急落を続けるGE株
世界の製造業を代表する米国ゼネラル・エレクトリック(GE)が苦境にあえいでいます。
11月13日の同社の株価は前日比▲7%安で引け、年初来安値を更新。年初来では▲40%の下落率、時価総額では約12兆円が失われており、世界的な株高が続くなかで特異なアンダーパフォームとなっています。
GEは航空機エンジン、発電機、医療機器などを手掛ける複合企業ですが、元をたどれば日本でも有名な発明王のエジソンが1878年に創業した照明会社で、非常に歴史の長い会社です。
また、1981年から2001年まで20年間、同社のCEOを務めたジャック・ウエルチ氏は、在任中に株価を30倍に上昇させたことなどから、日本でも名経営者としてよく知られています。
その名門企業に何が起きているのか? まずは、13日に行われた投資家向け説明会の内容から探ってみたいと思います。
予想以上に厳しい業績見通しが示された13日の説明会
今回の説明会は、2017年8月1日に前任のジェフ・イメルトCEO(2001年~2017年)を引きついでCEOに就任したジョン・フラナリー氏らの新経営チームによって行われた初の投資家向け説明会でした。
プレゼンテーション資料は57ページに及び、全社だけではなく各事業の戦略が詳細に説明されましたが、主要なポイントは以下の3点でした。
第1は、2018年度(2018年1月~12月)の業績も低迷が続くとされたことです。
具体的には、M&Aを除いた自律的な売上成長率は0~3%増に留まるとされ、調整後一株利益についても、2017年度見通し1.05~1.10ドルに対し、2018年度も1~1.07ドルとほぼ横ばいの見通しが示されています。
GEは、イメルト氏が退任する直前の今年の夏までは2018年度に2ドルを目指すとしていましたが、経営陣が変わっても、短期業績は急速には回復しないことが示されたことになります。
第2は、配当が引き下げられたことです。2017年12月に予定される四半期配当から、0.12ドルと従来比で半減となることが発表されています。
GEは、1892年にニューヨーク証券取引所に上場以降、安定的に配当を行っており、減配は1929年の世界恐慌時と金融危機後の2009年の2回だけです。今回は外部環境が好転するなかでの減配であるため、内部的に大きな問題を抱えていることが改めて強く印象付けられることになりました。
第3は、航空、ヘルスケア、電力の3事業に経営資源を集中させ、200億ドル(約2.3兆円)規模の資産売却(鉄道、照明、産業ソリューションなど)を今後1~2年で行うとしたものの、具体策は明らかにされなかったことです。
以上3点から、改革の意志は強く感じられるものの、その実行についてはなお見極めが必要という印象が避けられません。
パワー(発電事業)の改革は有言実行で
日本でも、最近発表された決算では三菱重工(7011)やIHI(7013)の火力発電事業の収益が悪化していましたが、GEも例外ではなく、コア事業として残したこの事業の立て直しが今後の回復のカギを握ると考えられます。
今回の説明会では、その再建策として、規模の適正化、ホリスティックな(体系的な)サービスへの集中、「say/do ratio」の向上(有言実行)などの考えが示されました。
やや概念的過ぎることが気になるところではあるものの、この事業の改革に近道はないことをここから読み取ることができます。
今後の注目点
GEは、日本の日立製作所(6501)や三菱重工などのコングロマリット経営にとっては、ベンチマークとなる企業です。また、日本企業が注力している製造現場にインターネットを活用するIoT分野でのライバルでもあります。
このため、ライバルであるGEの苦境が続き企業体力が衰えることは、日本企業にとっては朗報となる可能性も考えられます。
しかし、GEの時価総額は今年に入り大きく下落したとはいえ、なお約19兆円と、日立の約5倍もある巨大企業であり、まだまだ侮ることができない存在です。また、新たな施策を”小出し”にするのも、従業員の危機意識を高め改革を加速させる狙いがあるとも考えられます。
このため、敵失に浮かれることなく、日本企業も「say/do ratio」の向上に心がけ、企業改革が進められることに期待したいと思います。
和泉 美治