1. 厚生年金「月額30万円以上」現役時代の年収

まず最初に、年金額の計算方法と月額30万円以上の年金を得るための年収を確認しましょう。

1.1 年金額の計算方法

厚生年金加入者は、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ります。

昭和31年4月2日以後生まれの人の老齢基礎年金額(2023年度、毎年更新)は次の通り計算します。

  • 年金額=79万5000円(2023年度)✕保険料納付月数/480か月

昭和31年4月1日以前生まれの人は、「79万5000円」を「79万2600円」に置き換えて計算します。

保険料納付月数は20歳から60歳までの月数で、40年間全て納めると老齢基礎年金額は満額の79万5000円です。

一方、老齢厚生年金は加入時期によって計算方法が異なります。

2003年4月以降はボーナスからも保険料が引かれるようになり、計算方法が変更されました。

  • 2003年3月以前:年金額=平均標準報酬月額×(7.125/1000)×加入月数
  • 2003年4月以降:年金額=平均標準報酬額×(5.481/1000)×加入月数

標準報酬月額とは、勤務先から支給される1か月の報酬を32の等級に区分した金額(最大65万円)のことです。

標準報酬額は上記に年間賞与の12分の1(標準賞与額)を加えた金額で、年収を12か月に割って概算できます。

1.2 厚生年金「月額30万円以上」の年収は約1272万円以上

月額30万円以上を受け取るためには、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計が360万円以上必要です。

年収を計算する前提を次の通りとします。

  • 老齢基礎年金を満額(約80万円)受け取る
  • 厚生年金に40年間加入、40年間標準報酬は一定
  • 厚生年金加入は2003年4月以降

年金月額を30万円にするには、老齢厚生年金は年間280万円必要です。

前述の計算式に当てはめると次の通りです。

  • 年金額(280万円)=平均標準報酬額×(5.481/1000)×加入月数(480か月)

上記より、平均標準報酬額は約106万円となります。

平均標準報酬額が年収の12分の1だと仮定すると、年収は約1272万円です。

ただし、標準報酬月額は最大65万円(1年で780万円)であるため、年間賞与が492万円以上必要です。

また、標準賞与額は賞与1回あたり150万円が上限です。

そのため、給与と賞与の支給割合や賞与の支給方法によっては、年収がいくら高くても年金月額が30万円に達しないこともあります。

月額30万円の年金はハードルが高いですが、老後生活を考えると少しでも年金額を増やしたいところです。

ここからは、主な年金アップ術を3つ紹介します。

2. 年金アップ術①:繰下げ制度を活用する

繰下げ制度とは、65歳から始まる年金の支給開始時期を遅らせて年金額を増やす仕組みです。

繰下げによって、年金額は1か月あたり0.7%増額します。

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

支給開始時期は、66歳から75歳まで1か月単位で選択できます。

例えば、70歳から年金の受け取りを開始した場合、年金額は42%(=0.7%×60か月)も増額します。

65歳時点の年金月額が21万円強でも、70歳まで繰り下げすれば月額30万円になります。