老人ホーム選びは「終の棲家」を決める大切なステップ。入居者本人との相性、既往症への対応などさまざまなチェックポイントがある中、ほとんどの方が最も重要視する点が「お金」に関することでしょう。
とはいえ、老人ホーム入居後に予想外のお金に関するトラブルが発生するケースは多々あります。
そこで、今回は、ケアマネジャーである筆者が、老人ホームで起こりがちなお金のトラブル3つと、その対策についてご紹介します。
老人ホーム「お金のトラブル・あるある3選」
トラブル1:月額費用の請求額が想定外!
介護施設や有料老人ホームの月額費用は、介護保険サービスの自己負担金のほかに、家賃や光熱費、食費なども含めて請求されます。
また、入居後にかかる費用には「日常生活費」もあります。
■日常生活費の例
- おむつ代
- 洗濯代
- レクリエーションの実費
- 外出の付き添い費用
- 買い物代行費用
- 訪問理美容代
- 口腔ケア用品代
- テレビのリース代など
これらの費用について、施設のパンフレットに記載がなかったため「想定していた金額と実際に請求された金額が違う」「請求額が高い!」と施設側とトラブルとなることがあるのです。
トラブルを避けるには、入居前にすべての費用を含めた月額費用の総額について質問しておくと安心です。
トラブル2:入居一時金の返還トラブル!
老人ホームを退去する時に多いのが、入居一時金の返還トラブルです。
有料老人ホームなどに入居する際に支払う「入居一時金」は、施設ごとに初期償却率や償却期間、どのように返還するのかといったルールが決められています。
契約時に説明が不十分な場合、退去時に「返還額が少なすぎる!」などと、トラブルに発展してしまうことがあるのです。
入居一時金は、返還トラブルになりやすいので、施設の返還ルールが記載されている「重要事項説明書」をしっかりと確認する必要があります。
■入居一時金はクーリングオフができる
有料老人ホームを契約から90日以内に退去する場合は、居住した期間の諸経費分の金額を除く入居一時金の全額が返還される「短期解約特例(90日ルール)」が適用されます。
ただし、90日を1日でも過ぎると一部は返還されない可能性があるため、退去を検討するのであれば90日以内に決断することをおすすめします。
トラブル3:入居中の老人ホームが倒産!
東京商工リサーチが、今年1月に発表した情報によると、2022年の介護事業の倒産件数は、介護保険制度が始まった2000年以降で最多の143件(前年比76.5%増)を記録したとのことです。
大半はデイサービスや訪問介護の事業者ですが、有料老人ホームの倒産も報告されています。
万が一、入居中の有料老人ホームが倒産しても、別の運営会社が引き継いだ場合は、生活の場を失うことはありませんが、料金体系が変わる可能性があるでしょう。
引き継がれなかった場合は、ほかの施設を探して転居しなければならなくなります。その際の引越し費用が補償されない場合は、自分たちで負担することになり、新しく入居する老人ホームの入居一時金も必要になるでしょう。
なお、有料老人ホームが倒産した場合には「一時金の保全措置」により、500万円を上限として支払った入居一時金の未償却分が返還されます。
このことについても、施設の「重要事項説明書」に記載されているので、入居一時金の支払いがある有料老人ホームに入居する場合は、必ず確認しましょう。
また、公益社団法人有料老人ホーム協会に加盟している有料老人ホームであれば、万が一、施設が倒産しても「入居者生活補償制度」によって一人当たり最大500万円の保証を受けられます。
有料老人ホームへの入居を検討している方は、その施設が公益社団法人有料老人ホーム協会に加盟しているか確認しておくと安心です。