株価が5年間で11倍に上昇したヤーマン
皆さんはヤーマン(6630)という、株価が大化けしたテンバガー(10倍株)銘柄をご存じでしょうか。
同社は、東京都江東区に本社を置く美顔器や痩身器具などの家庭用美容・健康機器メーカーですが、最近の株価上昇率には目を見張るものがあります。過去1年間で3.5倍、また、過去5年間では約11倍と極めて高いパフォーマンスを示しています。
業績も順調です。2017年4月期実績は、売上高が200億円(前年同期比+22%増)、営業利益が35億円(同3.4倍)と大幅な増収増益でした。
また、9月13日に発表された2018年4月期第1四半期決算は、売上高が61億円(同+10%増)、営業利益が16億円(同+49%増)と引き続き好調です。通期会社予想は据え置かれていますが、第1四半期の3か月間だけで通期会社予想の約45%を達成しているため、上方修正の可能性は十分に考えられると思います。
ちなみに、今第1四半期に営業利益が大きく伸びたのは、店販部門(同71%増益)と直販部門(同+54%増益)でした。
店販部門は、家電量販店、大手百貨店、バラエティショップ等への販売を行っていますが、前期に続き今四半期も免税店向け卸売事業が好調でした。
一方、インフォマーシャル、雑誌、新聞、ウェブなどのメディアを活用して個人顧客への販売を行う直販部門は、費用対効果を考慮した販売施策を行った結果、今第1四半期は減収となりましたが、利益は大きく増加していました。
パナソニックも美容家電を強化
このように絶好調なヤーマンですが、気になるのは競合の動きです。
家電の最大手であるパナソニック(6752)も、9月15日から美容家電を使ったエステを無料体験できる専門ショップ「Panasonic Beauty SALON」を銀座にオープンするなど、美容家電に対して積極策を打ち出しています。
このショップでは、以下のような製品を実際に無料で体験することができます※。
※ 時期により商品の変動があります。
<ヘアケア・スタイリング>
ヘアードライヤー ナノケア、くるくるドライヤー ナノケア、ストレートアイロン ナノケア、ブラシアイロン、カールアイロン、コンパクトアイロン ミニコテ
<スキンケア>
RF美容器(10月21日発売 新製品)、スチーマー ナノケア、洗顔美容器 濃密泡エステ、導入美容器 イオンエフェクター、炭酸イオンエフェクター、毛穴洗浄 角栓クリア、毛穴吸引 スポットクリア、目もとエステ
<パーツビューティ>
まつげくるん(まつげカール)
<ボディケア>
光美容器 光エステ (ムダ毛ケア製品のため、手もしくは腕での簡易お試し)
<リフレ商品>
レッグリフレ、骨盤おしりリフレ
美容に関してパナソニックにこれだけの品揃えがあること自体が驚きですが、専門ショップのオープンからも同社の本気度がうかがえます。
なお、パナソニックでは日本国内需要に加え、外国語のパンフレットも用意して海外からの観光客の利用も見込むなど、年間10万人の集客を目指すとしています。
今はまだニッチな理美容家電市場
このように注目を集めている理美容家電市場ですが、市場規模はまだそれほど大きなものではありません。
パナソニックの場合、美容家電だけの売上は開示していませんが、美容家電に加え食洗機やオーブンなども含む「スモール・ビルトイン事業」の2017年3月期売上高は約3,900億円でした。また、上述の通り、株価が大幅高となっているヤーマンの売上高も2017年4月期は200億円に留まります。
これに対して、2016年(暦年)の家電量販店における生活家電の売上高は1兆7,550億円、さらにAV家電、情報家電、通信家電、カメラ類などを合計した販売額は4兆1,830億円に達しています。
なお、ドラッグストアでのビューティケア(化粧品・小物)の売上高は8,520億円となっています(経産省、商業動態統計より)。
理美容家電という製品カテゴリーの市場だけに限った業界データは見当たらないものの、このように家電全体、あるいは化粧品類全体の市場と、パナソニックの関連事業やヤーマンの売上を対比すると、同市場は比較的小粒なニッチ市場であることが理解できると思います。
今後の注目点
とはいえ、見方を変えれば、理美容家電は家電でもありビュティーケア製品でもあるため、市場の開拓余地はまだまだ大きいとも考えられます。
また、パナソニックの今回の取り組みにより、海外観光客の認知度をさらに高めることができれば、国内だけではなく海外展開にも拍車がかかるのではないでしょうか。特にアジアの消費者の感性を捉えつつあるようですので、今後は“日本ブランドの復権”という意味でも、理美容家電各社の動向には注目していきたいと思います。
LIMO編集部