おひとりさまの貯蓄事情

次は、おひとりさまでも老後の生活が気になってくる50歳代の、貯蓄事情をみてみましょう。

もとになったのは、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果」です。

【図表3】

出所:金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果」をもとにLIMO編集部作成

●50歳代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産を保有しない世帯を含む)の結果

  • 平均:1048万円
  • 中央値:53万円

《金融資産保有額分布》

  • 金融資産非保有:39.6%
  • 100万円未満:11.5%  
  • 100~200万円未満:5.5%
  • 200~300万円未満:4.4%
  • 300~400万円未満:3.0%
  • 400~500万円未満:1.9%
  • 500~700万円未満:3.0%
  • 700~1000万円未満:5.5%
  • 1000~1500万円未満:4.6%
  • 1500~2000万円未満:4.1%
  • 2000~3000万円未満:4.1%
  • 3000万円以上:9.6%
  • 無回答:3.3%

50歳代の貯蓄事情をみると、一番多くを占めているのが「金融資産非保有の39.6%」、次は「100万円未満の11.5%」です。

貯蓄額が少ない順または多い順に並べたとき、丁度、真ん中になる人の貯蓄額を表す「中央値:53万円」とあわせても、先々に不安を感じる結果になっています。

とはいえ、3番目に多いのは「3000万円以上の9.6%」。

老後資金の準備がある程度できている人、これからの人など、貯蓄事情でうかがうことができます。

おひとりさまであれば、老後で想定される健康面や経済的なリスクがあります。

そのようなリスクを見据え、できることから何か対策を打つ必要があります。

次は、リスクと対策を3つ紹介します。

老後を見据えた対策1:副業など働き方の工夫で収入や貯蓄を増やす

非正規雇用の方は、正社員の方に比べると賃金が6割から7割ぐらいと低い傾向にあります。

老後に向けた準備をしようにも、貯蓄に回せるお金が少ないという場合があるのではないでしょうか。

その際、得意なことで副業をしてみたり、空いた時間を利用してダブルワークをしてみたりして収入を複数に増やすことを考えてみましょう。

収入が増えた分を老後の蓄えにすることができますし、自分自身のスキルを磨くことができれば、これから先、仕事を続ける際の自信にもつながります。

老後を見据えた対策2:老後の基盤になる公的年金の未納分がないかチェックする

非正規雇用の方は、正社員と同じく厚生年金に加入しているはずです。

しかし、途中で転職したということがあったかもしれません。

すぐに次の就職先が決まっていれば、厚生年金に継続的に加入できますが、しばらく失業期間があったときの国民年金保険料を払わないで未納のままになっている人も、結構いるものです。

誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」の「最近の月別状況の欄」・「これまで納めた保険料納付額(累計額)の欄」をチェックして、支払い忘れている国民年金保険料がないか確認しましょう。

最近の月別状況の欄では、この1年の年金の納付状況などが確認できます。

また、これまで納めた保険料納付額(累計額)の欄では、国民年金、厚生年金など、これまでの年金加入期間の月数が確認できます。

65歳から老齢年金をもらうには、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年(120か月)以上必要です。

しっかり要件が満たせているか確認しておきましょう。

国民年金保険料は、納付期限を過ぎてもその後2年以内なら納めることができます。

また、もし、国民年金保険料の免除等の申請をしている期間であれば、10年前まで遡って追納できます。

将来もらえる年金を少しでも増やすためにも、気づいたときに速やかに納めることが大切です。

老後を見据えた対策3:老後の住まいを確保する

老後の住まいについて、どうするか早めに決めておきましょう。

親が住んでいる家に引き続き住むという方は、老朽化によるリフォームが必要になるかもしれません。

また賃貸に住んでいる方は、老後は今の場所に住み続けるのか、別の場所に引っ越すのか考えておく必要があります。

というのも、おひとりさまがシニアになってから賃貸物件を探す場合、通常よりも入居できる物件が少なくなりがちだからです。

理由は、一人暮らしのシニアにある「孤独死のリスク」を恐れ、不動産会社などが貸したがらない場合があるからです。

少しでも若いうちに、その後も住み続けられる物件を探しておくことも必要でしょう。

おひとりさまの老後を見つめる

おひとりさまであれば、頼れるのは自分だけ。生きていくにはお金が必要です。

まずは、老後に向け蓄えを増やし、老後生活の基盤となる年金を増やす取組みを優先的に行いましょう。

さらに、安定した住居も大切です。

先々を考え、できることから少しずつ確実に準備しましょう。

参考資料

舟本 美子