厚生労働省は2023年1月20日に、年金額を67歳以下で2.2%、68歳以上には1.9%引き上げると発表しました。
しかし、物価上昇率が2.5%で実質は目減りしている状況です。
だからこそ、貴重な生活の財源でもある厚生年金や国民年金等の年金額を少しでも増やして、老後の生活を過ごしたいと思う人もいるのではないでしょうか。
本記事では、繰下げ受給の概要と、実際に繰下げて受け取った場合の損益分岐点について解説します。
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1. 年金の繰下げ受給とは?
年金の繰下げ受給とは、通常65歳で受け取る年金を、66歳以降に繰り下げる制度のことです。
繰下げは、66歳から75歳までの間で行えます。
繰り下げた期間に応じて年金額が増える制度となっていて、受け取る金額は一生変わりません。
実際に繰下げした年金受給額の計算式は、以下の通りです。
- 繰下げ増額率=0.7%×繰下げた月数
厚生労働省は2022年12月に「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を発表しました。
結果によると、2021年の厚生年金繰下げ率は1.2%となっています。
まだ利用している人は少ないですが、将来の年金を増やせる制度なので、今後は繰下げ受給を検討する人も増えるでしょう。
とはいえ、繰下げ受給は年金の受給を遅らせる制度なので、損はしないのか、いつまで繰下げるべきか悩む人も多いかと思います。
次では、年金の繰下げ受給をいつ実施すればいいのか確認します。
2. 繰下げ受給の損益分岐点とは?
実際に年金を繰下げて受け取る場合に、何歳まで受給できれば損にならないか、損益分岐点を確認していきましょう。
厚生労働省が発表している「年金制度の仕組みと考え方」では、繰り下げ受給を行った場合の年金額の増減率を公表しています。
繰下げ期間を1年間伸ばすと、年金の増額率は「12ヵ月×0.7%=8.4%」となります。
75歳まで繰下げた場合、増額率は「120ヵ月×0.7%=84%」です。
損益分岐点を考える場合は「繰下げ期間」を「年金の増額率」で割ると損益分岐点がわかります。
65歳で受け取る年金を100とすると、計算式は以下の通りです。
100×繰下げ期間÷年金の増額率
仮に、66歳と70歳まで年金の受給を繰下げた場合、何歳に到達すれば恩恵が受けられるか確認していきましょう。
- 66歳:100×1÷8.4=11.9(11年9ヵ月)
66歳から11年9ヵ月後の、77歳9ヵ月まで受給できれば受給総額が大きくなります。
70歳まで繰り下げた場合も確認しましょう。
- 70歳:100×5÷42=11.9(11年9ヵ月)
70歳から11年9ヵ月後の、81歳9ヵ月まで受給できると受給総額が大きくなります。
66歳と70歳の場合で比較すると、どちらも計算結果は同じになりました。
つまり、66歳から75歳のいずれのタイミングで年金を繰り下げるにしても、繰り下げた年齢から11年9ヵ月が損益分岐点となります。
3. 平均寿命からみる繰下げ受給のタイミング
2022年7月29日に厚生労働省が発表した「簡易生命表」によると、平均寿命は男性で81.47歳、女性は87.57歳でした。
平均寿命までは年金を受給できると仮定した場合、受給開始のタイミングは次の通りです。
- 男性:81.47-11.9=69.57歳
- 女性:87.57-11.9=75.67歳
平均寿命から考える場合は、男性は69歳、女性は75歳まで繰り下げて受給すると良いでしょう。
4. 年金の受給のタイミングは総合的な観点で判断
年金の繰下げ受給は、生涯にわたって増額した年金が受けられるので、増やして受け取りたいと考える人もいるでしょう。
しかし、年金が増額されると、社会保険料や税金の負担が増えるデメリットもあります。
- 社会保険料や税金の負担
- 繰り下げる期間の生活費の財源
- 資産が枯渇するタイミング
繰下げ受給をするタイミングは、上記の点も考慮しながら慎重に検討しましょう。
参考資料
川辺 拓也