「働き方改革」という言葉に象徴される働き方の変化は、経営者からすると少子高齢化の中でどうやって労働力を調達するのか、労働力を提供する側からすればどこでどのように仕事をするのがいいのかという問題を提示しているのではないでしょうか。
今回は、フリーター経験者の背景や、一度は就職したが離職した背景などについて見ていきたいと思います。
フリーターの高学歴化が進む
2017年10月20日に、独立行政法人 労働政策研究・研修機構(以下、労働政研)から「フリーター経験者(注)の高学歴化と正社員化減少-「第4回 若者のワークスタイル調査」-」が公開されました。
注:本調査での「フリーター経験者」は、パート・アルバイト経験者(学生時代のアルバイトを除く)と定義されている。
その中で目を引くのが、2001年にはフリーター経験者中の高卒者の割合が4割であったのが、2016年には大学・大学院卒者が4割を占めるようになっていることです。”大学や大学院を卒業しておきながら、なぜフリーターに?”と考える親世代もいるかもしれません。では、フリーターになる背景とはどのようなものなのでしょうか。
労働政研はフリーターを「夢追求型」、「モラトリアム型」、「やむを得ず型」、「ステップアップ型」の4つに分類しています。
25-29歳層の男性で見ると、2016年の結果で「やむを得ず型」が全体に占める比率は35%で最も高い比率となっています。5年前の2011年との対比では、比率が増加しているのは「やむを得ず型」(30%→35%)と「ステップアップ型」(23%→29%)。低下しているのは「モラトリアム型」(28%→25%)と「夢追求型」(19%→12%)です。
今回の調査では、男性がフリーターになった理由やきっかけとして、夢を追ったり自分を見つめ直したりという傾向が薄まり、やむを得ない理由を含むにしても、フリーターをステップアップの一段階と捉える前向きな姿勢がうかがえます。
一方、25-29歳層の女性はどうでしょうか。
最も比率が高いのは、男性と同様「やむを得ず型」の35%です。また、2011年対比で比率が増加しているのは、「やむを得ず型」(32%→35%)、「ステップアップ型」(21%→27%)、そして「夢追求型」(12%→15%)です。一方、「モラトリアム型」(35%→24%)は大きく減っています。
女性の場合も男性と同じ理由が主ですが、夢を求める傾向が高まっている点が特徴的と言えるでしょう。
15年前と比べると労働時間にシビアになった
今回の調査では、離学直後に就職し、その後に離職した人の理由についても調べられていますが、公開された結果では男女の25-29歳層いずれでも「労働時間(残業を含む)が長い」が理由の1位でした。一方、2001年の調査では、賃金や労働時間など労働条件の理由は男性で2位、女性では4位でした。
これは、労働環境が悪化しているのか、それとも働き手の受け止め方に変化があったということなのでしょうか。中には若い者の忍耐がなくなったという人もいるかもしれませんが、いずれにせよ、この点に関しては採用する側と働き手の間にミスマッチがありそうです。
まとめにかえて
いかがでしたでしょうか。フリーターというと、定職についていないというややマイナスのイメージを持つ場合もあると思われますが、調査結果を見るとステップアップを目指してフリーターを選んでいる層も確実に増加しています。実際、フリーランスとして様々なプロジェクトに参画しているプロフェッショナルに出会うことも増えてきました。
「定職についていれば安心で、フリーランスは不安定」という考えは時代とともに変わりつつあります。現状は政府が中央集権的に「働き方改革」を主導しているようにも見えますが、すでに働き方は変化を始めているとも言えます。
最近は従業員に対して副業を認める企業も増えてきています。今後は、定職についた従業員としてのメリットと、就業時間を拘束されて別の仕事をする機会を失っているというデメリットを比較しなければならない時代になってくるのかもしれません。あなたはどちらを選びますか。
青山 諭志