2. 貯金だけでは不十分?「お金に働いてもらう」発想も。
長寿時代に備え、年金や退職金だけに頼るのではなく、自分で現役時代から少しずつ老後資金の準備を開始なさるみなさんが増えています。
「老後資金づくり」を考える際に欠かせない視点の一つが、「お金にも働いてもらう」、つまり資産運用を取り入れることであるといえるでしょう。
ここで、資産運用の3つのポイントをご紹介しましょう。
2.1 資産運用のポイント①「複利」の活用
1つ目は「複利」を活用することです。運用から得られたリターンを手元に受取らずに運用に回し、それを繰り返していくことで資産を雪だるま式に大きくしていくことができます。
2.2 資産運用のポイント②「長期積立投資」
2つ目は「長期積立投資」です。一括で資金を投じるのではなく、例えば毎月決まった日に同じ金額をコツコツ積立てて投資を行う方法のことをいいます。
投資期間は、最大限の効果を狙えるように、できるだけ長い期間を目指しましょう。また、投資のタイミングが分散されることで、高い価格で買うことの防止にもつながるのも、積立投資が持つメリットの一つといえます。
2.3 資産運用のポイント③「リスク回避のための保障」
3つ目は「リスク回避のための保障」です。10年や20年といった長い投資期間のあいだには、ケガや病気、失業などによって積立投資を継続するのが難しいときもあるでしょう。
老後資産をつくる際の最大のリスクは「途中で運用を辞めてしまうこと」。そういった事態を回避するために、収入保障や医療保険などの最低限の保障を準備しておくと安心です。
資産運用を検討するときには、是非この3つのポイントを思い出してくださいね。
3. アメリカと日本の運用状況の違い
とはいえ、日本では「老後資産の準備のために運用する」というと考え方に、あまり馴染みのない方が多いかもしれませんね。
そこで、他の先進国の状況と比較してみましょう。日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」から引用した、下記のデータをご覧ください。
3.1 日米家計金融資産内訳
日本
- 現金・預金:54.2%
- 債務証券:1.4%
- 投資信託3.4%
- 株式等:9.6%
- 保険・年金・定型保証:28.4%
アメリカ
- 現金・預金:13.7%
- 債務証券:6%
- 投資信託:12.3%
- 株式等:32.5%
- 保険・年金・定型保証:32.6%
日本は金融資産の半分以上を預貯金が占めていますが、投資先進国アメリカでは株や投資信託等の投資性商品が約半分を占めており、資産配分が全く逆になっています。
また、金融庁「人生100年時代における資産形成」(平成31年4月12日)によると、日米の家計金融資産増加率は1998年からの20年間でアメリカが2.7倍、日本が1.4倍となっています。この増加率のうち、運用リターンによる要因がアメリカは2倍、日本はわずか1.2倍です。
もちろん、これはあくまでも結果であり、運用リターンはその時々の運用状況によって変化します。しかしながら「資産運用をするか・しないか」の違いが、いかに将来の資産額に響いてくるかをよく表わした結果といえるのではないでしょうか。
4. まずは専門家に相談を
先が見えないコロナ禍。まだしばらく、暮らしやお金にまつわる漠然とした不安が続くことが予想されます。
「人生100年時代」に老後を迎える現役世代の私たちは、かつてのシニア世代よりも、さらにていねいに老後に備えていく必要がありそうです。
働きざかりのみなさんの「老後のお金」は、これからの準備次第で、将来大きく変わってきます。
ただし、資産運用にはリスクが付き物であることは、忘れずにいたいものです。そして、はじめの一歩を踏み出すには、正しい知識や情報が不可欠といえるでしょう。
ゆたかな老後の暮らしのために、まずは、気軽にお金の専門家に相談するところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 金融広報中央委員「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和2年)」
- 日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」(2020年8月21日)
- 金融庁「人生100年時代における資産形成」(平成31年4月12日)
- 熊谷良子「THE老後格差「70代以上」の貯蓄事情。平均と中央値」
佐藤 雄基