過去の同月に公開された記事をプレイバック!もう一度読み直したい、「編集部セレクション」をお届けします。 (初公開日:2021年5月21日) |
「老後までの目標貯金額」って、決めていらっしゃいますか?
若い世代のみなさんにはピンと来ないかもしれませんね。
2019年、金融庁のレポートをきっかけに話題となった、いわゆる「老後2000万円問題」。ざっくりまとめると、「標準的な高齢夫婦世帯の老後の生活には、公的年金以外に2000万円必要となる」という内容でした。
これをきっかけに「とりあえず2000万円」と目標額を定めたご家庭もいらっしゃるはずです。
では実際に、老後のスタート地点ともいえる60代の時点で、この2000万円という金額の貯蓄がある世帯はどのくらい存在するのでしょうか。
今回は、60代の貯蓄事情を眺めつつ、みんなが気になる「老後資金の準備」についても考えていきます。
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1. 還暦60代の貯蓄事情
さっそく、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年(2020年))」をもとに、60代・二人以上世帯の貯蓄額について見ていきます。
金融資産保有額60代の二人以上の世帯(含:金融資産保有世帯)の貯蓄データは下記のとおりです。
60代・二人以上世帯「金融資産保有額」
(含:金融資産非保有世帯)
- 平均・・・1745万円
- 中央値(※)・・・875万円
では、「どのくらいの貯蓄」を、「どの程度の割合の世帯」が保有しているのでしょうか。その分布を確認していきます。そして、60代で貯蓄2000万円を持っている世帯は何割存在するのでしょうか。
60代・二人以上世帯「金融資産保有額の分布」
(含:金融資産非保有世帯)
金融資産非保有…18.3%
100万未満…3.5%
100~200万未満…4.0%
200~300万未満…4.0%
300~400万未満…3.3%
400~500万未満…4.0%
500~700万未満…5.3%
700~1000万未満…7.5%
1000~1500万未満…7.5%
1500~2000万未満…6.3%
2000~3000万未満…13.3%
3000万以上…19.6%
無回答…3.3%
60代の金融資産保有額の平均は、2000万円には届かないものの、1000万円を大きく超えるという結果になりました。一方、中央値(※)をみると1000万円に手が届いていない状態ですね。
また、2000万円以上を保有する世帯は全体の32.9%です。3割以上の世帯が、あの「2000万円」のラインを超えている、ということになります。
定年退職金などの大型収入が発生する人が多い年代とはいえ、「自分が60代になったら、これくらい貯まっているかなぁ…」と不安に感じた方もいらっしゃるでしょう。
平均と中央値(※)
平均とは、一部の極端な数値(今回でいうと「お金持ち層」)引っ張られる傾向があります。一方、中央値は数値を順に並べて真ん中にものを指しますの。よって、平均よりも中央値をのほうが、より実勢に近いでしょう。
次では、60代世帯がどのように資産を保有・管理しているのか、「貯蓄の内訳」を見ていきます。
2. 60代世帯「貯蓄の中身」
ここから60代・二人以上世帯の、種類別金融資産保有額を見ていきましょう。「貯蓄の内訳」「貯蓄の中身」といったところでしょうか。
引き続き、同調査結果から抜粋していきます。
60代・二人以上世帯「種類別金融商品保有額」
(含:金融資産非保有世帯)
合計:1745万円
《内訳》
預貯金(うち運用または将来の備え):959万円
(うち定期性預貯金:585万円)金銭信託:5万円
生命保険:286万円
損害保険:39万円
個人年金保険:134万円
債券:45万円
株式:144万円
投資信託:96万円
財形貯蓄:27万円
その他金融商品:11万円
上記の内訳をみてみると、預貯金で保有している割合が約55%を占めています。とはいえ、債券や株式、投資信託など運用性のある商品に、少しずつ分散されていますね。
軸となる「預貯金」を切り崩しつつ、運用性のある金融商品でお金を育ていくスタイルです。
今回は詳しく触れませんが、この内訳は「金融資産を持たない世帯」を含めた結果ですが、「金融資産を持つ世帯のみ」に絞ると、運用性のある金融商品の保有割合が上がることが分かっています。
老後のマネープランは、「貯蓄の切り崩し」と「資産運用」をいかに上手に組み合わせていけるかがカギを握りそうですね。
リタイヤ後も資産運用を継続するという発想が、今の資産を長生きさせるための一つのポイントとなりそうです。
3. 老後に向けた「資産形成」のスタイル
前項では、金融資産のバランス配分のたいせつさについてお伝えしました。
「人生100年時代」が近づく今。これからは老後もお金を「貯めて・増やす」時代かもしれませんね。現役世代のみなさんが老後資金を準備する際も、ぜひ、この「バランス配分」を意識してみてください。
超低金利政策が続いています。銀行などに漠然とお金を預けたままでは、なかなかお金は増やせない、というのが実情です。
タンス預金など、まったく金利が付かない前提で、2000万円ものお金を貯めるとすれば、毎月約5万5000円の積立を、30年ほど続けていく必要があります。
住宅ローンや教育費が家計を圧迫する時期や、事情があって働けなくなったり、思うように給与上がらないケースもあるでしょう。
30年間毎月欠かさずに5万円を貯め続けることが難しい、という方がいらしても不思議ではありません。
そこで、「資産運用」を視野に入れることをお勧めします。国の税制優遇制度であるiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどの活用を検討されてもよいでしょう。
4. これから「資産運用」デビューされるみなさんへ
さいごに、これから資産運用デビューをされるみなさんにお伝えしておきたいことがあります。
それは、「目標を、はっきりと定めること」です。つまり、何のためにお金を育てるのか、というポリシーが大切なのです。
資産運用は預貯金とは異なり、元本が保証されません。相場が上がったり下がったりすることで、ときには元本割れも起こるでしょう。
目標がぼんやりしていると、運用成績がふるわないときに「リスクが怖い」と、途中で運用をやめてしまいがちです。
運用期間が長ければ長いほど、リスクは軽減され、リターンは安定してきます。まとまったお金を作るには、コツコツと積立を続けていく根気が必要です。
「自分は何のためにお金を増やしたいのか」
この目的意識が、資産形成に対するモチベーションにつながります。資産運用を長く続けていく「ツボ」は、ここにあるのかもしれませんね。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
参考資料
鶴田 綾