NHK朝ドラの新シリーズ「わろてんか」がスタート!

9月30日(土)にNHK朝の連続テレビ小説(以下「朝ドラ」)「ひょっこ」が最終回となり、10月2日(月)から新シリーズ「わろてんか」がスタートしました。朝ドラは半年で1作品となっており、毎年4月と10月に新シリーズが始まります。朝ドラが最終回を迎え、新作品の放映が始まることで季節の変わり目を感じる人も少なくないかもしれません。

朝ドラはNHKの看板番組の1つ

朝ドラは毎週月曜日から土曜日の朝8時(地上波、以下同)から放映される15分間番組です。なお、地上波の再放送は12時45分からですが、視聴率のデータからは多くの人が8時からの本放送を観ていると推測されています。

この朝ドラは、毎週日曜日の20時から放映される大河ドラマと並んで、NHKドラマの看板番組の1つとして広く知られています。それは、朝ドラの過去の視聴率を振り返ると、驚異的な数字が並んでいることからも明らかです。

驚異的な視聴率を誇ってきた朝ドラ、「おしん」は52.6%を記録

1970年代は平均視聴率が軒並み40%を超えました。そして、1990年代前半までも30%を超えるのは当たり前で、35%超えも珍しくありませんでした。時たま30%を切る作品が出ると“失敗作”などと揶揄されたくらいです。なお、1980年以降の期間平均視聴率ベスト5は、

  • 1位:「おしん(注1)」 1983年 52.6%
  • 2位:「澪つくし」 1985年上期 44.3%
  • 3位:「はね駒」 1986年上期 41.7%
  • 4位:「心はいつもラムネ色」 1984年下期 40.2%
  • 5位:「なっちゃんの写真館」 1980年上期 39.6%

注1:「おしん」は1年間を通した作品。ビデオリサーチより。

となっています。社会現象になった「おしん」を別格としても、驚異的な数字が並んでいることがわかります。

長い不振時期を乗り越えて復活を遂げつつある朝ドラの視聴率

それでは、最近の朝ドラの視聴率はどうなのでしょうか? 結論から言うと、好調が続いています。

朝ドラは2000年代に入ってから苦戦が続いてきたのですが、2012年上期の「梅ちゃん先生」が18作ぶりに(=9年ぶり)期間平均視聴率20%超となって以降、「梅ちゃん先生」を含めて11作中9作が20%超となっています。最近では、2015年下期の「あさが来た」の23.5%は30作ぶりの高水準となりました。

また、スタート時に苦戦した「ひょっこ」も最後は余裕で20%をクリアーし、タイムシフト視聴率(注2)を加えた実質的な視聴率は30%超になった可能性も高いようです。

確かに、前掲した1990年代前半までの数字には遠く及びません。しかしながら、テレビ視聴率の低下傾向、とりわけ、ドラマの視聴率低下が著しい昨今にあって、朝ドラは大健闘と言えましょう。一部で言われる“朝ドラブーム”は決して大げさではなく、一人勝ちと言っても差し支えない状況です。

注2:タイムシフト視聴率は、放送翌日から7日間の録画再生率を測定したもの。

放映開始時間が15分早まった効果は想像以上に大きい?

朝ドラが不振を抜け出して、好調を続けている理由は何でしょうか。もちろん、作品の良さはありますが、それ以外に何か要因があるのでしょうか。

まず、放送時間の変更が大きな要素と考えられます。朝ドラは2010年上期の「ゲゲゲの女房」より、放送開始時間をそれまでの8時15分から8時に早めています。わずか15分間の引き上げですが、これ以降、視聴率は明らかな改善傾向が見られます。

改めて言うまでもなく、朝は何かと忙しく、とりわけ、主婦には猫の手も借りたいほどでしょう。また、朝ドラの全盛期だった1970~80年代と比べると、主婦が働く比率が増えているはずです。子供を保育園や幼稚園に送って、自身も勤め先に向かう毎日、しかもお弁当を作るとなれば、朝は1分1秒が非常に貴重です。

勤務先の始業時間が9時とすれば、8時15分よりも8時開始のほうが見る機会が多いのは当然と言えます。また、この開始時間は、中高生やサラリーマンにとっても利便性が高まったと考えられます。特に、地方で車通勤の会社員にとっては、有益なのではないでしょうか。

集中力が欠如してきたという社会的背景も一因か

一方で、15分間という短い放送時間だからこそ大健闘しているという推察も可能です。つまり、長時間テレビを観るような集中力が失われてきているのではないかということです。

確かに、テレビではダイジェスト番組が増えていたり、ネットでは“まとめサイト”の類が増えていたりしています。忍耐力がなくなったというのは言い過ぎかもしれませんが、知らず知らずのうちに、テレビ番組を観ることですら、集中力が落ちていると考えられます。

また、民放番組では、テレビ局の収支面での都合などにより、CM放送の時間が多くなったこともドラマ離れの一因かもしれません。もし、これが大きな要素だとすれば、朝ドラの好調も手放しで喜ぶことができない気もします。

LIMO編集部