コロナ後の経済活動回復やウクライナ情勢による資源高などにより消費者物価が高騰し、老後生活への不安が高まっています。
6月には2023年度最初の年金支給が控えていますが、3年ぶりの引き上げになったものの、物価上昇率には追いついていないのが現状です。
定年退職を迎えて年金生活になった場合、その収支が気になる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、65歳・リタイア世帯の夫婦の老後生活について解説します。
最新の老後の生活費や収入も紹介しますので、老後の家計を考えるときに役立ててください。
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1. 65歳・リタイア世帯の平均的な収支は毎月2万2000円の赤字
まず最初に、65歳・リタイア世帯の平均的な生活費や収入を紹介します。
1.1 65歳・リタイア世帯の平均的な収入は約24万6000円
総務省の「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」によると、65歳以上・夫婦のみの無職世帯(65歳・リタイア世帯)の毎月の収入は、平均約24万6000円です。
その大半は、公的年金を中心とした社会保障給付が占めます。
1.2 65歳・リタイア世帯の平均的な生活費は約26万8000円
前述の調査によると、65歳・リタイア世帯の毎月の生活費は約26万8000円です。
1.3 毎月の赤字2万2000円を補填するのに必要な老後資金は約800万円
65歳・リタイア世帯の平均的な収入と支出より、毎月の赤字は2万2000円となります。
65歳以降30年間、毎月家計収支が2万2000円の赤字だと仮定すると、赤字を補填するのに必要な老後資金は、約800万円(≒2万2000円×12か月×30年)です。
家のリフォームや車の買い替え、病気や要介護になったときの予備資金などを考えると、老後資金は800万円以上必要です。
2. 65歳・リタイア世帯の平均的な生活レベル
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2022年度)」によると、夫婦2人の老後生活の必要額に対する意識は次の通りです。
- 老後の最低日常生活費:平均23万2000円
- ゆとりある老後生活費:平均37万9000円
65歳・リタイア世帯の実際の生活費は平均26万8000円であり、「ゆとりある老後生活」には程遠い状況です。
あまりぜいたくをせずに、どちらかというと「最低日常生活費」に近い金額で生活している様子がうかがえます。
同調査では、老後のゆとり資金の使途として、次が挙げられています。
- 旅行やレジャー(60.6%)
- 日常生活費の充実(48.6%)
- 趣味や教養(48.3%)
- 身内との付き合い(46.2%)
これらの費用を抑えながら生活しているリタイア世帯も多いと考えられます。
3. 年金額は加入する年金制度で大きく異なるので要注意
「65歳・リタイア世帯の平均的な収入は約24万6000円」と紹介しましたが、実際の年金額は加入する年金制度で大きく異なるため、注意が必要です。
会社員などで長年厚生年金に加入していた人は、比較的年金額が多くなります。
しかし、自営業や専業主婦など国民年金だけの人の年金額は、あまり多くはありません。
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2021年度末の厚生年金受給権者の平均月額は14万3965円に対し、国民年金加入者は平均5万6368円です。
また、65歳以上に限定すると、男性は月額16万9006円、女性は10万9261円と、男女で6万円近い差があります。
平均値で計算すると、夫婦とも厚生年金に加入している世帯の年金額は約28万円であるのに対し、夫婦とも国民年金の場合は約13万円です。
最低日常生活費(23万2000円)に対して、10万円近く不足することになります。
4. リタイア後の生活を考える
65歳・リタイア世帯の平均的な収入は約24万6000円、生活費は約26万8000円です。
収支は毎月2万2000円の赤字となり、老後生活を30年と仮定すると赤字を補填するのに必要な老後資金は約800万円になります。
ただし、平均的な収入(年金額)は加入する制度で大きく異なります。
特に、国民年金だけの人または厚生年金加入期間の短い人は、年金だけで生活費の多くを賄うことは難しいことに注意しましょう。
参考資料
- 総務省「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
- 厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
西岡 秀泰