2023年4月より老齢年金の支給水準がアップしましたが、年金だけで生活するのは難しいのが現状です。
厚生年金に加入している人は国民年金加入者より年金額は多くなりますが、いくらくらいもらえるのか気になるでしょう。
この記事では、厚生年金の月額が15万円以上の人が何割くらいかについて解説します。
税金などを天引きした後の手取り額も紹介しますので、老後の生活設計に役立ててください。
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1. 厚生年金の月額
まず最初に、厚生年金の月額について現状を確認しましょう。
厚生年金加入者は老齢基礎年金に加え老齢厚生年金を受け取れます。そのため、本記事でご紹介する厚生年金の金額には、基礎年金部分が含まれます。
1.1 平均月額は14万3965円
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2021年度末の厚生年金の受給権者の平均月額は14万3965円です。
65歳以上に限定すると、男性は月額16万9006円、女性は10万9261円と男性の方が6万円近く多い状況です。
1.2 月額15万円以上は46.1%
厚生年金の月額が15万円以上ある人は、受給権者全体の46.1%です。
半数近くの人が月額15万円以上の年金を受け取れることになります。
ただし、全体の15%以上の人が20万円以上の年金を受け取れるのに対し、25%以上の人は10万以下しか受け取れない状況です。
厚生年金加入期間や年収などによって月額は大きく異なります。
1.3 男性は64.2%、女性は9.3%
厚生年金の月額を男女別に見ると、月額15万円以上ある人の割合は男性が64.2%であるのに対し、女性は9.3%にすぎません。
男女の給与格差もありますが、女性は出産や育児のため厚生年金の加入期間が短いことも大きな原因です。
2. 年金から天引きされる税金と社会保険料
年金も所得となるため、厚生年金15万円以上の人は年金からも税金が引かれます。
また、勤務先で社会保険に加入している人以外は、65歳から健康保険料や介護保険料が年金から天引きされます。
2.1 天引きされる税金
年金から給与天引きされる税金は所得税と住民税です。
年金収入から公的年金等控除や各種控除を差し引いて課税所得を計算します。
所得税は年金所得に5.105%(復興特別所得税を含む)を掛けて計算します。
- 課税所得=年金収入-公的年金等控除-各種控除
- 所得税額=課税所得×5.105%
所得から控除される主なものは次の通りです。
- 基礎控除:48万円
- 公的年金等控除:65歳以上は110万円
- 配偶者控除:配偶者が70歳未満なら38万円、70歳以上なら48万円
- 社会保険料:国民健康保険料(75歳以上は後期高齢者医療保険料)や介護保険料
70歳未満の配偶者がいて社会保険料の支払いが年間15万円、上記以外の控除がない場合、所得税額は次の通りです。
上記4つの控除額は合計211万円になります。
- 年金月額15万円の人:年金収入が180万円で課税所得が0円になるため所得税は0円
- 年金月額25万円の人:課税所得89万円(=300万円-211万円)に税率を掛け約4.5万円
住民税は居住地によって税率などが異なりますが、課税所得の約10%と仮定すると税額は次の通りです。
住民税の基礎控除は43万円であるため、控除額合計は206万円です。
- 年金月額15万円の人:課税所得が0円、住民税も0円
- 年金月額25万円の人:課税所得94万円(300万円-206万円)に税率を掛け約9万4000円
上記の例では、年金月額15万円ならば所得税と住民税はかかりません。
年金月額25万円の場合、所得税と住民税の合計は年間約14万円(月額にすると約1万2000円)です。
2.2 天引きされる社会保険料
年金から天引きされる社会保険料には、国民健康保険料(75歳以上は後期高齢者医療保険)と介護保険料があります。
国民健康保険料は世帯単位で計算し世帯主が支払います。
都道府県や自治体によって保険料は異なりますが、年金月額10万円の配偶者がいる場合の2人分の社会保険料の目安は次の通りです。
- 年金月額15万円の人:年額約12万円(月額約1万円)
- 年金月額25万円の人:年額約24万円(月額約2万円)
2.3 天引き後の年金額
天引き後の年金額は、支給される年金額や家族状況、各種控除などによって異なります。
70歳未満で年金月額10万円の配偶者がいる場合、年金額15万円の人は、税金はかかりませんが社会保険料が約1万円天引きされて手取りは約14万円です。
年金額25万円の場合、税金は約1万2000円、社会保険料が約2万円天引きされるため、手取りは22万円を少し下回ります。
3. 年金額を踏まえた老後対策を
2021年度末の厚生年金の受給権者の年金額は平均月額14万3965円で、月額が15万円以上ある人は全体の46.1%をしめます。
ただし、男女別に見ると、月額15万円以上の割合は男性は64.2%、女性は9.3%と大きな格差があります。
年金からは税金や社会保険料が控除されるため、実際の手取り額は少なくなるでしょう。
税金などを計算するときは、基礎控除(所得税計算は48万円、住民税や社会保険料計算は43万円)と公的年金等控除(65歳以上は110万円)があるため税額や保険料はある程度抑えられます。
年金から天引きされる税金なども考慮して、老後の家計を検討しましょう。
参考資料
西岡 秀泰