老後の収入の柱となるのは公的年金です。

中でも、厚生年金は国民年金に上乗せして支給されるという性質上、厚生年金加入者の年金は手厚いと考えられます。

2023年度の年金は、約3年ぶりにプラス改定となります。第1回目の支給が6月に迫る中、その受給額が気になるという方もいるでしょう。

実は、そんな厚生年金の受給額には”男女差”が存在します。

その結果「厚生年金の月額が20万円以上」という割合も、男女で大きな違いが出ているのです。

今回は、厚生年金が月額20万円以上に達する割合と、男女で異なる理由を解説します。

【注目記事】厚生年金だけで「ひと月平均20万円以上の年金収入」という羨ましい人は男女で何割か

1.「厚生年金」20万円以上受給する人の割合は?

厚生年金を月額20万円以上受給する人はどの程度いるのでしょうか。

厚生労働省年金局が公表する「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、確認していきましょう。

なお、本資料では厚生年金の月額に国民年金額が含まれる点にご留意ください。

1.1 20万円以上受給する人の割合は男性が圧倒的に多い

厚生労働省が調査した結果、2021年度末時点での男女別の階級別受給者数は以下の通りです。

【厚生年金 男女別年金月額階級別老齢年金受給者数】

出所:厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に筆者作成

男性は15万円〜20万円の層が最も多く、女性では5万円〜10万円の層が最も多くなっています。

厚生年金を月額で20万円以上受け取る人の割合は男性で22.5%、女性は1.2%となっており、女性で20万円に達する人はほとんどいないことがわかります。

2. 厚生年金額が男女で異なる理由

厚生年金の支給額は、加入期間と払った保険料の額によって決まります。

つまり、長く働いて収入が多い人の保険料は高く、その分年金が高くなるということです。

定年後も働き、保険料の払い込みを続ければ続けるほど受け取ることができる年金も多くなります。

男女雇用機会均等法は昭和60年5月に成立していますが、すぐに男女の雇用環境が同じになったとは言い難いのが現実です。

昭和60年時点では配置や昇進に対し、男女平等に扱うことは努力義務であり、業務の配分や権限についても明示されたのは平成18年の現行法からです。

そのため、男女の賃金格差は大きく、結果として厚生年金の支給額にも反映しています。

また、今の年金世代は結婚や出産で退職したり、働き方を変えざるを得なかったりする人が多かった世代ですので、働いた期間が短い人も多く、厚生年金の受給額も少なくなっています。

下のグラフは女性の管理職の割合を示しています。

【役職別女性管理職割合の推移(企業規模10人以上)】

出所:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」

現在は女性の活躍を推進する企業も多く、管理職に占める女性の比率も徐々に高まっています。

女性が長く働き、多くの収入を得るように変わっていくことが予想されるため、女性の年金受給額も増えていくでしょう。

3. 自分で掛金を拠出できるiDeCo

日本の公的年金は国民年金と厚生年金の2階建て構造となっていますが、3階建てにすることができます。

3階部分にあたるもののひとつがiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)です。

iDeCoは国民年金や厚生年金とは別に、自分で掛金を拠出して老後資金を貯める方法です。

投資信託などで運用することもできますので、拠出した以上の金額を受け取れる可能性もあります。

企業年金に加入していない会社員であれば、月額2万3000円までiDeCoに拠出することができます。

また、掛金は全額所得控除の対象となりますので、所得税の節税にもなります。

iDeCoは毎月金融機関の口座から自動的に引き落とすことになりますので、ついつい無駄使いすることなく、老後資金を貯めやすいでしょう。

ただし、iDeCoは60歳まで原則引き出すことができませんので、教育資金や住宅購入費用にあてることができません。

自分のライフプランもしっかり見据えて掛け金を決めるようにしましょう。

4. 女性の活躍により年金の男女格差は縮まっていく

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少しずつではありますが、女性の活躍の場は徐々に広がっており、管理職や役員になる女性の割合も増えています。

出産や育児に対する国の支援も手厚くなっており、今後は出産後も活躍する女性が増えていくでしょう。

女性の活躍の機会が増えることで、厚生年金の受給額も男女差は縮まっていく可能性が高いといえます。

参考資料

太田 彩子