65~85歳まで貯蓄1000万円あれば老後資金は足りるのか
それでは、本題の老後1000万円あれば老後資金は足りるのかのシミュレーションをしていきましょう。夫婦は同い年で65歳から年金生活を始め、寿命は85歳とします。
3パターンの夫婦世帯において、毎月不足する生活費は以下のとおりです。
1.共働き夫婦
月28万7930円(年金受給額)ー月26万8508円(生活費)=月1万9422円
2.会社員の夫と専業主婦の夫婦(片働き夫婦)
月20万333円(年金受給額)ー月26万8508円(生活費)=▲月6万8175円
3.自営業者夫婦
月11万2736円(年金受給額)ー月26万8508円(生活費)=▲月15万5772円
2.3.のパターンで不足する生活費
共働き夫婦は、年金受給額が平均生活費を上回っているため、そもそも生活費に関しては貯蓄がなくても老後生活を送ることが可能です。一方で、片働き夫婦と自営業者夫婦は年金だけでは毎月の生活費が不足してしまいます。
年金生活を送る21年間(65歳~85歳の間)で不足する生活費の合計は、以下のとおりです。
会社員の夫と専業主婦の夫婦(片働き夫婦)
月6万8175円×21年間=1718万100円
自営業者夫婦
月15万5772円×21年間=3925万4544円
片働き夫婦、自営業者夫婦いずれも、貯蓄1000万円では生活費を賄うことができません。
特に自営業者夫婦は4000万円近く、生活費が不足してしまいます。生活費を減らすか、貯蓄を増やす必要があるでしょう。
もちろん年金受給額や生活費・寿命は人それぞれです。そのため、今回のシミュレーションは、あくまでも参考として覚えておいてください。
繰下げ受給などの対策の検討を
老後に向けて十分な貯蓄がない人は、年金受給額の増額も検討してみてください。「年金の繰下げ受給」を利用すれば、年金の受給開始タイミングを遅らせることで毎年もらえる年金額を増やせます。
最長75歳まで年金の受給開始を遅らせることができ、75歳まで遅らせれば、65歳から受取を開始する場合と比べて年間にもらえる年金額を+84%も増額可能です。
老後資金を用意するのが難しい人は、年金の繰下げ受給による年金受給額の増額も検討してみてください。
ただ実際に得になるかは個人差がありますので、慎重に考えましょう。
老後の生活をシミュレーションしてみよう
シミュレーションしたとおり、必要な老後資金は年金受給額と生活費によって大きく変動します。
そのため、まずは自分がどれくらい年金をもらえるのか、いくら生活費がかかるのかをシミュレーションしてみてください。シミュレーションにより、具体的に必要な老後資金が見えてくるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告【家計収支編】2022年(令和4年)平均結果の概要」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果|知るぽると」
苛原 寛