常に多くあります。そこに向けた新規事業として昨年進めたスタッフィング事業がかたちになってきたことが大きいと考えています。
米田:先ほどお話ししたとおり、営業利益率に関しても前年比で大きく伸長しました。スタッフィング事業は、先に人を集めなければ派遣できませんので、大きな投資が必要です。また、新規事業の立ち上げにはどうしても固定費がかかります。
前回の第3四半期に赤字の中で立ち上げたスタッフィング事業が収益化したことも、営業利益率と営業利益額が大きく伸びた要因だと考えています。
日総工産株式会社と合弁で、まさにジョイントベンチャーとして、両社でこの事業の立ち上げを急ぎました。1年で収益化まで持ってこられたことは、我々の取り組みだけではなく、やはり市場の要望が強かったと考えています。
通期 業績進捗
司会者:通期業績も好調に推移している中で、上方修正についてもみなさまが気になるところかと思います。そのお考えなども含めて教えてください。
米田:通期業績についてご説明します。お話しいただいたとおり、通期業績は順調に推移しています。第2四半期の決算発表とともに、当初業績予想の営業利益3.3億円から4億円に上方修正しました。
投資家のみなさまにとってはある種織り込み済みというところもあり、株価に大きなインパクトを与えることはできませんでしたが、上方修正した4億円に対し、想定以上の進捗となっています。
結果として、第3四半期累計の営業利益は3.8億円、修正業績予想に対する進捗率は97パーセントとなりました。経常利益は、通期で4億円を計画しており、第3四半期累計は3.9億円、進捗率は99パーセントです。
非常に順調な進捗であることは数字をもってお示しできていると考えています。今後、修正の必要性があれば速やかに開示します。
株主還元
司会者:2023年9月期は増配で、1株あたり年間配当金8円を予定されています。株主還元についてのお考えと増配についてうかがってもよろしいですか?
米田:最適なポートフォリオの提案に合わせたソリューションの提供が、我々のビジネスの根幹です。人材系のビジネスは、紹介人数に対して費用をいただくフロー型ビジネスモデルより、月額でコンサルティング費用をいただいたり、年間で採用支援の契約をいただくなど、BPOとして費用をいただくことが中心です。
ですので、株主還元の基本方針としても、そのようなストック型のビジネスモデルと照らし合わせ、ぜひ長い目でお付き合いいただきたいと考えています。
そのような意味では、配当は我々にとって非常に重要な株主還元施策であり、最も優先順位が高いと考えています。2023年9月期は、前期年間配当金の5円から今期は8円を予定しています。配当に関しては、今後も長い目でお付き合いいただくという意味で、業界平均の配当性向を継続的にしっかりと行うことを目指しています。
司会者:第3四半期において、売上高・営業利益・営業利益率が過去最高を達成しており、なおかつ増配も発表されている状況ですが、このような強さは今後も続く見通しでしょうか?
米田:将来見通しという意味では、やはりメガトレンド、マクロ環境が避けては通れない見方の1つだと考えています。我々は今後も人手不足が続いていくと見立てており、特にインバウンド増加の中で、コロナ禍後のリスタートという意味では、観光業や飲食業、小売業などのサービス業では人手不足が大きな問題だと考えています。
先ほど、我々のお客さまの一部をご覧いただきました。人さえいれば売上が上がるというお客さまも多く、お客さまの業績伸長とともに我々もご一緒させていただくことも目論みの1つです。
もう1つは、物流クライシスです。ドライバーだけではなく、倉庫のピッキング、フォークリフトなどの経験者、有資格者の人手不足も見込まれています。
抜本的・根本的なソリューションが必要とされている中、我々は日総工産株式会社という業界大手の企業と合弁会社を立ち上げています。知見の共有も含め、大きなアドバンテージにしていきたいと考えています。
今後も続く人手不足の中で、今まで我々が積み重ねてきたものがさらに必要とされることが我々の成長戦略の大きなアドバンテージであり、基盤であると考えています。
質疑応答:今後の見通しについて
司会者:「コロナ禍から立ち直って利益率も良くなっているため、見通しが明るくなっていると考えてよろしいですか?」というご質問です。増配については「3円もアップする」「期待どおりだ」「増配、すごいですね」など、かなり大きな反響をいただいています。
米田:見通しに関しては、数字でお示ししたいと考えています。この第4四半期に、思い切って追加投資を行いたいと考えています。当然、先の見立てがなければ投資はできません。
第4四半期の追加投資について、一番大きく投資しているのは人材採用です。現状、我々のサービスに非常に多くのお問合せをいただいている状況です。特にコンサルティングなど、当社で新しいソリューションを提供できる人間がいなければお声に応えきれない状態ですので、人材採用には大きく追加投資しています。
また、教育研修にも追加投資しています。やはりコロナ禍以降、マーケットが非常に大きく変化しているため、営業人員の約6割にDXに関するプロジェクトマネジメントの資格の研修を受けてもらい、お客さまの前でしっかりしたソリューションを提供できるように投資しています。
最後に、マーケティングです。やはり見込みがなければ広告宣伝を打てませんので、第4四半期でしっかりとマーケティング投資を行うことで、来期のさらなる成長を確かなものにしたいと考えています。
このように、まずは来期に向けて先にお金を使うことが、今後に対する施策だとご理解いただければと考えています。
司会者:このように数字で示していただけるとわかりやすいと思います。
質疑応答:筋肉質な収益構造について
司会者:「最近、『筋肉質』と聞きますが、どのような意味ですか?」というご質問です。御社はまさに筋肉質に改善されてきており、それが今回の決算にも反映されているかと思います。筋肉質に変えてきた意味を詳しく教えてください。
米田:我々は2007年創業の若い会社で、10年で上場し、お恥ずかしながらコロナ禍前までの経営では、売上を上げて、経費を使い、差分を利益とするP/Lの会社でした。
今回のコロナ禍で大きく変えたのが、B/Sの会社にしていくということです。財務目標をしっかり持つことにより、数値目標の中で筋肉質な体質を実現していくことを計画の中に織り込みました。
1つは自己資本比率です。B/Sの箱という中身をしっかりと作るとともに、自己資本比率を上げていくための財務戦略を進めました。ただし、自己資本比率というのは結果論でもあります。
財務数値としては、数値目標を持って5つのKPIを進めてきました。最重要の財務KPIはROICです。先ほどの「筋肉質とは何ですか?」というご質問に一言でお答えすると、ROICが高いことです。
成長戦略の中で、投資に対してどれだけ回収できているのか、使うお金、稼ぐお金をマネジメントした数値目標を置き、ROICを最重要KPIとして置くことによって筋肉質の体質が実現できたと考えています。
質疑応答:コロナ禍以降の業績推移について
司会者:「コロナ禍で良い方向に動けた企業の1つ」ということでよろしいでしょうか?
米田:大変な思いはしましたが、四半期推移の数字をご覧いただくとおわかりになるように、コロナ禍の中で一定の成長率は落ちたものの、顧客となる産業をピボットすることにより、売上は比較的順調に推移しました。
投資という意味での利益においては、スライド中央の凹んでいる部分では、お客さまを変え、当社も体質を変えなくてはならず、固定費に対して向き合う必要があり、限界利益に対して数字を見なくてはなりませんでした。
コロナ禍の中で経営そのものを変えられたことが、今につながっている部分です。ご質問いただいたとおり、この時期があったからこそKPIそのものを変え、進めることができたと考えています。
質疑応答:ロジHRについて
司会者:「物流の2024年問題が気になります。ロジHRについて詳しくうかがいたいです」というご質問です。
米田:ロジHRは合弁会社で、大手の倉庫と作らせていただいています。物流の2024年問題は、今まさに政治環境を左右するほど大きく取り上げられています。
2024年問題は、「働き方改革」と言われる取組みの中の1つでしたが、一部業界においてすぐの対応が難しいために、暫定措置として2024年に伸ばしたものです。暫定措置を決めた段階では新型コロナウイルスは流行していなかったため、これほど物流量が増えるとは誰も思っていませんでした。
暫定措置を法律で決めてしまっていますので、「変えられないが、決めた時とは状況が違う」というジレンマの中で、多くの倉庫物流業が経営課題の1つに挙げています。
ロジHRという会社を立ち上げたのは、派遣や求人広告の差配など、今あるソリューションを提供する前に企業ごとのアセスメントから入る必要があったためです。先日我々がソリューションを提供させていただいた例で言いますと、人の採用ではなく倉庫内無人ロボットの会社をご紹介することで生産性を改善しました。
当社は人材系のセクターに属していますが、このようにロボット企業と物流企業をつなげる商社的な役割も果たしています。
ロジHRは物流専門のコンサルティング会社です。単純なソリューション提供ではなく、アセスメントをしっかりと行ってコンサルティングすることで、適切なパートナーとつなぎ合わせていきます。人の採用を支援するだけではなく、時には人を採用しないという選択も含めてソリューションを提供し、我々自身も成長していきたいと思っています。
司会者:ロジHRは、物流専門求人情報のプラットフォーム「Logi REC(ロジリク)」を持っていますが、こちらも2024年問題も含めて物流業界の課題解決に向けて展開しているのでしょうか?
米田:おっしゃるとおりです。例えば「2024年問題を解決します」とテレビCMを打っても、大きな反響を呼ぶことは難しいと思います。
我々は「Logi REC」を無料提供することで、「当社の課題は何だろう?」という問い合わせ窓口としての活用や、ある種マーケティングツールとしても活用していきたいと考えています。
質疑応答:優位性について
司会者:「御社の優位性・強みは何ですか?」というご質問です。
米田:現在多くのお客さまが経営課題として苦労されているのは、人材の採用です。これはマクロ環境においても、直近の状況を見ても言えることです。
この課題に対してお客さまと一緒にいろいろ取り組む中で、我々が知見を得ることも多くあります。我々は今年で創業16年となり、創業して10年で上場しましたが、そのようなベンチャー企業でありながらこれほど大手のお客さまとお付き合いがあるところは、なかなかないと思います。
先端企業の採用事例が蓄積されていることは非常に大きな競争優位性だと考えています。そのような情報をさらに活用するため、約10万事業所、240万人のマッチング結果をビッグデータ化し、「TSUNAgram(ツナグラム)」というデータベースで管理しています。
司会者:「TSUNAgram」について、詳しく教えていただけますか?
米田:「TSUNAgram」では採用のプロセスからさまざまなデータを収集・蓄積し、分析しています。例えば、宅配便のドライバーを目指す人は、7月、8月は夜9時になると「Yahoo!ニュース」の野球の結果を見ていることが多いといった詳細なデータもあります。
そのようなデータから、求職者のペルソナが見えてきます。ある職業に就きたい人、ある会社に関心を持っている人の生活動線が「TSUNAgram」によって可視化され、最適なソリューションの仮説設計ができるようになります。
アルバイトや非正規、現場社員のRPOにおいて、このようなデータ活用を日本で初めて専業として始めたことも、我々の競争優位の1つだと考えています。また、我々には競合となる企業がないという点も、競争優位の1つとなります。
質疑応答:競合について
司会者:「御社の競合はどこですか?」というご質問です。
米田:取材インタビューなどでも「競合はどこですか?」と質問されますが、我々には競合はおらず、すべて共働していると考えています。なぜかと言いますと、当社はほとんどプロダクトを持たず、世の中にあるプロダクトやサービスのポートフォリオを組んでお客さまに提供しているからです。
例えば、現在は日本全国に2,800の求人広告サイトがありますが、我々はそのすべてとアライアンスを組んでいます。また、多くの派遣会社とも提携し、お客さまとのマッチングを支援しています。他社と競合している限り、このようなソリューションは提供できません。例えばリクルートがあるサービスをやっていた場合、パーソルの人は参加しないですよね。
司会者:確かに、そのような事情はありますよね。
米田:競合同士では当然そのようになります。我々は他社と競合することなく、独立性と公平性を保ってお客さまや業界のみなさまとつながっていますので、これは大きなアドバンテージと考えています。
唯一競合があるとすれば、お客さま自身が我々の役割を果たしている場合です。人事部門を強化し、それまで我々にアウトソーシングしていた業務を内製化されるケースは、ある意味で一番の競合と言えます。
質疑応答:外国人採用支援について
司会者:「外国人採用に力を入れているのでしょうか?」というご質問です。
米田:今年8月から、グローバル採用の総合コンサルティングサービス「グローバルワークフォース」のパイロット版がスタートしました。Helte社に出資することで、外国人就業支援企業とのアライアンスも組んでいきたいと考えています。
これは第4四半期から本格的にスタートしますが、コロナ禍においては外国人労働者の方々が帰国されてしまったこともあり、外国人材のマーケットは縮小せざるを得ませんでした。しかしコロナ禍が収束した今、外国人労働者の方々が日本に戻ってきたことで、マーケットに再び火がつき始めています。
「グローバルワークフォース」は、「あらためて外国人を採用したいが、ビザに関する手続きがわからない」「外国人の就業にはどのような制限があるのか知りたい」、あるいはソフトの面で「外国人従業員とのコミュニケーションに必要なことは何か」といったお客さまの疑問や悩みを総合的にコンサルティングするサービスです。
外国人を採用した企業でよく聞かれる話ですが、例えば外国人の従業員はタイムカードを打ってから制服に着替えることが多いようです。日本人は制服を着たあとにタイムカードを押すのが一般的かと思いますが、外国人は着替えることも仕事の一部と捉えます。
司会者:国民性が違うのですね。
米田:働き方が違うのです。「グローバルワークフォース」ではそのような細かい部分も含め、外国人採用に取り組むお客さまをトータルで支援します。現在のパイロット版をベースに来期から本格始動を予定しており、2025年度には50社との取引を実現したいと考えています。
質疑応答:採用施策について
司会者:「人材確保はどのように行っているのでしょうか?」というご質問です。
米田:多くの企業と同様に、基本的には新卒と中途の採用を行っています。それに加え、当社ならではの取り組みとして、リターンパスポートという仕組みを導入しています。
我々が属する人材業界は、人の流動性があるからこそ成り立っています。そう考えると、他の会社の人が辞めたり入ったりすることを支援しながら、自分の会社の人は少しも動かないというのはおかしな話です。当社としては、日本が元気になるためには、人材の流動性をさらに高める必要があると考えています。
そのための取り組みとして、リターンパスポートを発行しています。これは当社を退職した人に対し、「転職先でうまくいかなかった時には戻ってきていいよ」と歓迎するものです。このような施策のおかげで、おそらく他の企業に比べて戻ってきてくれる社員が多いのではないかと思います。
司会者:一度退職したあとでも、また入ってきやすいですね。
米田:そもそも退職しやすいということでもあります。個人的には、退職してもらってもいいと思っているのです。1つの会社だけで成長できる幅には限りがあります。営業職の方はいろいろな企業とお付き合いできるため自己成長の機会も多いですが、間接業務の方は1つの会社にいるだけでは大きな成長を実感できないこともあると思います。
その意味で、思い切って退職を選ぶこともよいと思っています。ただし、戻ってきたい人のために戻れる場所を用意しておくわけです。新卒採用はどの企業も実施しており、独自の取り組みをアピールしている企業も多くあります。中途採用に関しても、それぞれの企業がいろいろな工夫をして人材を確保しています。
我々が他と違っているのは、リターンパスポートの発行によって人材の流動性を高め、他社でさまざまな経験を積んだ人材が帰ってきやすい環境作りに取り組んでいる点です。実際に戻ってくる人が非常に多いことからも、この施策は人員確保に貢献していると考えています。
質疑応答:利益率改善の取り組みについて
司会者:「利益率の改善にあたり、どのような取り組みを行いましたか?」というご質問です。
米田:利益率の改善に関しては、ROIC経営に踏み切ったことが大きなポイントだと考えています。まず、固定費の最適化については、ROICをベースにすることで利益率の大幅な改善につながりました。それに加えて、今、種をまいて開花させたいと考えているのが限界利益率、つまり粗利の改善です。来期はこの点をさらに改善し、伸長させていきたいと考えています。
質疑応答:自己資本比率改善の取り組みについて
司会者:「自己資本比率も改善されていますが、どのような取り組みによるものですか?」というご質問です。
米田:一番大きなポイントは、銀行借入の部分です。コーポレートアクションによって生まれた利益から単純に返済するだけでなく、経営の安定性を担保する契約を結ぶことで、自己資本比率が改善されました。
貸借対照表の箱のサイズは前年同期より小さくなっていますが、中身の効率性が上がった結果、自己資本比率が高まりました。現在の筋肉質な配分を保ちながら業績を上げ、来期の財務戦略としては箱自体も大きくしていきたいと考えています。
質疑応答:通期業績予想に対する進捗率について
司会者:「利益の高進捗に対し、売上高の進捗率が76パーセント程度にとどまっているのはなぜでしょうか?」というご質問です。
米田:誤解を招くような表現をしてはいけないのですが、今後マーケットが伸長することは明らかなため、トップラインは高めに設定しました。世の中の求人ニーズの高まりを織り込んだものであり、実績は順調に推移しています。
一方で営業利益に関しては、構造改革に取り組みながら一歩ずつ進捗している状況だったため、業績予想は保守的な数字としています。実際には、売上に関係なく構造改革の成果が早めに出たことで、予想を上回るペースで進捗している状況です。
米田氏からのご挨拶
司会者:「社長から見て御社の一番の魅力は何ですか?」というご質問をいただいていますので、お答えと一緒にラストメッセージをお願いします。
米田:投資家のみなさまに関わる部分で、私が一番の魅力と考えているのは、世の中のメガトレンドに合ったサービスを提供している点です。
メガトレンドとは、人手不足などの社会課題のことです。我々はこれに対して公平な立場から、過去のアセットを活かしたソリューションを提供しています。社会課題解決の手前に顧客課題があるというのは、なかなか稀有な会社だと思います。
我々にとって社会課題の解決と顧客課題の解決は相互につながっており、メガトレンド上でも課題解決が求められています。我々の業務の一つひとつが社会課題の解決につながっていることは、大きなやりがいにもなります。
投資家のみなさまにおいても、我々の経営に参加していただくことが日本をより良くすることにつながると考えていただければと思います。
これは大仰な言い方ではなく、我々もその付託にしっかりと応えていきたいと考えていますので、ぜひご支援のほどよろしくお願いします。本日はありがとうございました。