企業に雇用されずフリーランスで働く人が増えています。職種も、従来はウェブデザイナーやSEなど、一部の専門的な領域が中心でしたが、最近では営業職や事務職などでもフリーランスで働く人が出てきました。

というと、「同じ仕事で同じ給料なら、フリーランスのほうが柔軟に働ける」「自宅で使った通信費や光熱費も経費に計上できるのでおいしい」と考えるかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか。

フリーランスになると給与所得控除がなくなる

まれに「会社員は経費が認められない」と話す人がいますが、実は会社員(給与所得者)にも必要経費は認められています。

ただし、実際に使った費用ではなく、見なし経費として所得から控除されます。控除額は給与などの収入に応じて、65万円~最大220万円です(平成29年分)。給与所得控除額は収入に応じて決まります。業種業態、職種などには関係しません。

また、企業によってはパソコン、ケータイ、文具、制服、勉強のための書籍など、業務に必要なものがすべて支給されるところがあるかもしれません。そのような人で「自腹では何も使わなかった」という場合でも、給与所得控除は行われます。

かなりきつい? 国民健康保険料の負担

会社勤めを辞めてフリーランスになった人の多くに共通するのが「国民健康保険料がこんなに高いとは思っていなかった」というコメントです。理由の一つは、会社員であれば、保険料は会社と折半ですが、フリーランスの場合は、それが全額自己負担になること。

国民健康保険料は自治体によって異なります。年収の大小、単身か否か、介護保険の加入の有無などによっても異なりますが、中には年間の保険料の割合が年収の15%以上という自治体もあります。

国民健康保険料は、加入者全員が納める「均等割額」と、前年度の所得額に応じて納める「所得割額」によって決まります。このため、独立して間もなく収入がない場合でも保険料は納めなければなりません(自治体によっては、支払いの猶予や減免の制度があるところもあります)。

フリーランスには雇用保険、労災保険がない

会社員は、いわゆる「4つの保険」に加入しています。「健康保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」です。前述した健康保険に加え、厚生年金保険、雇用保険の保険料も会社と折半です。さらに労災保険の保険料は会社の全額負担です。

注意すべきは、フリーランスは、国民年金保険と国民年金の加入は義務づけられていますが、雇用保険、労災保険がないことです。病気やケガで仕事ができなくなっても保障はありません。いざというときに備えるためには、貯金をしておいたり、所得補償保険や就業不能保険に自己負担で加入しておいたりする必要があります。

フリーランスは将来もらえる年金額も少ない

日本の年金制度はいわゆる「3階建て」と呼ばれます。全国民に共通する「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金保険」のいわゆる「公的年金」が1階・2階部分で、企業によっては3階部分の「企業年金」があります。

企業年金とは、厚生年金基金、確定給付年金、確定拠出年金などで、最近注目されているiDeCo(個人型確定拠出年金)も3階部分に該当します。

会社員であれば、厚生年金の保険料は会社と折半です。ところが、フリーランスは1階の国民年金だけで、厚生年金はありません。

国民年金の支給額だけでは、なかなか安心して老後を迎えることはできません。保障を補うためには、iDeCoのほか、小規模企業共済制度などの活用も検討すべきです。

まとめ

以上のことから、会社員からフリーランスになると、税金や保険の面では、「おいしい」よりも、むしろなかなか厳しいと言えそうです。

ただし、会社勤めをしながら副業をするといったスタイルに変えることで「公的保険などを維持しながら、使える経費も増えた」という人もいます。メリットとデメリットを見極めて、ベストな働き方を選びたいものです。

上山 光一