2023年5月10日に発表された、株式会社朝日ネット2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社朝日ネット 代表取締役 社長執行役員 土方次郎 氏
目次
土方次郎氏:株式会社朝日ネット代表取締役社長執行役員の土方でございます。2023年3月期の決算についてご説明します。こちらが本日の内容です。
売上高の推移
売上高についてです。2023年3月期の売上高は121億7,000万円となりました。前年同期比5.1パーセント増、5億9,300万円の増収です。2013年3月期から11年連続で伸びており、過去最高の売上高を更新しました。主な要因はISP「ASAHIネット」のインターネット接続契約数の増加、VNE「v6 コネクト」の取り扱い通信量の増加です。
売上高 前期比差異
2022年3月期から2023年3月期にかけての売上高の伸びについて、主な要因をご説明します。
まずは、「v6 コネクト」です。売上高は3億5,200万円の増収となりました。提携事業者との取り扱い通信量が増加したことが増収の要因です。2023年3月期の提携事業者数は1社増加し累計で12社となりました。
続いて、光コラボレーションモデルを活用した「AsahiNet 光」と「ASAHIネット ドコモ光」の売上高(光コラボ)は2億400万円の増収となりました。「AsahiNet 光」は法人顧客からの受注が期初から続いたことにより増収を牽引しました。
NTT東西と販売チャネルを協業し、マンションオーナーおよび居住者へインターネット接続サービスを提供する「マンション全戸加入プラン」は4,800万円の増収となりました。モバイル接続サービスのLTE・WiMAXは4,300万円の増収です。
教育支援サービス「manaba」は200万円の増収となりました。
ASDLサービスは7,500万円の減収となりました。前事業年度にサービス終了した「新超割ADSL」に加え、NTT東西のフレッツADSLの提供エリアが2023年1月末に縮小したことに伴う退会が影響しました。
他に含まれるサービスのうち、売上が減少している主なサービスはダイヤルアップ接続サービスなどのナローバンド接続サービスです。
営業利益の推移
営業利益は18億4,100万円、営業利益率は15.1パーセントとなりました。営業利益は前年同期比0.4パーセント増加し、700万円の増益となりました。
スライドに四半期別の営業利益推移をお示しします。2023年3月期第2四半期は一時的に発生する売上原価、販売費および一般管理費を計上したことにより営業利益額が減少しておりましたが、第3四半期以降の営業利益は計画どおり増加しております。
営業利益 前期比差異
2022年3月期から2023年3月期にかけての営業利益の伸びに関して、主な要因をご説明します。
先ほどご説明したとおり売上高の増加は5億9,300万円となります。売上原価は6億2,800万円の増加となりました。販売費および一般管理費は4,200万円の減少となりました。
売上原価の主な増加要因についてです。1点目は「AsahiNet 光」や「WiMAX+5G」などのアクセス回線を含む新規契約数の増加に伴う回線仕入です。今後もインターネット接続サービスの契約数が増えることにより回線仕入が増加する見込みです。
2点目はサービス品質を維持するための通信費および減価償却費の増加です。前事業年度に設備投資を行ったIPv6のネットワーク追加契約が要因です。また2023年3月期はインターネット利用が拡大したことにより1回線当たりダウンロードトラフィックが増加していることへの対処として通信品質を維持するための費用を投下しました。
3点目は2022年8月に新たにメールサービスをリリースしたことによりソフトウェア費と減価償却費が増加しております。
販売費および一般管理費は4,200万円の減少となります。ISP「ASAHIネット」の個人または法人会員を獲得するための販売促進費や広告宣伝費の減少が要因です。
EBITDAの推移
EBITDAとEBITDAマージンの推移についてです。2023年3月期はEBITDAが27億3,700万円、EBITDAマージンは22.5パーセントとなりました。設備投資額は10億5,500万円となりました。2023年3月期第2四半期にリリースしたメールサービスや通信品質を維持するための設備投資が主に増加しております。
従来より朝日ネットが対処すべき課題として2つの項目をお示ししております。1つ目は増加する費用を抑え、利益が出せる構造を維持すること、2つ目はお客さまに満足いただける品質のサービスを今後も提供し続けることです。
2024年3月期も引き続きネットワーク関連の設備投資や今後の事業拡大に向けた基幹システムの開発を行う予定でおります。
経営成績
2023年3月期の損益の状況です。売上高、営業利益は先ほどご説明したとおりです。経常利益は18億4,600万円となりました。当期純利益は12億8,500万円となり、その結果、1株当たり当期純利益は45円92銭となりました。
2023年3月期は特別利益として投資有価証券売却益4億7,400万円を計上しております。特別損失としてNTT東西に支払う通信設備除却費用負担金6,600万円、固定資産除却損2,200万円、減損損失3億7,200万円を計上しております。
減損損失については、契約管理や他キャリアとのデータ連携など基幹システムの更改を進めておりましたが、当期末時点で一部の計画の再策定が必要であることが判明しました。すでに計上済の一部の資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき将来の回収可能性を検討した結果、減損損失として3億7,200万円を計上することとなりました。
財政状態
2023年3月期の財政状況です。資産は前期末比7億1,900万円増の136億6,000万円、負債は前期末比3,900万円増の16億9,900万円、純資産は前期末比6億8,000万円増の119億6,100万円となりました。自己資本比率は87.6パーセントとなりました。
株主還元
2023年3月期の配当です。当社は株主に対する利益還元を重要な経営課題の1つとして認識しており、将来の事業展開と経営体質の強化のために内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続していくことを基本方針としております。
配当性向は現時点では40パーセントから50パーセント程度を適切な水準として考えています。当初の計画では、配当金は中間配当金11円、期末配当金11円、通期で22円としておりましたが、株主還元方針および業績の状況などを総合的に勘案し、今期は期末配当金を11円50銭とします。通期で22円50銭、配当性向は49.0パーセントとなる予定です。
また本日付けで自己株式の買付けに関するリリースを行いました。取得する株式の総数は33万株、株式の取得価額の総額は1億9,503万円を予定しております。
朝日ネットの事業
続いて、事業ごとに分解してご説明します。インターネット接続サービスとして、ISP「ASAHIネット」、VNE「v6コネクト」の売上高を開示しております。インターネット関連サービスとして、教育支援サービス「manaba」、「その他」の売上高を開示しております。
こちらの内容に沿ってご説明させていただきます。
インターネット接続サービスの構造
はじめにインターネット接続サービスの状況についてご説明します。
インターネット接続サービスの構造はスライド左上の①が当社がISPとして自社サービス「ASAHIネット」を提供している部分、スライド右上の②が当社がVNEとして電気通信事業者へIPv6接続サービス「v6 コネクト」を提供する部分に分かれています。
インターネット接続サービス 売上高
2023年3月期のインターネット接続サービスの売上高はご覧のとおりです。ISP「ASAHIネット」は88億6,500万円、VNE「v6 コネクト」は17億3,500万円となりました。
各サービスにおける売上高の前年同期比は、ISP「ASAHIネット」は2.8パーセント増加し、2億4,400万円の増収となりました。VNE「v6 コネクト」は25.5パーセント増加し、3億5,200万円の増収となりました。
ISP「ASAHIネット」インターネット接続契約数の推移
ISP「ASAHIネット」の事業の状況についてご説明します。「AsahiNet 光」などのFTTH接続サービスの契約数は2023年3月末に前年同期末比7,000ID増の45万5,000千IDとなりました。ADSL接続サービスの契約数は6,000ID減の3,000千IDとなりました。モバイル接続サービスの契約数は4万7,000IDとなりました。
インターネット接続サービス契約数の退会率は0.75パーセントとなりました。退会率は引き続き低い水準を維持しています。
2023年3月期は売上高でご説明した「AsahiNet 光」とNTT東西と提携した「マンション全戸加入プラン」の受注が増加しており、FTTH接続サービスの契約数を牽引しております。ADSL接続サービスはフレッツADSLが2023年1月に提供エリアを縮小したことにより契約数が減少しております。モバイル接続サービスはWiMAXおよびLTEに固定IPを組み合わせて利用する法人の需要が増加しております。
VNE「v6 コネクト」売上高と提携事業者数の推移
続いてVNE「v6 コネクト」についてご説明します。2023年3月期の「v6 コネクト」の売上高は17億3,500万円、前年同期比25.5パーセントの増収となりました。提携事業者数は1社増加し累計で12社となりました。
「v6 コネクト」は、VNO事業者(電気通信事業者)に対して、NTT東西が提供するフレッツ光を使ったIPoE方式によるIPv6インターネット接続を提供するサービスです。当社はVNO事業者が利用したトラフィックに応じた従量課金額を売上として計上しています。
スライドの棒グラフでは、四半期別の売上高の推移をお示ししております。売上高の増収要因は主に2点から構成されています。1点目は提携事業者が取り扱うフレッツ光の回線数増加です。2点目は1回線当たりのトラフィックの増加です。2023年3月期の売上高は1回線当たりのトラフィック増加が増収に大きく寄与しています。
インターネット関連サービス 売上高
続いて、インターネット関連サービスの状況についてご説明します。インターネット関連サービスは教育支援サービス「manaba」と、メールやセキュリティなどの関連サービスが含まれます。
2023年3月期のインターネット関連サービスの売上高はご覧のとおりです。教育支援サービス「manaba」は、前年同期比0.4パーセント増の7億6,600万円となりました。「その他」は0.8パーセント減の8億300万円です。
教育支援サービス「manaba」契約ID数の状況
教育支援サービス「manaba」についてご説明します。「manaba」は教育機関、主に大学に対して当社が開発、販売、サポートを行っているクラウド型のアプリケーションサービスです。
「manaba」の2023年3月末の契約ID数は、前年同期末比7,000ID減の81万8,000IDとなりました。当事業年度は東京情報デザイン専門職大学などが利用開始しましたが、2023年3月期の第1四半期に2大学が契約終了となったことにより契約ID数は減少しました。
2023年3月期 決算まとめ
2023年3月期の決算まとめです。1点目は業績についてです。2023年3月期の売上高は121億7,000万円となり、過去最高を更新しました。2013年3月期から11年連続の増収となります。営業利益は18億4,100万円となりました。
2点目は、事業の状況についてです。ISP「ASAHIネット」のFTTH接続サービスの契約数は、前年同期末比で7,000ID増の45万5,000IDとなりました。VNE「v6 コネクト」の売上高は、前年同期比25.5パーセント増の17億3,500万円となりました。主に提携事業者が取り扱うフレッツ光の1回線当たりのトラフィック増加による増収です。提携事業者数は1社増加し累計12社となりました。教育支援サービス「manaba」の契約ID数は前年同期末比で7,000ID減の81万8,000IDとなりました。全学導入校は100校となりました。
業績予想
ここからは、2024年3月期の計画についてご説明します。2024年3月期は「ISP・VNE・manaba それぞれの収益増加に向け具体的な成果を積み上げる」と方針を掲げました。
ISP「ASAHIネット」は「光コラボ」やフレッツサービスを軸としたFTTH接続サービスとモバイル接続サービスの契約数増加、VNE「v6 コネクト」は毎年増加するトラフィックと通信品質の取り組み、教育支援サービス「manaba」は「教育の質保証」を実現するためのLMS機能の開発に取り組みます。
この方針のもと、業績予想は売上高126億円、前年同期比4億3,000万円の増収、増収率は3.5パーセントを見込みます。費用は回線仕入や通信品質を維持するための通品費や設備投資による減価償却費の増加に加えて、前年から取り組みを始めている基幹システムの更改に取り組みながら営業利益は過去最高益となる20億円を見込みます。前年同期比1億5,900万円の増益で、増益率は8.6パーセントになります。
経常利益は20億円、前年同期比1億5,300万円の増益で、増益率は8.3パーセントになります。当期純利益は14億円、前年同期比1億1,500万円の増益で、増益率8.9パーセントを計画しております。
2024年3月期の設備投資は20億円を予定しております。今後も増加するトラフィックに対して通信品質を維持しながら利益を確保するためのネットワーク関連の設備投資や定期的に更新が必要なサーバ領域の更改を予定しています。基幹システムの更改については2025年3月期末までの複数年計画を進めております。その結果、2024年3月期のEBITDAは30億、EBITDAマージンは23.8パーセントになる見込みです。
株主還元
株主還元の計画についてご説明します。先ほどの説明でもお伝えしましたが、当社は株主に対する利益還元を重要な経営課題の1つとして認識しており、将来の事業展開と経営体質の強化のために内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続していくことを基本方針としています。
この利益還元の方針を踏まえ、2024年3月期の配当金は中間配当で11円50銭、期末配当で11円50銭、年間23円を計画しています。今後も状況を踏まえながら、適切に判断していきます
ISP「ASAHIネット」の計画
「ASAHIネット」の売上高は、FTTH接続サービスおよびモバイル接続サービスの契約数に比例して増加しますが、2023年3月末の契約数推移でご説明したとおりFTTH接続サービスの契約数の増加が鈍化していることが現時点での課題と捉えており、契約数を増加させるための具体的な活動を進めてまいります。
1点目はNTTチャネルの強化です。光コラボレーションモデルの「AsahiNet 光」やNTT東西と協業して販売している「マンション全戸加入プラン」の拡大、NTT東西のフレッツ 光に当社プロバイダサービスのみを提供する「フレッツ 光ネクスト」などの販売を強化します。
2点目はWebチャネルの強化です。広告宣伝費や販売促進費を投下し当社Webサイト経由での見込顧客の獲得を進めます。Webサイトは2022年8月にリニューアルを行っております。サービスの申込を検討している顧客へ正しい案内が出来るような整備を進めております。
3点目は法人会員の強化です。当社は法人会員の契約数が個人会員を超えており、他ISP事業者と比較すると法人の構成比が高いことが特徴です。当社が選定される理由として固定IPサービスを利用したインターネット接続があります。FTTH接続サービスやモバイル接続サービスにおいてIPアドレスを固定することで多要素認証やインターネットを経由して遠隔からアクセスするなどの利用事例を伝えることで契約数の増加を計画しております。
当社は、第三者機関の調査により利用者満足度の高いインターネット通信サービスを選定する「RBB TODAY ブロードバンドアワード2022」においてプロバイダ部門総合の部で9年連続の最優秀賞を受賞したことに続き、「RBB TODAY テレワークアワード 2023」でもプロバイダ部門総合満足度1位を3年連続で受賞しました。
テレワークによる自宅作業と通勤を組み合わせた勤務体制をとる企業が増えており、インターネット環境の快適さはビジネスパーソンがプロバイダを選択する重要な指標となっています。そのような状況下において、最優秀賞を受賞できたことは当社が高品質で適切な価格のサービスを提供出来ていることと捉えておりさらなるインターネット接続契約数の増加を目指します。
VNE「v6 コネクト」の計画
続いて、VNE「v6 コネクト」の計画についてご説明します。VNE「v6 コネクト」は、引き続き提携事業者との協業関係を維持すること、および新たなVNO事業者(電気通信事業者)との提携を拡大させることに注力して取り組みます。
インターネット上で中継されるスポーツイベントの視聴やオンラインゲームのアップデートなどによるダウンロードされたコンテンツ利用は将来に向けて増加することを予想しており、今後も増加の一途をたどると予測しております。
「v6 コネクト」はVNO事業者が利用した通信量に応じて利用料が発生するサービスです。VNO事業者の事業展開においては、「v6 コネクト」を用いた通信品質の維持と事業構造におけるコストコントロールは大きな意味を持ちます。当社は提携するVNO事業者の事業拡大や維持に向けて価格調整やネットワークの維持コストを効率化することで、提携事業者と当社がパートナーとして中期的な関係性を維持することに努めます。
当社は今後も増加するトラフィックに向けてネットワーク設備の拡張を進めてきました。2024年3月期は、NTT東西のNGN網と相互接続しているIPv6ネットワークの構成を一部見直すことにより、従来よりも費用の増加を抑えながら取り扱いトラフィック量を増やす取り組みを進めます。
教育支援サービス「manaba」の取り組み
教育支援サービス「manaba」の計画についてご説明します。
まずは2024年3月期売上の減収見込みについてです。要因の1点目は、当社と株式会社レスポンが2023年3月末で「respon」販売店契約を終了したことに伴い売上および売上原価が減少します。この影響により約9,000万円の減収を見込みます。
2点目は2023年4月以降に7大学の解約を予定している影響により約4,000万円の減収を見込みます。解約の理由は、「Google Workspace」や「Microsoft 365」の利用拡大や大学内で利用する他サービスとの統廃合によるものです。
大学をはじめとする教育機関は2020年から新型コロナウイルス感染症の対策をしながらも学生に教育機会を提供し続けるため、授業を対面からオンラインへ大きく変化を遂げました。変化の過程で文部科学省が進める教育のDX化が後押しされたこともあり、「manaba」をはじめとするLMS(ラーニング・マネジメント・サービス)やポートフォリオは新たな価値を求められております。
このような状況において、2024年3月期は引き続き「教育の質保証」や大学IRを実現するために必要なサービスの提供を強化します。学習成果の蓄積と可視化をするためのポートフォリオ拡充は2023年4月から提供開始しました。「respon」の代替となる出席管理サービスは出席情報を教務システムと連携するための機能拡充を行いました。
「『教育の質保証』といえばmanaba」と言われるよう、これらの取り組みを深化させることにより、当社は「manaba」を多様な学びを支えるサービスとして、大学教育へ貢献していきます。