2023年5月12日に発表された、HENNGE株式会社2023年9月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:HENNGE株式会社 代表取締役社長CEO兼CTO 小椋一宏 氏
HENNGE株式会社 取締役副社長 天野治夫 氏
HENNGE株式会社 執行役員CFO 小林遼 氏
2023年9月期第2四半期決算説明
小椋一宏氏(以下、小椋):みなさま、こんにちは。HENNGE株式会社代表取締役社長の小椋です。当社グループの決算説明動画をご視聴いただき、ありがとうございます。
本日は、取締役副社長の天野より、2023年9月期第2四半期の業績と業績見通しに対する進捗をご説明した後、私から成長戦略についてのご説明と、当四半期の所感について触れさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
連結業績サマリー (対前年同期比、6か月累計比較)
天野治夫氏:天野治夫です。まずは、2023年9月期第2四半期の連結業績についてご説明します。連結業績のサマリーは、スライドのとおりです。第2四半期は、2022年11月11日開示の通期業績予想に対して、おおむね順調に推移しています。
売上高の推移
連結売上高の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。HENNGE One事業の売上高は、すべてリカーリングの性質による売上高であり、これまでと変わらず四半期ごとに増加する傾向となっており、順調に推移しています。
売上高 (対前年同期比、6か月累計比較)
連結売上高の前年同期比は、スライドのとおりです。HENNGE One事業の売上高は、前年同期比で堅調に推移しています。
売上総利益の推移
売上総利益および売上総利益率の四半期期ごとの推移は、スライドのとおりです。
売上総利益 (対前年同期比、6か月累計比較)
売上総利益および売上総利益率の前年同期比は、スライドのとおりです。開発人員の増加や為替変動などによるHENNGE Oneのインフラコスト増の影響などにより、売上総利益率が若干減少しましたが、売上総利益率は引き続き高い水準を維持しています。
営業費用の構造 (対前年同期比、6か月累計比較)
営業費用の構造の前年同期比は、スライドのとおりです。開発人員の増加や為替変動などの影響によるHENNGE Oneのインフラコスト増などにより、売上原価が増加しました。人件費は、人員増に加え、2022年7月の社内制度の見直しの影響などにより、増加しました。
広告宣伝費は、大手企業、販売パートナー、既存顧客、新規顧客などをターゲットにした「HENNGE NOW!」を始めとする多様なイベントやセミナーを実施した結果、増加しました。その他販管費は、積極的な採用活動の実施や、人員増に伴う社内システムの利用料の増加などにより、増加しました。
営業費用の構造 (対前四半期比)
営業費用の構造の前四半期比は、スライドのとおりです。人件費等は人員の増強などにより増加しました。広告宣伝費は、当四半期においても多様なイベントやセミナーを開催するなど積極的な活動を実施しましたが、前四半期とは手法が異なることから減少しました。
売上高と営業費用の推移
売上高と営業費用の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。
従業員(アルバイトを含まず)の構成
2023年9月期第2四半期末時点での従業員の構成と人数は、スライドのとおりです。
従業員(アルバイトを含まず)の推移と構成
従業員数の過年度からの推移は、スライドのとおりです。今期目標は純増45名以上ですが、当四半期末時点では全社で19名の純増となりました。引き続き、顧客獲得体制の強化のため、特にIT営業経験者を重点的に増強できるよう、人材獲得力の向上に資する各種施策を実施していきます。
キャッシュ・フローの状況 (対前年同期比、6か月累計比較)
キャッシュ・フローの状況です。前期と同様、HENNGE Oneサービスの提供に利用しているIaaS関連費用の前払いや、積極的な広告宣伝活動の実施などにより、営業キャッシュ・フローは前年同期比で減少しました。
財務キャッシュ・フローは、株式報酬制度の割当原資として自己株式を取得したことにより、前年同期比で減少しました。現金および現金同等物の期末残高は、前年同期比で堅調に伸びています。
事業トピックス
事業の進捗についてご説明します。事業トピックスは、スライドのとおりです。
各種イベント・セミナーの開催
当四半期は、期初計画に基づき、大手企業、販売パートナー、既存顧客、新規顧客などのさまざまなアプローチ先をターゲットにした、多様なイベントやセミナーを実施しました。
HENNGE One KPIのハイライト (対前期末比、6か月進捗)
KPIの進捗についてご説明します。前期末からのHENNGE Oneの各KPIの進捗は、スライドのとおりです。
HENNGE One KPI (対前年同期末比)
HENNGE OneのKPIの前年同期比は、スライドのとおりです。
HENNGE One平均月次解約率の推移
平均月次解約率は、スライドのとおりです。第1四半期以降、従来の解約理由である企業の統廃合やクラウド移行の戦略自体の見直しなどに加え、既存顧客の契約更新時における社内利用サービスの見直しをきっかけとする解約が若干発生しています。
今後の動向を注視していきますが、現時点では引き続き非常に低い水準を維持していると考えており、理論上の平均契約年数は約30年になっています。
HENNGE One契約企業数と契約ユーザ数の推移
契約企業数と契約ユーザ数の四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。引き続き、営業体制の強化に課題が残っていますが、ここ数年は販売パートナーとの連携強化が進んだことにより、比較的中小規模の契約を安定して獲得しています。
その結果、新規契約企業数は前四半期に続き順調に増加しました。契約ユーザ数においては、大きめの企業との契約を獲得したことや、前四半期ほどの解約が発生しなかったことなどにより、増加しました。
HENNGE One ARRとARPUの推移
ARRとARPUの四半期ごとの推移は、スライドのとおりです。当四半期のARPUは、2021年10月以降、新規顧客に対して新プランで販売していることや、第2四半期末時点で約2,000社の既存顧客のうち5割強が新プランへ移行したことなど、複合的な要因により上昇しています。契約企業数とARPUが順調に増加したことから、ARRは大幅な増加で着地しました。
企業数ベースでの既存顧客の新プラン移行状況は、2022年9月期末時点で3割弱、2023年9月期第1四半期末時点で約4割、2023年9月期第2四半期末時点で5割強と推移しています。
移行したお客さまの規模は大小さまざまですが、日本における比較的規模の大きい企業の決算は3月が多くなっています。HENNGE Oneは決算期に合わせてご契約いただくことが多く、季節性は高くないものの、3月、4月は契約更新が多いシーズンとなっています。これらのことが当四半期のARRの増加要因の1つとなっています。
なお、既存顧客の新プランへの移行は順調に進捗しており、引き続きお客さまに新しいプランの付加価値をご理解いただき、スムーズに移行していただくための活動を進めています。
2023年9月期の方針
2023年9月期の通期業績見通しに対する進捗についてご説明します。2023年9月期の方針は、スライドのとおりです。HENNGE One事業は順調に推移しており、マーケティング活動も期初の計画に基づき、さまざまな広告宣伝やイベント・セミナーなどを開催しています。
人員計画については引き続き、新規顧客獲得体制の強化が課題となっています。今期は特にIT営業経験者の採用に重点を置いていますが、それを後押しすべく、2023年4月から社内制度を一部変更し、営業職の給与水準の見直しを行っています。
今後も人材獲得力向上による体制強化と継続的なマーケティング活動により、HENNGE Oneの中期的なARR成長の加速を目指します。
連結業績見通し (通期)
連結業績見通しについては、2022年11月11日に発表した通期業績予想から変更はなく、スライドのとおりです。
売上高の進捗
事業別売上高の過年度からの推移と今期見通しに対する第2四半期の進捗は、スライドのとおりです。第2四半期はおおむね順調に進捗しています。
営業費用(原価+販管費)の進捗
広告宣伝費と広告宣伝費を除いた営業費用の過年度からの推移と、今期見通しに対する第2四半期の進捗は、スライドのとおりです。
Vision
小椋:当社の成長戦略についてご説明します。
HENNGEの経営理念は「テクノロジーの解放」です。私たちはテクノロジーが大好きで、テクノロジーが世の中を良くしていくと強く信じています。この力をできるだけ多くのお客さまに届けることによって、世の中を少しでも良い方向に動かしたいというのが私たちの思いです。
HENNGEは創業以来25年以上、この「テクノロジーの解放」を理念として掲げており、さまざまな分野、さまざまな方法でテクノロジーを解放してきました。その結果、SaaSはテクノロジー解放のための最もフェアで洗練された効率的な手段であるという考えに至っています。
そのため、私たち自身もSaaSを提供し、お客さまのSaaS活用を通した変革を応援していきたいと思っています。
LTV最大化
このようなテクノロジーの解放を通して、私たちがお客さまに届けているテクノロジーの総量、理念の実現の証左となるのが、LTV(ライフタイムバリュー)、すなわち私たちが保有している契約の総価値です。私たちの成長戦略では、このLTVの最大化を目指しています。
現在、平均契約年数「Y」と売上総利益率「r」はすでに高い水準にあります。したがって、LTVの最大化にはARRの最大化が必要です。そのため私たちは、直近の営業利益の水準にこだわりすぎることなく、将来への投資を積極的に行い、ARRを積み増していきたいと考えています。
ARR最大化
ARRは、さらに3つの要素に分解できると考えています。契約企業数の「N」、平均ユーザ数の「n」、ユーザあたり単価の「ARPU」です。
成長戦略の進捗 (HENNGE One)
HENNGE Oneにおける3つのKPIの実際の推移は、スライドの表のとおりです。HENNGE Oneを主力とする当社グループのビジネスは、基本的にサブスクリプションモデルで、当期中に獲得した契約は解約されない限り積み上がっていき、翌期以降の売上の基盤となります。ご覧のとおり、HENNGE OneのARRは順調かつ安定的に積み上がってきています。
ARRの安定的な成長が見られる一方で、分母の拡大による成長率の鈍化が課題となっていました。しかし、2020年以降、COVID-19によって企業の行動様式が大きく変化しており、これからSaaSやクラウドの利用が拡大していくと確信しています。
この機会を捉えるべく、ARRの成長率の変曲点を作るための3ステップを、今まさに実施中です。
2021年9月期に実施した1ステップ目では、全国のディシジョンメーカー、販売パートナーなど、より幅広い層にHENNGE Oneの強みや当社のブランドを認知してもらうため、積極的なマーケティング費用の投下を行いました。また、新機能をリリースし、新プランも発表しました。
2022年9月期の2ステップ目では、2021年度に発表した新機能と、それに基づくHENNGE Oneの新プランを、主に新規顧客向けに展開しました。入退社数のバランスが悪化した影響で人員不足の状況が続いたことにより、ARR成長率は20パーセントに若干届かなかったものの、新規のお客さまのみならず、一部の既存のお客さまにも新プランを導入いただくことができ、「N」「ARPU」ともに堅調に増加させることができました。
3ステップ目にあたる2023年9月期では、この新機能と新プランを既存顧客にも展開しています。これら3つのステップを通して、「N」および「ARPU」の両方に作用する成長サイクルを作っていきたいと考えています。
続いて、当四半期の所感と今後の課題についてお話しします。当四半期は、脱PPAPなど、最近の需要にマッチしたソリューションをIDaaSと同時に提供できるという当社ならではの強みを活かした営業マーケティング活動を展開しました。その結果、契約獲得が進んだことに加え、大きめの企業との契約や既存顧客の新プラン移行が順調に進捗し、ARRは大幅な増加で着地しました。
契約企業数の伸びからもわかるように、マーケットは裾野が広がっていると実感しています。課題となっている新規顧客獲得体制を充足することで、このトレンドをしっかりと継続していきたいと考えています。
そして、HENNGE Oneの価値をしっかりお客さまに伝え、理解していただくことにより、当初の計画どおり、今期中に既存顧客の新プランへの移行完了を推し進めます。同時に、引き続き積極的なマーケティング活動と人材獲得力強化による体制強化を行い、中期的なARR成長を加速していきたいと考えています。
2023年9月期以降の成長戦略
ご説明したような活動を通して、CAGRが20パーセント台中盤となる中期的なARR成長を実現するため、まずはHENNGE OneのARR100億円以上の水準を目指します。
今後も、認知度や接触可能な潜在顧客の数を向上させつつ、営業体制や販売パートナーとの連携強化や、新機能の開発とリリースを行い、HENNGE Oneの付加価値を上げていくサイクルを継続的に行っていきます。それにより、その先も成長を継続できるモデルを確立したいと考えています。
お客様の変革を応援するHENNGE Oneファミリー
HENNGE Oneは長い間、5つの主要機能と1つのオプションからなるIDaaSとして展開してきました。その後、2021年10月には3つの新機能を、2022年4月には「HENNGE Connect」を追加するなど、継続的な新機能追加による価値の向上を実現しています。
加えて、2022年11月からは新サービス「tadrill」の提供も開始しました。今後も、HENNGE Oneの新機能のみならず、お客さまのニーズに合った新サービスも積極的に開発・展開していく予定です。加えて、お客さまに届けるテクノロジーの総量を最大化するために、SaaS活用の分野で必要となる機能をどんどん追加していき、SaaS活用によるお客さまの生産性向上を強力にバックアップしていきます。
SaaSプラットフォームとしてのHENNGE One
HENNGE Oneは、お客さまがSaaSを活用すればするほど価値が高まる性質を持つIDaaSを中核としたプラットフォームです。今後も私たちは、日本全国の企業でクラウドサービスの利用が拡大する流れを後押しするとともに、そのような流れの中でSaaS各社との連携を深めながら、SaaSプラットフォームとしての成長を図っていきたいと考えています。
以上、当社の2023年9月期第2四半期の決算についてご説明しました。本日はお忙しい中、当社の決算説明動画をご視聴くださいまして、誠にありがとうございました。
質疑応答:既存顧客の新プラン移行について
司会者:先ほどもご説明がありましたが、既存のお客さまの新プラン移行が進んでいることについて、あらためて所感をお聞かせいただけますか?
小林遼氏(以下、小林):先ほどの動画の中でもお伝えしているとおり、新プラン移行に関してはおおむねポジティブに捉えているところです。第1四半期で既存顧客の契約更新時における社内利用サービスの見直しを起因した解約により若干上がった解約率は、第2四半期ではほぼ横ばいとなり、ユーザ数も5万人ほど増えていますので、順調に推移しているのではないかと思っています。
足元の状況としては、前回の説明会で3月から4月にかけて多くのお客さまが更新時期を迎えるとお話ししていましたが、それを乗り切り大きな山は越えたのではないかと思います。加えて、大きなサプライズもないと実感していますので、現状は良好な状況で推移していると考えています。
質疑応答:数年後のARPUについて
司会者:「ARPUが順調に伸びていますが、数年後はどの程度をイメージしていますか? 新プランの移行が一段落した後は伸びが鈍化すると考えてよろしいでしょうか?」というご質問です。
小林:現在順調に伸びているARPUについて、数年後はどうなっているかというご質問かと思います。
数年後の目線での数値はまだ出していませんが、以前に社長の小椋がお伝えしたとおり、例えば将来的には1万円まではARPUを上げられる余地があると思っています。しかし、そこに向けて動くためには、しっかりと新機能を追加していき、我々の付加価値をお客さまに感じていただくことが重要になってきます。そちらとの兼ね合いも踏まえて、どこまで伸ばせるかを今後実証していければと思っています。
新プランの移行が一段落したタイミングで伸びが鈍化するのではないか、とのご質問については、そのようなことが起こらないように、しっかりと新機能を開発し、既存のお客さまや新しいお客さまに対して訴求できる体制を作ることで、さらなる成長を実現しなければならないと考えています。
質疑応答:サービスの将来像について
質問者:非常に堅調な決算で、ARPUについては長期的に1万円という野心的な水準もうかがうことができ、とても頼もしいと感じました。
スライド35ページで、これまで付加されてきたサービスの歴史等がお見受けできます。いろいろなサービスが単品で追加される中で、今後5年後、10年後の御社のサービスは、シナジーが効くとイメージしていますか?
他社の最近の事例では、フィルタリングシステムからCASBに展開し、5年後、10年後にはIAM等でSASEの領域にまで展開していくかもしれない、つまりトータルセキュリティをサービスできるかもしれないという期待を抱く展望をうかがいました。御社のトータルソリューションを揃えたときの姿について、何かイメージやコメントをいただければと思います。
小林:将来像について、我々は今IDaaSやEメールのセキュリティというサービスを提供していますが、決してセキュリティ会社になりたいわけではなく、みなさまがクラウドに移行していく際の障害をしっかりと取り除けるサービスを提供することに軸を置いて事業を行っています。
そのため、今はIDaaSが中心となっていますが、その周辺領域をしっかりと取り込んでいき、次なる付加価値を提供できるようにがんばっていければと思っています。イメージを湧かせる言葉でしかありませんが、35ページのスライド右側に記載されている領域は、我々が目指していくべきところだと考えています。
具体的なロードマップ等があれば、よりご説明しやすかったかもしれませんが、現状はこの程度のご説明に留めたいと思います。
質疑応答:営業外収益や最終損益の動向について
司会者:「営業外収益や最終損益の動向についてご説明ください」というご質問です。
小林:冒頭でご説明したとおり、経常利益や最終損益については、2022年11月にお出しした業績予想から特に変更するところはないと考えていますので、期初のガイダンスどおりに着地すると捉えていただければと思います。
特別損益はその都度のタイミングで判断しなければならないため何とも言いがたいところではありますが、営業外損益も大きく出るような状況ではないと思っていますので、短信や四半期報告書で開示している情報と併せてご確認いただければと思います。
質疑応答:今期計画における新プランの移行について
司会者:「新プランの移行は、今期の計画にどの程度織り込んでいますか?」というご質問です。
小林:新プランの移行を今期の計画にどの程度織り込んでいるかについて、従前からお伝えしているとおり、既存のお客さまの新プラン移行は、今年度末である2023年9月までに終わらせることを目標にしています。基本的には、ほぼ全部を織り込んで、今の業績予想を作成しています。
※当社では決算でご質問いただくことが多いのではないかという想定質問「2023年9月期第2四半期決算 Q&A」をIRサイトで開示していますので、そちらも併せてご覧いただければ幸いです。