3. 老後に向けて資産を準備するための3つのポイント
ここまで、60歳代の金融資産保有額と保有資産の配分についてみてきました。
分かったことは、資産を多分に保有している層としていない層との乖離が非常に大きいということでした。
貯蓄がしっかりできている世帯とできていない世帯、その違いは何なのでしょうか。もちろん、退職金の有無や親からの相続などといった理由も一部ではあります。
ただ、それだけで全てが決まるわけではありません。
老後に向けて資産を準備する上で、非常に大事なポイントを3つ紹介します。
3.1【老後への備え】ポイント1:「ゴールを知る」
ご自身が理想とする老後を過ごすために必要な資金はいくらか考えたことはありますか?
「将来は公的年金をもらえるから大丈夫」と安心している方もいますが、毎月いくら老齢年金を受給できるか把握していない方もいます。
老後の年金収入に個人差があるように、退職金の有無や、持ち家か賃貸かといった事情も千差万別です。
まだまだ先の「老後」ですが、老後をもっと身近に捉えてみましょう。そして、老後の家計収支を具体的に試算し、セカンドライフが始まる時点でどれくらいの資産があれば安心か「ゴール」を明確にします。
老後に向けた資産形成の最初のステップとして「ゴールを知る」ことからスタートしてみましょう。
3.2【老後への備え】ポイント2:「早いスタートで時間を味方に」
将来のために資産を作り上げるには、長い時間をかけることがポイントです。たとえば、60歳までに1000万円を貯めるという目標に対して、スタートが30歳・40歳・50歳では負担感が大きく異なりますよね。
利息等を考慮せず預貯金で1000万円を貯める場合、30歳なら月々約2万8000円程度を積み立てていけば目標達成です。しかし、40歳になると月々約4万2000円、50歳になると月々8万3000円を積み立てていかなければ目標を達成することができません。
「老後のためだから」といまの生活を犠牲にして必死に貯金をすることは避けたいものです。早めに老後への資産形成を始めることで、金額も精神的にも負担を軽くすることができるでしょう。
3.3【老後への備え】ポイント3:「積立投資の活用」
資産を効率よく増やすためには、「積立投資」の活用を検討してみても良いでしょう。
積立定期のように毎月一定額を積み立てていくのですが、積立定期との違いはリスクを伴うということ。リスクと同じだけ、リターンも期待できます。
たとえば、「毎月3万円を30年間」貯蓄した場合と、年6%で運用した場合を例にあげます。
《預貯金で貯蓄した場合》
- 1080万円 (3万円×12ヶ月×30年)
《積立投資で貯蓄した場合》
- 3013万円 (※金融庁資産運用シミュレーション活用)
同じ金額を同じ期間、預貯金か積立投資かどちらを選択するかで、効果の違いは歴然ですね。
もちろん、積立投資の運用成果は確定されたものでないため、30年間ずっと年6%で運用できるわけではありません。
しかし、長期間運用することによって、複利効果も得られます。
4. 老後の資産づくりに向けて第一歩を
一昔前のように、預貯金だけで7%、8%も資産を増やせるような時代ではありません。
低金利の時代に合わせて、資産形成の方法も変化させていく必要があるでしょう。
投資と聞くと、「難しそう」、「損しそう」というイメージが先行してしまう方もいるかと思います。
そのイメージが払拭できない間は、無理に投資する必要はありません。
とはいえ、先述したとおり老後に向けた資産形成は早めのスタートがポイントです。
まずは、自分のゴールを知ることから始めてみましょう。
参考資料
- 内閣府「令和4年版 高齢社会白書(全体版)」
- 金融広報中央委員「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」
- 金融広報中央委員「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」
- 金融庁「資産運用シミュレーション」
荻野 樹