新型iPhone発表後にアップル株が下落

米アップルが9月12日(米国現地時間、日本時間は9月13日未明)に新製品発表会を開催してから約2週間が経ちました。「iPhone X(アイフォーン テン)」は予約開始が10月27日、発売が11月3日からとまだ先ですが、「iPhone 8」、「iPhone 8 Plus」は9月22日に大手携帯電話3社から販売が開始されています。

そのアップルの株価ですが、新製品発表後の動きは今ひとつ軟調です。発表前日の9月11日の終値は161.5ドルでしたが、発表当日の12日の終値は160.86ドルとわずかですが下落でしています。

また、2週間後の9月25日の終値は、その直前に「Apple Watch」の接続不具合が伝えられたこともあり、150.55ドルと11日の終値に比べて約▲7%下落しています。この期間の市場平均(S&P500種株価指数)は横ばいでしたので、アップル株は市場平均をやや下回っていたことになります。

もちろん、冴えなかったとはいえ一桁半ばの下落率であり、数日間だけの株価の動きに過ぎません。よって、ことさら大げさに考える必要はないのかもしれません。また、下がったとはいえ、アップルの時価総額は7,700億ドル(約86兆円)と、依然として米国最大規模を誇っています。

とはいえ、今後も下落が続くのか、あるいは再び上昇に転じて時価総額100兆円の大台に乗せるか、その行方は大いに気になるところです。そこで、今回の株価軟調にどのような背景があったのかを考えてみたいと思います。

新製品発表が市場で好感されなかった3つの理由

まず、第1の理由は、9月11日時点でアップル株は1年前と比較し+44%と大きく上昇しており、新製品発表に対する期待が既に織り込み済みであったことが考えられます。別の言い方をすれば、新製品に関する情報が事前に漏れてしまっていた、あるいはアップルの情報管理が甘くなっていたことが原因とも考えられます。

実際、有機ELパネルが採用される、顔認証機能(Face ID)が搭載される、ワイヤレス充電対応となる、自社開発の専用チップ(A11 Bionicチップ)が搭載されるといった点が発表前から多くのメディアで報じられており、そのほとんどは現実のものとなっていました。

第2は、新型iPhoneには上述のような新たな機能や表示デバイスが採用され、従来に比べてより洗練された製品とはなってはいるものの、そのほとんどは、既にサムスン電子が採用している技術であり、大きな革新性を消費者に感じさせなかったことが考えられます。

第3は、iPhone Xが「8」と同時ではなく、11月3日の発売となり、店頭にもサンプル品が並んでいないことがあります。そのため、今後の販売動向が見極めにくく、株式市場も様子見を決め込んだ可能性が考えられます。

今のところ「8」の販売が極めて好調というニュースはほとんど目にしませんが、この状況が「X」の発売により大きく変化していくのか、今後の最大の注目点となりそうです。

日本のアップル関連銘柄の株価も軟調に

話は少し変わりますが、アップル株の軟調は日本のアップル関連銘柄にも波及しています。代表的な日本のアップル関連企業の新製品発表後の株価推移(9月12日終値と9月25日の終値の変化)は以下の通りです。

  • 村田製作所(6981):▲1%下落
  • アルプス電気(6770):▲4%下落
  • ソニー(6758):▲5%下落

こうしたことから、アップルの動きは米国の株式市場だけではなく、日本の株式市場にとっても重大な関心事であることがわかると思います。

まとめ

2007年6月に初代iPhoneが発売されてから今年は10年目の節目の年です。この間、アップル株はおよそ9倍に上昇しています。このまま軟調な状態が続くのか、それとも、これからの10年も事業の拡大と株価の上昇が継続していくのか、非常に気になるところです。

今回は「8」と「X」の発売日が異なるため、今後の見通しが従来に比べると難しくなっていますが、日本企業への影響も大きいため、その動きを注意深く見守りたいと思います。

LIMO編集部