豊かな生活を過ごすためには貯蓄が重要になります。

一般的に老後スタートの時期とされる60歳代では、貯蓄ができている人とできていない人で二極化していることをご存知でしょうか。

また、昨今の物価高によって生活が苦しくなっている人もいます。

今回は60歳代の貯蓄の現状と物価高の現状について解説します。

60歳代の貯蓄の現状

60歳代の人はどれくらいの貯蓄があるのでしょうか。

2022年の金融広報中央委員会によるアンケート調査結果は以下の表の通りです。

【世帯主の年齢別金融資産保有額】

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」から筆者作成

3000万円以上の金融資産を保有する世帯が26%占めるのに対し、1000万円未満の世帯が41%と多い割合となっています。

貯蓄100万円未満の世帯も全体の7.7%を占めており、3000万円以上の貯蓄がある人も多くいる中で、貯蓄の額は二極化していることがわかります。

60歳代はどのような金融資産を保有している?

ひとことに金融資産と言っても、預貯金だけを指すわけではありません。

ここでは60歳代の方がどのような金融商品を保有しているかについて、見ていきましょう。

【世帯主年齢別種類別金融資産保有額(単位:万円)】

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」から筆者作成

同じく金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」によると、預貯金834万円で株式が321万円。さらに生命保険219万円と続きます。

年齢を重ねるごとに預貯金の額とともに株式や債券、投資信託など投資性資産の保有額が増えていくことがわかります。

貯蓄に余裕が出てくると、投資に挑戦する人も増えてくる傾向にあるといえます。

物価高の現状

ロシアによるウクライナ侵攻によって、資源国であるロシアから原油や小麦の輸出が激減したことが、現在の物価高の原因のひとつと言われています。

日本特有の原因として、円安が進行したこともあげられます。

2022年からアメリカの中央銀行であるFRBが政策金利の引き上げを継続して実施したことで、日米の金利差が開いている昨今。

円安が進行したことで、海外からの輸入製品は値上がりしているのです。

長らく日本はデフレに苦しんでいましたが、2022年の日本の消費者物価指数は2020年を基準として2.5%の上昇となりました。

このような物価高の現状においても、将来に向けた貯蓄は少なからず必要になるでしょう。

おすすめの貯蓄方法

では、60歳代に向けて貯蓄をするにはどのような方法があるのでしょうか。

おすすめの貯蓄方法をご紹介します。

1. iDeCo

iDeCoは自分で拠出する金額を決める、個人型確定拠出年金制度です。

出所:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の特徴」

毎月一定額を積み立てることで、老後資金を準備することができます。

iDeCoでは、拠出したお金を株式や債券などに投資する「投資信託」で運用することが可能です。

リスクはありますが、運用がうまくいけば拠出した金額以上にお金を増やすことができます。

また、iDeCoは拠出した金額が全額所得控除の対象となりますので、節税対策としても有効です。

ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出すことができません。

老後資金を貯めるのに向いている制度ですが、住宅購入資金や子供の教育資金に使うことはできないので注意しましょう。

2. 株式投資

60歳代でも多くの割合で活用しているのが株式投資です。

個別の企業に投資をすることで、配当や株主優待を受け取ることができます。

株式投資では自分の好きな企業を応援するつもりで投資をするのもよいでしょう。

ただし、株式投資はリスクも高いため、生活資金ではない余裕資金で行う必要があります。

3. 投資信託

投資信託は株や債券などで運用する金融商品で、証券会社や銀行で購入することが可能です。

投資信託は少額でさまざまな資産に分散投資をすることができますので、初心者にも向いていると言われる金融商品です。

毎月コツコツと貯めていくのに向いていますが、預貯金と違い元本が減るリスクもある点には注意が必要です。

インフレも想定してコツコツ貯蓄をする必要

ある程度の預貯金が多くあれば、老後は安心といえます。一方で、預貯金はインフレに弱い資産です。

今後も物価高が継続する可能性があるので、インフレ対策も検討する必要があるでしょう。

多額の貯蓄をするのは、短期間では難しいものです。60歳代の貯蓄事情が二極化しているのも、決して退職金だけが理由ではありません。

老後を見据え、現役時代から長い年月をかけてコツコツと準備することが大切です。

参考資料

太田 彩子