4. 国民年金はいくらもらえるのか
同じく厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、次は国民年金の平均受給額を抽出してみます。
4.1 国民年金の平均受給月額
平均年金月額:5万6368円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9013円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4346円
4.2 国民年金月額階級別の老齢年金受給者数
- 1万円未満:7万27人
- 1万円以上~2万円未満:28万4152人
- 2万円以上~3万円未満:90万3006人
- 3万円以上~4万円未満:274万9550人
- 4万円以上~5万円未満:463万6048人
- 5万円以上~6万円未満:791万730人
- 6万円以上~7万円未満:1500万3006人
- 7万円以上~:187万2466人
男女ともに平均は5万円台。ボリュームゾーンは6万円~7万円未満です。
厚生年金がない場合、年金だけで暮らすのは心もとないと感じるかもしれません。
5. 厚生年金と国民年金からも天引きされる税金・保険料5つ
現役時代の給与やボーナスから天引きされる厚生年金保険料。その負担は決して軽くありません。
そして老後を迎えたあと、支給される厚生年金や国民年金からは、またしても天引きされるお金があるのです。
5つにわけて見ていきましょう。
5.1 介護保険料
介護保険料は、65歳になると健康保険料と切り離して単独で支払うことになります。年金年額が18万円以上の方の場合、原則として年金から天引きされることに。
介護保険料は住所地や所得によって異なるものの、徐々に増加傾向にあります。
5.2 国民健康保険料(税)
国民健康保険とは、協会けんぽや健康保険組合などの会社の保険に加入していない75歳未満の方が加入する、公的健康保険です。
65歳から74歳までの国民健康保険加入者の場合、原則として国民健康保険の保険料(税)も年金から天引きされます。
保険料は自治体ごとに料率が定められており、所得や資産で決まります。
5.3 後期高齢者医療制度の保険料
原則75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度の保険料も、要件を満たす場合は年金から天引きされます。
保険料は都道府県ごとに料率が定められており、所得等で決まります。
※国民健康保険や後期高齢者医療制度は、申請により普通徴収(納付書や口座振替)に変えられる自治体もありますが、それでも支払いの義務はあるため、実質年金天引きと負担は変わらないといえます。
※国民健康保険と後期高齢者医療制度はいずれかの加入になるため、同時に天引きされることはありません。
5.4 所得税および復興特別所得税
一定額以上の年金には所得税がかかります。公的年金は雑所得となり、65歳未満なら108万円、65歳以上なら158万円を超えると課税されます。
また「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。
ただし、障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
5.5 個人住民税
前年中の所得に対してかかる住民税についても、年金所得が一定になれば課税され、年金天引きで納めます。
障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
6. 年金生活を見据えた老後対策
賞与から天引きされる厚生年金保険料の概要と、厚生年金と国民年金の支給額をご紹介しました。
現役世代の負担は大きいですが、年金生活になっても税金や社会保険料の負担が重くのしかかります。
年金制度に対する不安を抱える方も多いですが、「年金を払わない」という選択はできません。年金には障害年金や遺族年金などの保障の性質もあるため、保険料はしっかり納めましょう。
一方で、年金だけに頼らない老後計画も大事です。
「老後はリタイアして悠々自適な年金生活を…」とイメージする方もいるかもしれませんが、実際には年金以外の何らかの収入源や貯蓄が必要になるでしょう。
- 働き続ける
- 健康を維持する
- 老後資金の貯蓄をする
- 老後も資産運用を活用し、資産が減るスピードをゆるやかにする
- 厚生年金の加入期間を伸ばして年金額をあげる
など、個人に合った方法を複合的に行い、老後に向けた準備が求められます。
参考資料
- 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2022年12月)
- 日本年金機構「Q.年金から所得税および復興特別所得税が源泉徴収される対象となる人は、どのような人でしょうか。」
- みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社「2023 年夏季ボーナス予測」
太田 彩子