配当金や株主優待を目的に株式投資を行っても、日々の株価の変動は気になるものです。長期投資であっても身銭を切って投資しているので、株価が気になるのは仕方ありません。

株価の変動は、企業業績のみならず日本そして世界経済全体の流れからも大きな影響を受けます。そして株価の変動は、株式のリターンに大きな影響を与えます。

よって配当や優待を目的に株式に投資した場合でも、「株価の値上がり・値下がり」は株式のリターンとしては欠かすことができない要因です。

今回は日本郵船(9101)について、配当金や株主優待、株価もあわせた「1年前に100株を買った人の本当のリターン※」を確認します。

なお、日本郵船は2022年10月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っているため、分割後で試算を行います。

※記事中で記載の株価は全て終値となっています。
※株式分割の影響は全て遡及修正して株価を調整しています。

【注目記事】「オリエンタルランド(4661)の株」23日に年初来高値更新。分割後の株主優待や配当金・株価の推移、リスクとは

1. 日本郵船(9101)の配当金のリターンはいくらか

日本郵船の株式を1年前に買い、持ち続けたとすると、「2023年3月期の中間配当」と、「2023年3月期の期末配当」の計2回を受け取ることができます。

出所:日本郵船株式会社「2023年3月期 決算短信[日本基準](連結)」

なお、配当基準日を迎えた時点でリターンが確定したとします。

今回の検証では、以下のような想定となります。

  • 株式の取得日:2022年5月26日 
  • 株式の取得価格:3543円(取得日の終値)
  • 2023年3月期・中間配当:350円※
  • 2023年3月期・期末配当:170円※
  • 100株ベースの配当金のリターン:5万2000円

※日本郵船は2022年10月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っているため、分割後で試算

それでは次に、株主優待のリターンを計算していきます。

2. 日本郵船の株主優待のリターンはいくらか

日本郵船は決算期(3月31日)現在、100株以上保有する株主に向けて、飛鳥クルーズの優待割引券を提供しています。

株数に応じて、「決算期後の7月1日より翌年9月30日までのクルーズ」で「優待割引券1枚につき1クルーズ1名様10%の割引」が利用できます。

  • 100株以上 1500株未満:3枚
  • 1500株以上 3000株未満:6枚
  • 3000株以上:10枚

今回は試算のために2023年7月5日出港の「神戸発 夏の博多・神戸クルーズ」で客室タイプ「K:ステート」を利用する場合を考えると11万7500円になり、概算で1枚1万1750円の経済価値と想定します。

そのため、優待のリターンは3万5250円とします。

3. 日本郵船の株式投資のトータル・リターンはいくらか

以上、配当金と株主優待のリターンについて振り返ってきました。

次に、株価変動によるリターンを計算します。

  • 株式の取得日:2022年5月26日
  • 株式の取得価格:3543円(取得日の終値)
  • 取得から1年後の日付:2023年5月26日
  • 1年後の株価の終値:2929円
  • 100株ベースの株価変動によるリターン:▲6万1400円

そして最後に、トータル・リターンを計算します。

  • 配当金のリターン:5万2000円
  • 株主優待のリターン:3万5250円
  • 株価変動によるリターン:▲6万1400円
  • トータル・リターン(金額ベース):+2万5850円
  • トータル・リターン(%ベース):+7.3%

トータル・リターンは金額ベースで+2万5850円でした。

4. 日本郵船の配当金の推移を確認

日本郵船株式の年間リターンは+7.3%でした。

最後に日本郵船の配当金の推移を確認しましょう。

出所:株式会社日本郵船「配当・株主優待」

配当金・株主優待・株価とそれぞれ分解して株式のリターンを確認すると、どの要素がリターンに影響を与えているか一目瞭然となります。

配当金や株主優待を目的に長期視点で投資した場合でも、株価水準を確認して、株式全体としてのリターンも把握しておきましょう。

参考資料

石井 僚一