インフレが進行して、節約のために生命保険を見直しそうと考えている人もいるでしょう。

また、公的年金に加入していれば、もし生計維持者が亡くなっても遺族年金が支給されるので、保険料の高い生命保険に入らなくていいという意見もあります。

この記事では、遺族年金を考慮して生命保険の必要性について解説します。

遺族年金について理解するとともに、生命保険の加入を検討するときに役立ててください。

【注目記事】もし夫に先立たれたら?【遺族年金】受給要件・対象者や6月支給分からの遺族基礎年金の金額を確認

1. 遺族年金の仕組み

生命保険の必要性を考える前提として、遺族年金の支給要件と支給金額について確認しましょう。

まずは、遺族年金の概要と支給要件から解説します。

1.1 遺族年金とは

遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入している人や加入していた人が死亡したときに、残された家族に支給される年金です。

一定の要件を満たせば、国民年金加入者の遺族には「遺族基礎年金」が、厚生年金加入者の遺族には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が支給されます。

1.2 遺族基礎年金の支給要件

遺族基礎年金は、死亡した人に18歳未満の子どもなど(※)がいる場合に支給されます。

要件を満たす子どもがいない場合、年金は支給されません。

※正確には18歳になった年度の3月31日までにある子どもと、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子どもが該当します。

また、死亡した人の保険料未納が多い場合も年金は支給されません。

なお、遺族基礎年金の対象となるのは、要件を満たす子どものいる配偶者、または子どもです。

1.3 遺族厚生年金の支給要件

厚生年金に加入している人が死亡した場合、保険料納付要件などを満たしていれば死亡した人に生計を維持されていた配偶者や子、父母、孫、祖父母に遺族厚生年金が支給されます。

ただし、配偶者が夫の場合や祖父母は、厚生年金加入者死亡時の年齢が55歳以上の人に限定される上、年金が支給されるのは60歳以降になります。

また、子のない30歳未満の妻は、5年間しか支給されないので注意しましょう。

実際に遺族厚生年金を受け取るのは優先順位の高い人1人です。

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

2. 遺族年金の支給金額

次に、遺族年金の支給金額について紹介します。

2.1 国民年金加入者の遺族年金

国民年金加入者が死亡した場合支給されるのは遺族基礎年金です。

出所:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」

要件を満たす子どもがいる配偶者が受給する遺族基礎年金の金額は、基本金額(配偶者67歳以下の場合は79万5000円)に子どもの加算を加えて次の通りです。

  • 子どもが3人:年額132万8600円
  • 子どもが2人:年額125万2400円
  • 子どもが1人:年額102万3700円

なお、年金額は毎年4月に改定されます。

本記事では2023年度の年金額を記載しています。

要件を満たす子どもがいる間は月額約10万円の年金が支給されますが、子どもが成長して要件から外れると年金はなくなります。

2.2 厚生年金加入者の遺族年金

厚生年金加入者が死亡した場合、前述の遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が支給されます。

遺族厚生年金の金額は、死亡した人の「老齢厚生年金の報酬比例部分」の4分の3の金額です。

老齢厚生年金の報酬比例部分は、年収や加入期間で異なります。

例えば、厚生年金加入中の平均年収が約500万円、加入期間25年の場合、約70万円です。

70万円の4分の3の約52万円が遺族厚生年金の基本金額になります。

また、遺族基礎年金を受給していた妻が要件を満たす子どもがいなくなり遺族基礎年金が受け取れなくなった場合、40歳から65歳までの間は「中高齢寡婦加算(59万6300円)」が支給されます。

子どもが1人の妻に支給される遺族年金は次の通りです(遺族厚生年金の基本金額は52万円とします)。

  • 要件を満たす子どもがいる期間:154万3700円(遺族厚生年金+遺族基礎年金)
  • 子どもが外れてから65歳までの期間:111万6300円(遺族厚生年金+中高齢寡婦加算)

妻が65歳になり自分の老齢厚生年金を受け取るようになると、遺族厚生年金の支給額は減額されます。

遺族厚生年金の基本金額が52万円で老齢厚生年金額が30万円の場合、30万円が支給停止になり、実際に受け取る遺族厚生年金額は22万円です。

3. 遺族年金の不足を補うために生命保険は必要

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遺族年金の支給金額についてモデルケースを使って紹介しましたが、遺族に十分な収入や資産がない場合、遺族年金だけで生活するのは難しいでしょう。

遺族年金だけでは不足する遺族の生活費を補うために、生命保険は必要と考えられます。

特に、一家の大黒柱が国民年金だけしか加入していない場合、要件を満たす子どもがいなくなると遺族年金は全くなくなるため、より手厚い保障を準備する必要があります。

4. 遺族年金のまとめ

公的年金に加入している人や加入していた人が死亡した場合、所定の要件を満たせば残された家族に遺族年金が支給されます。

支給されるのは、国民年金加入者の遺族に「遺族基礎年金」、厚生年金加入者の遺族に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」です。

ただし、遺族年金だけで残された家族が生活していくのは難しいでしょう。

遺族の今後の生活費と収入・資産、遺族年金の支給額を想定した上で、生命保険の加入内容を検討しましょう。

参考資料

西岡 秀泰