2.1 65歳以上の無職2人以上世帯の家計収支

  • 実収入:24万8858円
  • 非消費支出:3万2606円
  • 消費支出:23万8919円

収支:▲2万2666円

2.2 最低限準備したい貯蓄額は?

あくまで参考値ではありますが、65歳以上の無職夫婦世帯の毎月の家計収支は約2万3000円の赤字となることがわかりました。この赤字の25年分は690万円(2万3000円×12カ月×25年)となります。この金額は生活費の不足分であり、最低限準備したい金額となります。

個別に準備すべき金額は、収入についてはねんきん定期便やねんきんネットを用いて具体的な金額を把握しましょう。

支出は現在の家計から具体的な金額を見積もります。老後をどのように過ごしたいかを加味して調整するとよいでしょう。

3. 生活費の不足分以外に準備しておきたい老後資金3つ

老後のための蓄えは、生活費の補填以外にも目的があります。大きな出費はおおよその金額を把握し、早めに準備を始めましょう。

3.1 生活費以外の老後資金1.介護費用

65歳以降の年金生活になると、将来夫婦のどちらかが要介護状態になることを想定したほうがよいでしょう。介護にかかる費用には介護リフォームなどの一時的な費用と、毎月支払う介護サービスの利用料があります。

生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」から、平均的な介護費用を見積もると、以下のようになります。

3.2 平均的な介護費用

  • 一時費用:74万円
  • 毎月かかる費用:8万3000円
  • 介護期間:61.1カ月

合計介護費用:581万1300円(74万円+8万3000円×61.1ヶ月)

3.3 生活費以外の老後資金2.住居の修繕や改築

住まいが持ち家の場合、長く住むにはメンテナンスが必要です。メンテナンスの費用は工事内容によって大きく異なります。国土交通省の「令和3年度住宅市場動向調査」によると、2021年のリフォーム資金の平均は201万円となっています。

また、改築にはまとまった資金が必要なため、現役時代から見積もっておきましょう。

3.4 生活費以外の老後資金3.子どもへの援助

家庭によっては、子どもへ結婚資金や住宅資金、孫の教育資金を援助したいと考えることもあるでしょう。その場合、自分たちの生活が破綻しないよう、余裕資金の範囲で行うことが大切です。

また、年間110万円までの暦年贈与、「住宅取得資金贈与の特例」の利用など、なるべく贈与税がかからないような方法を選択しましょう。

4. 老後に役立つ生活費の見直し

年金生活を経済的な不安なく送るには、無駄な出費を削ることが大切です。ここでは、固定費の見直しについて解説します。

4.1 生活費の見直し1.保険

生命保険の必要性はライフステージによって変化します。扶養すべき子どもがいなくなり、夫婦2人になると高額な死亡保障は不要になります。

高齢になると病気のリスクが高まり、医療保険は必要と考える人もいるでしょう。しかし、健康保険の高額療養費制度などがあるため、さほど大きな自己負担にはならないと考えられます。費用対効果が合わなければ、保険料分を貯蓄に回しましょう。

4.2 生活費の見直し2.自動車所有

自動車の所有には税金や保険料、ガソリン代などさまざまな費用がかかります。老後は使用頻度が減るケースも考えられます。

現役時代は夫婦で1台ずつ所有していた世帯も、状況に応じて1台にする、もしくは所有しないことも考えましょう。必要に応じてカーシェアリングや公共の交通機関を利用すると、それほどの不便は感じないでしょう。

4.3 生活費の見直し3.住居

賃貸住宅で子どもの独立などで部屋が空いた場合、ちょうどよい間取りの物件に住み替えましょう。賃貸住宅の家賃は生活費に占める割合が小さくないため、少しでも抑えたいものです。また、家の間取りに合わせ、必要ないモノはリサイクルに回すなどして処分しましょう。

5. 貯蓄の平均額にとらわれず自分なりの人生設計を

65歳以上の世帯の貯蓄額の増加は、コロナ禍の不安心理による自己防衛が働いたものと考えられます。

老後のために必要な金額は人それぞれです。ゆとりある生活を送りたい人や、受け取る年金が少ないために老後の生活費が大きく不足する人は多めの準備が必要です。

反対に最低限の生活でよいと考える人や、長く働こうと考える人には平均的な貯蓄は必要ないかもしれません。

ただし、老後資金準備は早くスタートするに越したことはありません。どのような老後を過ごしたいかをイメージし、現実的な目標設定から始めていきましょう。

参考資料

松田 聡子