帝国データバンクは2023年4月28日、5月の食品値上げが800品目を超える予想を発表しました。

ラッシュは落ち着いたものの、6月以降も約3300品目の値上げが控えているとし、2年連続の値上げの夏となりそうです。

2019年6月には金融庁金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書で「老後2000万円問題」が話題となりました。

老後の必要資金は家庭によって異なりますが、このまま値上げが続けば、2000万円の数字はますますあてにならなくなりそうです。

では、70歳代で2000万円の2倍にあたる4000万円の貯蓄があれば安心できるのでしょうか?

この記事では、70歳代で貯蓄4000万円以上ある人の割合や、4000万円あれば安心かどうかについて解説します。

50歳代からでも間に合う老後対策も紹介するので、安心して老後を迎えられるように準備を始めましょう。

70歳以上世帯の平均貯蓄額と分布

総務省の「家計調査(貯蓄・負債編)」によると、2021年の70歳以上・2人以上世帯の平均貯蓄額は2417万円です。

2000万円を大きく上回っているので老後準備ができている人が多いと感じるかもしれませんが、実際の準備状況は世帯ごとに大きく異なります。

出所:総務省「家計調査(貯蓄・負債編)二人以上の世帯」のデータを参考に筆者作成

2000万円以上の貯蓄がある世帯が約40%を占める一方、1000万円未満の世帯も40%近くいる状況です。

また、4000万円以上の貯蓄がある世帯は17.1%と、一定割合の人が高額の貯蓄を準備してるといえます。

70歳代で貯蓄4000万円以上あれば安心?

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70歳代で貯蓄4000万円あれば、老後はお金の心配をしなくて済むのでしょうか。

老後の収入や支出がいくらか、何歳まで生きるか、介護など思わぬ費用が発生しないか、などによって状況は変わります。

具体的な数字を想定して概算してみましょう。

次のモデルケースで試算します。

  • 70歳の夫婦2人世帯で2人とも90歳まで生きる
  • 収入は夫婦2人で年金月24万円、生活費は30万円

上記ケースでは毎月の収支は6万円の赤字です。

20年間毎月6万円の貯蓄を取り崩すと仮定すると、取り崩し額の合計は1440万円(=6万円×240か月)です。

4000万円あれば、100歳まででも大丈夫です。

一方、夫婦とも国民年金だけで年金収入月13万円くらいなら、90歳までに4080万円(=赤字17万円×240か月)必要となり貯蓄はギリギリです。

長生きすると、老後資金が不足する可能性もあります。

年金以外の収入があったり、生活費を抑えれば余裕ができる一方、家の改修や介護施設入所などでお金がかかれば貯蓄が足りなくなる可能性もあります。

50歳代から始める老後対策3選

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子どもの教育費が一段落ついた50歳代以降は、老後資金を貯める大事な時期です。

さまざまな老後対策がありますが、ここではおすすめの老後対策を3つ紹介します。

対策1. iDeCoを始める

老後資金を貯める対策のひとつは、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)です。

iDeCoは国民の老後資金形成を支援する目的で国が設けた私的年金制度で、税制上の手厚い優遇措置が最大のメリットです。

  • 掛け金は全額所得控除の対象
  • 運用益は非課税
  • 受け取る年金は公的年金等控除(一時金は退職所得控除)の対象

投資先は株式や不動産、債券の投資信託が中心です。

リスクのある商品は絶対にやらないという人には、定期預金という選択肢もあります。

利息は期待できないですが、掛け金が全額所得控除されるため、一定の節税効果が期待できます。

また、つみたてNISA(小規模投資非課税制度)という選択肢もあります。

税制上の優遇措置はiDeCoの方が手厚いですが、いつでも換金できるというメリットがあります。

対策2. 株式投資や不動産投資などで資産運用する

投資信託ではなく自分で積極的に資産運用してお金を増やしたいと考える人は、株式投資や不動産投資も選択肢の1つです。

ただし、複数の銘柄に分散投資される投資信託よりもハイリスクハイリターンの投資になります。

投資経験のない人は少額から投資を始め、知識や経験を積んでから少しずつ投資額を増やすといいでしょう。

また、賃貸目的の不動産投資は、投資物件によっては安定した収益を得られることもあります。

対策3. 定年後にできる仕事を準備する

老後対策には、老後資金を貯める以外にも老後の収入を増やすという方法があります。

現役時代と同様の収入は難しいですが、年金で足りない分を稼げれば貯蓄を取り崩す必要はありません。

内閣府の「高齢社会白書」によると、高齢者の就業率は年々上昇しており、2021年は次の通りです。

  • 65歳以上69歳以下:50.3%
  • 70歳以上74歳以下:32.6%
  • 75歳以上:10.5%

老後に稼げる資格を取得したり、副業で経験を積んで定年後に本格的に仕事を始めるなど、現役時代に老後の仕事を準備するといいでしょう。

老後資産を考えよう

70歳以上で貯蓄4000万円以上ある世帯(2人以上世帯)の割合は17.1%です。

ただし、年金が少ない人や贅沢な生活をしている人などは、「4000万円の貯蓄があれば老後は安心」とは言い切れません。

子どもの教育費が一段落ついた50歳代以降は、老後資金を貯める大事な時期です。

本記事を参考に、自分にあった老後対策を始めましょう。

参考資料

西岡 秀泰