2023年3月29日に行われた、株式会社シイエム・シイKabu Berry Lab オンラインIRセミナーの内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社シイエム・シイ 取締役執行役員 杉原修巳 氏
本発表のコンセプト
杉原修巳氏(以下、杉原):株式会社シイエム・シイの杉原です。本日は、どうぞよろしくお願いします。
これより、シイエム・シイについてご紹介します。本日の説明会のコンセプトは、「DISCOVER! CMC」です。シイエム・シイがどのような会社なのか、1つでも多くの発見をしていただけたらと思っています。
企業プロフィール
企業概要についてご紹介します。当社の設立は1962年で、昨年5月に創立60周年を迎えました。事業内容は、技術情報を中心とした情報サービスの提供です。東証スタンダード市場、名証メイン市場に上場し、直近の時価総額は200億円弱となっています。
本社の所在地は愛知県名古屋市中区です。国内の拠点は、東京の東銀座、御成門、三田、そして大阪を含め、16拠点あります。国外に関しては、中国、東南アジア、アメリカ、ヨーロッパに14拠点です。グループ会社は、国内と国外を合わせて19社となっています。
沿革
沿革についてご説明します。シイエム・シイの歴史は、お客さま企業の技術情報を扱ってきた信頼の歴史であり、時代の変化に合わせ、商材の形を常に変化させてきた歴史でもあります。
創業時の商材はマイクロフィルムです。お客さま企業の設計図等を記録する、当時としては最新の技術でした。しかし、CD-ROM等の記録媒体が出てきたことにより、現在の売上はゼロとなっています。
その後、印刷事業への進出を経て、現在の主力商材である取扱説明書や修理書といったマニュアル制作の分野に進出しました。本日ご視聴いただいているみなさまも、車のダッシュボードに入っている500ページ程度の取扱説明書をご覧になったことがあると思います。シイエム・シイは、まさにその取扱説明書のデータ制作を手がけており、マニュアルに関するトップ企業です。
マニュアルというのは、製品に関わる技術情報の塊です。つまり、マニュアルを制作するということは、お客さま企業の製品・技術情報をすみからすみまで知り尽くさないと、制作することができません。
また、製品と技術情報を適切に整理整頓しておかないと、わかりやすいマニュアルを作ることができません。このようなマニュアル制作で培った、お客さま企業の製品・技術情報への理解と、情報を整理整頓するノウハウを活かし、現在は業務標準、人財育成、販売戦略といった戦略支援の分野に事業を展開しています。まさにハードからソフトへ、「モノづくり」から「コトづくり」へと変化し続けています。
ビジネスモデル戦略
変化し続けるシイエム・シイのビジネスモデルをアニメーションにしました。
マニュアルは、技術情報、お客さま企業情報、商品知識、製品知識、カン・コツなどが詰まった情報の宝庫です。マニュアル制作を通じてお客さま企業を深く理解することにより、人財育成、業務標準、販売戦略など、戦略支援という新たな付加価値を提供することができます。また、戦略支援を行うことでユーザーを深く理解できるようになり、新たなマニュアル作りや、お客さま企業の製品開発に活かすことができます。
このビジネスモデルについてシイエム・シイでは、「インフィニティループ」と呼んでいます。このループを回し続けることで、他が真似できない、参入障壁の高いシイエム・シイ独自のビジネスの構築を目指しています。
お伝えしたいこと
私たちには、「業界のリーディング企業であること」「時代とともに変化していること」「好調な業績、強固な財務、機動的な資本政策が可能であること」という3つの特徴があります。本日はこれらの特徴について、みなさまにお伝えしたいと思います。
業界最大手企業
1つ目の特徴は、技術マニュアル業界におけるグローバルリーディングカンパニーであるということです。最大手の某自動車メーカーでは、技術マニュアルのシェアの約50パーセントをシイエム・シイが占めています。
この自動車メーカーとの長年にわたるマニュアル制作で得た、信頼とデータの蓄積を戦略支援に活用し、参入障壁の高いビジネスモデルを構築しています。このような経験とノウハウが、モビリティ業界における圧倒的な競争力を生み出しています。
業界最大手企業
競争力を支える人財もシイエム・シイの強みです。シイエム・シイには、マニュアルを執筆するテクニカルライターと呼ばれる社員が多数在籍しており、このうち、自動車整備士資格の保有者は100名以上で、特に難関資格と言われる1級整備士の資格保有者は30名以上在籍しています。
実際に自動車を分解し、整備できる、自動車を知り尽くしたプロフェッショナル人財を揃えることで、お客さま企業からの多様な難易度の高い要請に応えることができ、それが私たちの大きな強みとなっています。
成長(注力)市場への拡大
自動車で培った知見やノウハウを活かし、新たな市場での販路拡大も進めています。スライドに記載のとおり、建設機械、農業機械、航空機といったモビリティ市場や、それ以外の工作機械、医療機器、ロボット、医療医薬などの分野でも事業拡大を進めています。
グローバル市場への拡大
シイエム・シイのお客さま企業は、自動車をはじめ、積極的にグローバル展開を行っています。このようなお客さま企業の動きに対応するために、シイエム・シイも海外市場への展開を加速しています。
海外拠点における事業拡大のほか、海外仕向けの売上が増加し、前期の2022年9月期では国内と海外の仕向け先別の売上高が約半々になりました。
マニュアルの本質
2つ目の特徴は、時代に合わせて常に変化してきたということです。
ユーザーにとってマニュアルとは、製品の便利な使い方を知るためのものと考えています。従来のマニュアルは、紙の冊子で「読むもの」でしたが、電子マニュアルや動画マニュアルの登場により、「見るもの」へと変わり、さらに最近ではAR、VRといった「体験するもの」に変化しています。
シイエム・シイは、「情報を必要とする人に、必要な情報を、必要な時に、最適な方法で提供する」ことを突き詰めています。また、このようなマニュアルの本質を理解した上で、時代や技術、提供手段の変化に合わせて、最適なコンテンツを制作し、提供し続けています。
M&Aを推進し、商材を拡充
技術や商材の変化に向けて、M&Aを積極的に推進しています。メイン社の買収により教育、人財関連の強化を図り、フィット社の資本業務提携により電子マニュアルのデジタルプラットフォームを取得し、木村情報技術との資本業務提携によりAI関連の商材を拡充しました。
今後も、シイエム・シイの事業戦略と親和性があり、尖った技術や商材を持つ企業とのM&Aやアライアンスを進め、新たな商材の開発や技術の獲得を積極的に進めていきます。
M&Aを推進し、お客さま企業を拡大
販路についてもM&Aを活用し、業種とお客さま企業の拡大を図ってきました。自動車業界での地位を盤石とするためにCMCエクスマニコムを、医療医薬業界進出のためにCMCエクスメディカをそれぞれ買収しました。
シイエム・シイではM&Aを成長戦略のエンジンと捉え、販路拡大、商材拡充、技術獲得のための時間を買う、攻めのM&Aを積極的に進め、時代の変化に合わせて成長し続ける、サステナブルな経営を目指していきます。
社会課題に寄り添い、さらなる成長をめざして
現代は、企業の社会的責任が問われる時代となっています。シイエム・シイでは、従来からの成長戦略に加え、社会課題の解決に寄り添う商材の開発を進めています。ここでは社会課題、特に働き方改革に着目し、開発した商材を2つご紹介します。
社会課題に対応した新たなサービス
1つ目は、DXに悩む中堅・中小企業向けのサービス「KAIZEN FARM」です。こちらの「KAIZEN FARM」は、技術マニュアル制作で培った、情報整理のノウハウをクラウドでシステム化し、業務改善、業務効率化をサポートするツールです。
多くの企業がDXを進めるにあたり、何から手を付けてよいのか悩まれています。このような悩みを持つ企業に寄り添い、働き方改革をお手伝いするために開発しました。棚卸した業務手順等を、ボタン1つで電子マニュアルやAIチャットボットといった各種DXツールに連携できます。
社会課題に対応した新たなサービス
2つ目は、自動車の整備士不足や、業務の負担増加を解消するために開発した「楽々エーミング」です。この「楽々エーミング」は、シイエム・シイが技術マニュアル制作で培った、自動車整備に関する知識を活用し、自動車整備業界の働き方改革と、DX化をサポートする時短・効率化のアプリケーションです。
今後も、自動車の機能はますます高度化、複雑化していきます。シイエム・シイでは、自動車整備に関わる整備士の方々に寄り添い、このような方々が笑顔で働けるように商材開発を進め、社会課題の解決に努めていきます。
DX認定事業者の認定取得
「KAIZEN FARM」や「楽々エーミング」といったDX商材の開発等が評価され、昨年3月には、経済産業省によるDX認定を取得しました。DX認定とは、DX推進の準備が整っている企業を認定する制度のことです。
情報通信・サービス業に携わる東証上場企業は約1,100社ありますが、DX認定を取得している企業は10分の1以下の100社程度です。そのうち、スタンダード市場に上場している企業は6社しか存在しません。
このことからも、「シイエム・シイは意外とすごい会社なのではないか」と思っていただけると幸いです。今後もお客さま企業に寄り添い、DXを推進していきます。
今期、最高益を予想
3つ目の特徴は、好調な業績、強固な財務、機動的な資本政策です。まずは業績についてご説明します。シイエム・シイでは連結営業利益を経営の重要な指標としており、連結営業利益の増加とともに、利益率の上昇を目指しています。連結営業利益については2期連続の最高益で、今期についても3期連続の最高益を予想しています。
スライドには記載していませんが、売上高は横ばい傾向です。シイエム・シイでは、商材だけでなく、社内においてもDX化を進めており、売上を追うのではなく、利益の成長を目指しています。
上半期の業績予想を修正
今期については、3月に上半期の業績予想を大幅な増収増益へ上方修正しました。継続的な生産性向上の結果、技術マニュアルをはじめ、Manuals領域における期初の想定を超える受注に対応することができたこと、さらに繁忙だったこともあり、投資計画の一部を下期以降へ見直したことが修正の要因となっています。
前期比で増収増益、そして利益項目すべてにおいて、過去最高水準、最高益更新に向けて順調なスタートを切っています。
強固な財務基盤
財務についてご説明します。スライドに記載のとおり、自己資本比率は約8割と、強固な財務基盤となっています。シイエム・シイでは、この実質無借金経営を継続しつつ、豊富なキャッシュを有効活用するため、時代や環境変化に向けたM&Aや、研究開発投資等、持続的な成長に向けた先行投資を着実に進めていきます。もちろん株主還元についても同様です。
継続的な増配
資本政策についてご説明します。前期までに5年連続の増配を達成しており、今期も業績が好調のため6期連続の増配を予想しています。この6年間で配当金額は2.5倍になりました。
シイエム・シイでは、継続的に安定的な増配を目指す方針のもと、引き続き、株主のみなさまへの還元を目指していきます。
機動的な資本政策
増配だけではなく、過去6年間において株式分割を2回、自己株式取得を6回と、積極的に資本政策を実施しています。今後も市場や株価動向を見ながら、機動的な資本政策を検討していきます。
ここまでのご説明で、シイエム・シイは「業績好調、財務盤石、積極的な株主還元の会社」であることをお伝えできたのではないかと思います。
ご説明は以上となりますが、シイエム・シイについて、何か発見していただけましたでしょうか? 少しでも多くの方に興味を持っていただけたら幸いです。
質疑応答:好調な海外向け受注の背景について
司会者:「海外向けの受注が好調ですが、こちらについて継続性はありますか? それとも一過性で終わる売上と考えるべきでしょうか? 好調の背景について、わかっていることがあれば教えてください」というご質問です。
杉原:コロナ禍により、海外向けの受注については非常に大きなダメージを受けました。私たちの技術マニュアルのビジネスは、技術情報に強いことを活かした販売促進が重要となるのですが、モーターショーのようなリアルイベントがほぼなくなってしまいました。
しかし、ここ最近はリアルイベントが復調してきましたし、国内メーカーもどんどん開発拠点を海外に出しているため、私たちもそこにしっかりついていく必要があると考えています。一時的なものではなく、お客さま企業のグローバル展開が続く限り、ビジネスを拡大していく必要があると思っています。
質疑応答:収益構造の変化について
司会者:「デジタル技術を活用した商材の提供が加速し、収益構造が変化しつつあるようですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?」というご質問です。
杉原:コロナ禍により、リアルイベントをはじめ、人財教育などの研修会がなくなってしまいましたが、その後e-ラーニング等、Webによる教育が大分浸透してきました。コロナ禍が沈静化してきているものの、このような新しいかたちの便利さに気づき、「わざわざ集まる必要はないのではないか」という考えも広がってきています。
最近では、お客さま企業のDX化支援策も増えてきています。お客さまの多くは大企業で、非常に多くのデータを所有されており、それをどのように整理し、活用していくのかについて、悩まれていることが多いです。
私たちはすべてのデータに触れるわけではないのですが、これまでマニュアル制作で関わってきた技術情報や製品情報をうまく整理整頓し、情報の価値をより高めるビジネスを展開しています。お客さま企業に寄り添い、情報を活用できるようにお手伝いをしています。
質疑応答:上方修正の詳細について
司会者:「上方修正の開示について、より詳細に聞かせてください。また、今回の受注というのは一過性のものでしょうか? それとも継続的な受注と考えてよいのでしょうか?」というご質問です。
杉原:今回、売上利益に大きく貢献したのは、Manuals領域です。業務をスタートさせた時に、お客さま企業からいろいろなご要望をいただき、私たちが考えていた以上に案件の規模が拡大したということが1つ挙げられます。
また、私たちの事業は、どうしてもお客さま企業の動向に左右されるところがあります。下期以降に納品するつもりで予算を立てていても、一部前倒しとなり、私たちにとっての第2四半期である3月末までの納品を頼まれる案件もありました。私たちはこれを「期ズレ」と呼んでいます。これは文字通り、受注はしているものの、売上の時期がずれるという意味です。
通常、後ろにずれることが多いのですが、今回は前にずれたものが多くありました。しかし、このようにお客さまのご要望にお答えすることができたのは、これまで社内でDX化を進めてきたことが大きいと思います。
マニュアルの編集用ツールをはじめ、ソフトウェアについても全部自社制作です。ここ数年はなるべく人手を掛けず、システムで動かせるように取り組んできました。このような生産性の向上により、お客さま企業のご要望にお応えすることができ、結果として想定以上の業績になったのだと考えています。
質疑応答:利益率向上の理由について
司会者:「ここ数年の売上高は、微増の状態が続いていますが、利益の伸びが大きい理由を教えてください。これは、御社の構造改革の成果なのでしょうか? 受注する仕事の内容が変化していると考えるべきでしょうか?」というご質問です。
杉原:こちらは2つ要因があります。1つは、商材がDXあるいはデジタルに変化してきていることです。例えばリアルイベントを開催しようとすると、人と物が動くため費用が大きくなりますが、Web開催ではそのようなことがなく、売上自体は増えないものの、利益がしっかり確保されるということです。
もう1つが、ソフトウェアの開発強化により、社内の生産性を向上させたことです。コストダウンと聞くと、人を削減するイメージを持たれがちですが、私たちにとっては、コストダウンではなく、キャパシティを向上させているという言い回しが近いと思います。
ご説明になっているかどうか自信はありませんが、要約すると、商材そのものも転換しつつあります。また、社内における生産性向上が非常に大きいです。
司会者:同じものを受注して届けるにしても、原価を安くして届けられれば、しっかりと利益を出すことができるということでしょうか?
杉原:おっしゃるとおりです。
質疑応答:株主還元の考え方について
司会者:「配当は連続増配ですが、今後の株主還元、配当性向、自社株買い等について、考え方を教えていただけたらと思います」というご質問です。
杉原:私たちは業績がよい時に配当を出して、落ちた時に減配することはしたくないと思っています。会社としては私たちの株を保有している株主のみなさまに喜んでいただくために、毎年継続的に配当を増やしていくという明確な方針を持っています。
ただし配当性向は、数字としては示していません。私たちは右肩上がりの利益を目指しますが、環境の変化やお客さまの企業動向によるアップダウンがあると思います。そのような時でも配当を増やしていくためには、配当性向を示すよりも実績として増配を続けていくほうが重要だと考えています。
質疑応答:顧客の増やし方について
司会者:「売上が増えていく時は、現在取引しているお客さまから新たな仕事が増えていくパターンが多いのでしょうか? それとも、別の会社から仕事が来ることが多いのでしょうか?」というご質問です。
杉原:私たちの主力ビジネスである技術マニュアルの世界は、ありがたいことに自動車メーカーを中心に非常に幅広いお客さまと取引しています。その中で仕事のシェアに加え、種類も増やしていくビジネスを続けています。もちろん、新たなお客さまも増やしていかなければなりません。
私たちは自動車からスタートしていますが、現在は工作機械など、さまざまな分野に進出しています。しかし技術マニュアルの世界は、お客さまの製品を知り尽くす過程が必要なため、毎年「じゃあ、10社ずつ増やす」ということが簡単にできない部分があります。時間をかけて信頼を得て、徐々に増やしていくものであり、倍々ゲームで増えていくかたちにはならないということです。
ただし技術マニュアルは、その製品の発売前の情報に触れていくビジネスです。そのため、一度入ると参入障壁が高いというメリットもあります。私たちがまだ開拓できていない業種、お客さまがいるため、1社ずつ丁寧に着実に増やしていきたいと考えています。
質疑応答:下期偏重の要因について
司会者:「四半期ごとに売上のブレがあり、第4四半期の売上が大きい傾向にある要因は何でしょうか?」というご質問です。
杉原:こちらはまさに、お客さま企業の動向に起因します。みなさまも感覚的にわかっているかもしれませんが、例えば新車は、秋頃にモーターショーがあります。日本でも同様の時期だと思いますが、それに合わせて新しい車種が出てきますので、私たちの決算にあたる9月に集中するのが最近の傾向です。
ただし、お客さま企業の動向により、時期をズラして新車を出すことになると、私たちはその自動車が出てくるまで売上を計上しないため、ブレが生じます。しかし、ここ2年、3年は、「9月に向けて」というのが多かったのは事実です。
質疑応答:「名証IR EXPO 2023」への参加について
司会者:「今年の『名証IR EXPO 2023』には参加されるのでしょうか? 昨年参加された時は大変参考になりました」というご質問です。
杉原:大変ありがたいお言葉をありがとうございます。参加するかしないかは、インサイダー情報にならないと思いますので、お話しします。
昨年は、私たちも気づきが多かったです。若手社員を中心にメンバーを組んだことで、教育の場にもなったと思っています。
視聴者の方からもそのような感想をいただけるのは本当にありがたいことです。自分たちでハードルを上げてはいけませんが、今年は昨年を超えるつもりで臨むことを検討しています。
司会者:「名証IR EXPO 2023」は9月8日、9月9日に行われる予定ですので、お願いします。
杉原:ぜひ、楽しみに待っていてください。
質疑応答:国内売上が減少し、海外売上が増加している理由について
司会者:「昨今、国内の売上は減少傾向で、海外の売上は増加傾向だと思います。その理由はどのようなことでしょうか?」というご質問です。
杉原:申し訳ありません。こちらは、私たちのご説明が不親切だったと思っています。「国内と海外半々です」という表現はわかりにくかったかもしれません。
売上の開示方法を少し変えており、国内・海外とご説明したのは、仕向けのことです。海外売上というのは、海外で売り上げているということではなく、「『海外仕向け』のものも入っている」ということです。
正確には、「国内仕向け」は最終的な売り先が国内であるということで、「海外仕向け」は最終的な売り先が海外になっているということです。
例えば自動車は、車種によっては「世界戦略車」としてグローバルで販売されるものがあります。私たちは自動車メーカーの本社宛てに納品しますが、仕向け地が中近東向けやヨーロッパ向けのものもあります。それを「海外仕向け」といっており、このような分け方をしているということです。
質疑応答:ManualsおよびKnowledgeサービスの伸びについて
司会者:「海外の売上増加に対し、ManualsとKnowledge、どちらのサービスの伸びが大きいのでしょうか?」というご質問です。
杉原:こちらも数字として開示していませんが、基本的には両方を伸ばしていかなければなりません。
これを私たちは「インフィニティループ」と呼んでいます。このようなループを描くかたちでビジネスを展開していくため、片方だけが大幅に伸びていくことはあまりありません。こちらをバランスよく、両方の輪がうまく回るように伸ばしていくということで、海外だけではなく国内も同様です。
質疑応答:決算説明会動画の公開について
司会者:「機関投資家向けの決算説明会を行っていると思いますが、『YouTube』やホームページなどで動画の公開を検討してもらえないでしょうか?」というご質問です。
杉原:以前はクローズな環境で決算説明を行っていました。しかしコロナ禍以降、先期の決算説明会からは動画を公開しており、ホームページのIR情報から視聴できます。
目標として、第2四半期終了時点と本決算終了時点の年2回、動画での説明会を行うことにしています。第2四半期の決算発表後、動画を公開することになると思います。
余談ですが、私たちの動画は社員が「iPhone」で撮影して、手作りで作成しています。
質疑応答:業務標準化のサービス需要について
司会者:「スライド4ページの業務標準化について、しっかりとした企業は業務標準化を行っていると思いますが、そうではない企業はその重要性がわからないと思います。どのような企業にこのサービスの需要があるのか教えてください」というご質問です。
杉原:おっしゃるとおり、大手企業であっても、熟練の技術者や匠の技を持つ方々の技能伝承をどうしていくか、真剣に悩んで向き合っている会社とそうではない会社があると思います。私たちはもちろん、前者のしっかり向き合っている会社と一緒に取り組みを進めてきました。
実は、私たちの課題に「業務の属人化」があったため、それをソフトウェアにして誰でも対応できるようにならないか考え、業務標準化や棚卸のノウハウを結集したオープンプラットフォーム「KAIZEN FARM」をリリースしました。今までは意識の高い大企業の一部で行っていたものを、中堅・中小企業でも気軽にできるようにしたかたちです。
世の中にDXという言葉が出てきて、政府にもデジタル庁ができるなど、何かしなければならないという機運は非常に高くなってきています。しかし、何をすればよいか入口から悩む中堅・中小企業のお客さまは多いです。私たちは、「まずは業務を『KAIZEN FARM』等を使って見える化し、どこに問題があるかを見つけて、その解決策としてさまざまなDX商材を含めて入れていきましょう」というビジネスを展開し始めているところです。
質疑応答:今後、車種が減った際の業績への影響について
司会者:「今後、車種が減ったら、御社の業績への影響も大きいと考えてよいですか?」というご質問です。
杉原:おっしゃるとおり、自動車メーカーは、「車種を減らしていこう」という大きな流れがあります。私たちも自動車だけではいけないということで、いろいろな業界に展開しています。一方で、ずいぶん前から「自動車業界は右肩上がりではない」と想定しながら動いてきていますが、思ったよりも車種は減っていないと感じています。
また、日本では電気自動車の数がまだ少ないですが、今後はEVやFCVなど、新しいかたちの自動車が出てきて、それに対応していくことになります。実は日本で最初に電気自動車のマニュアルを作ったのは、正確には私たちのグループ会社ですので、実績を持っています。
加えて、車種ではなく自動車の構造が非常にコネクテッドです。テスラ社ではそのような話が毎週のようにアップデートされていると思いますが、車自体がスマートフォンにタイヤを付けたようなイメージになってきています。
今までは、取扱説明書というとダッシュボードに入っている冊子のことで、そこに入れられる情報量は限られていました。コネクテッドのかたちで、スマートフォンやカーナビ等を使用して情報をどんどんアップデートしていけるようになると、入れられる情報は無限大に増えていきます。
私どもは、コンテンツそのものを制作している会社ですので、もちろん車種が減っていくという視点も持っていますが、情報量は増える可能性が高いというプラスの面もあると思っています。
質問者:アップデートされると、マニュアルの作り方もまったく異なりますよね。
杉原:おっしゃるとおりです。
質疑応答:平均的なマニュアル作成の期間と単価について
司会者:「一般的なマニュアルは、受注から売上計上までどのくらいの期間かかるのでしょうか? 平均的な期間や単価を教えてください」というご質問です。
杉原:こちらは本当にさまざまですが、車だと2年から3年かかるイメージです。まったく新しい車や車種、フルモデルチェンジ、一部のモデルチェンジの場合、短いものももちろんあります。単価については、私たちの秘中の秘ですので、大変申し訳ないのですが開示しません。
質疑応答:自動車以外の成長市場の売上が横ばいになっている理由について
司会者:「自動車以外の成長市場への進出とのことですが、売上が横ばいになっている理由について教えてください」というご質問です。
杉原:ここは非常にご説明がわかりにくく反省していますが、今はリアルなものからデジタルなものに切り替わっていく過程で、案件や商材の中身が変わってきています。新車発表会のようなイベントでは、まさに物や人が動くため、金額が大きく利益も相応です。
一方で、デジタル化が進み、イベントがWeb開催に変わってしまえば、人や物が動かなくなりますので、ボリュームとしては非常に小さくなります。しかし、原価は大幅に抑えることができるため、より利益を創出できるというのが、一番わかりやすい事例です。
マニュアルについても、社内のDXでソフトウェアを動かしたり、RPAのような業務を自動的にやってくれるロボットを導入したり、人手をかけずに作成していくことにより、利益率を上げていきたいと考えています。
質疑応答:ここ数年の従業員の減少について
司会者:「ここ数年、従業員が減少しているように見えます。マニュアルは労働集約型の特徴があると思うのですが、従業員が減っている原因について教えてください」というご質問です。
杉原:従業員数は、意図的に減らしているわけではありません。もともとのトップの方針でもあるのですが、私たちのビジネスは、従業員をどんどん増やして売上を伸ばしていくというものではありません。
また、マニュアルの制作現場が労働集約かと問われれば「以前はそうでした」とお答えしたほうが適切かもしれません。最もイメージしやすいマニュアルの制作現場は、パソコンの前に人がずらっと並び、ひたすら打ち込んでいるような場面だと思います。そのような現場は、労働集約と言えば労働集約です。
ただし、それだと人の動く時間に制限が出てきてしまいます。それをより自動化していくために、データの整理整頓、社内のDX、ロボットの導入などを進めているところです。従業員を増やさなくても業務が増やせるようにしています。
質疑応答:DOEの採用について
司会者:「増配を第一に考えていくということですが、配当方針で増配を第一にしている企業の中には、DOEを採用されているところが多々あります。DOEは検討されないのでしょうか?」というご質問です。
杉原:外に向けて開示はしていませんが、配当性向やDOEについては、私たちも社内で当然、意識はしていますし、検討もしています。しかし、現時点では、継続的で安定的な増配を基本方針としています。
DOEについては、今後の市場やほかの上場企業の動きも見ながら検討していきたいと思っています。「新たな指標の採用は絶対ない」と決めているわけではなく、現段階で明確にお話しできるのは、「継続的な増配」を行っていくということです。
質疑応答:AR自動車整備マニュアルの反響や利用者の声について
司会者:「『LBS(ローカルビジネスサテライト)』でAR自動車整備マニュアルが紹介されましたが、報道の反響や利用者側の声について、何かコメントをいただけますか?」というご質問です。
杉原:「AR修理書」については、現在、メーカーとともに開発を進めています。PoC(概念検証)という言い方があまり一般的ではないかもしれないので、プロトタイプを作成し、いろいろと議論をしているところです。
VRのゴーグル化をはじめ、ARも「LBS」で紹介されたのは「iPad」でかざす方法だったと思いますが、「Google Glass」のようなARのグラスやメガネのデバイスもどんどん新しくなってきていますので、そういったものの実証実験を継続して行っています。しかしながら、一般向けの販売や実用化にはまだ至っていないのが現状です。
ゴーグル等を実際に着用する整備現場の方からすると、「こんな重たいものを付けて作業できるか」といったこともありますので、今後、よりよいデバイスが出てくると、もう少し一般化してくるかもしれません。
マニュアルはコンテンツですので、今後、新しく出てくるグラスやゴーグルのデバイスに対応したかたちで、よりわかりやすくお見せできるようにしていくことが、私たちの使命だと思っています。
質疑応答:デジタル化への移行の難しさについて
司会者:「2019年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて業績を落とした後、会社の方針について、デジタル化を一層進めていくと説明されていました。すぐに変化させることはなかなか難しいと思いますが、移行における苦労話等がありましたら教えてください」というご質問です。
杉原:そのような意味では、まだ苦労している最中です。私たちも長期ビジョンの中では、今後、デジタル化へ向けて世の中が変化していくと考えていたものの、コロナ禍の3年間で、一気にそのスピード感がアップしました。DXという言葉も、おそらくコロナ禍になるまでは、ほぼ使われていなかったのではないかと思います。その前は、IT化という言葉が主流だったような気がします。
私たちも、何年か前にトップが「これからはデータが仕事をする時代になる」と言い始めた時には、「何を言っているんだろう」と思ったことがありました。しかし、コロナ禍を経て、DXという考え方が世の中に入ってきたため、会社自体も変わっていかなければならないと実感しています。
お客さま企業もそれまでは、「なんとなくやらないといけないんだろう」と思っていたものが、「本当にやらなければならない」ことになり、利害が一致したイメージです。
企業は本当に困らないと、なかなか動けないと思っています。デジタル庁や自治体等、国として取り組んでいくことになり、お尻に火がついて、動き始めてきました。
ここ数年は、私たちも会社として意識を変える取り組みを行い、準備してきたものの、従来からの業務もあるため、全社員が足並みを揃えて取り組んでいるかと言われると、まだそこには課題があると思っています。
司会者:たしかに、御社はコロナ禍に入る前も順調な業績を積み上げていたため、「そちらのほうで」と考えてもおかしくないですね。
杉原:おっしゃるとおりです。赤字になれば真剣に考えたと思いますが、そこは今まさに変えている最中です。
質疑応答:今後のM&Aの可能性について
司会者:「現在、御社は現金も潤沢にあり、財務がとても安定している状態に見えます。過去に何度かM&Aを実施しているということですが、より大規模な、もしくは頻度を増やすなど、M&Aを積極化する考えはありますか?」というご質問です。
杉原:私たちのM&Aには、方針が3つあります。1つ目は販路を拡大すること、2つ目は新たな技術や私たちに不足している技術を補うこと、3つ目は私たちと親和性の高い商材を獲得することです。この3つを明確な戦略として掲げています。
M&Aだけではなくアライアンスという方法もあります。必ずしも資本を過半数取らなければいけないとは考えていません。そこは幅広く検討しています。規模の大小もありますし、何よりもインサイダー規制に関わる部分ですので、具体的なお話は一切できませんが、そのような意味では、常にM&Aを検討しています。
質疑応答:財務が健全なことについて
司会者:「有利子負債が非常に少ないと感じています。安定経営を目指しているというお話がありましたが、もう少しこのあたりの企業理念についてお話しいただけますか?」というご質問です。
杉原:借入自体を否定しているわけではないのですが、私たちのビジネスそのものとしては、大変ありがたいことに、今のところ安定的なキャッシュフローを生んでおり、借入までして経営をする必要がない状況です。自分たちでキャッシュを持っていることによって、M&Aを始め、さまざまな研究開発についても機動的に動けるところが大きなメリットだと思っています。
財務戦略として、例えば、最適資本構成の問題等もあるかもしれませんが、そのために有利子負債を入れてROEを高めるようなかたちで資本政策をしていくことは、まったく考えていません。
質疑応答:シイエム・シイの社名について
司会者:「シイエム・シイの社名についてお聞きしたいと思います。これは中部マイクロセンターの頭文字から取ったと思っていますが、正しいのでしょうか?」というご質問です。
杉原:現在あまり表に出していませんが、シイエム・シイは、Creative Marketing Coordinatorの略です。しかしながら、中部マイクロセンターも略せばCMCになるため、間違いとは言い切れないところが私たちの悩みでもあります。
ただし、私どもの事業が、マーケティングの分野からデジタルの分野に変わってきていますので、実際のところ、Creative Marketing Coordinatorも、時代には合っていないと思っています。そのため、何かよい言葉がないかと考えているところです。
質疑応答:新規顧客の獲得や商談期間について
司会者:「新規顧客を増やしていくというお話がありました。『説明書を作ります』と言っても、『じゃあお願いします』とすぐに依頼する会社は、なかなかないと思います。最初の商談から受注にいたるまでの期間はどれくらいでしょうか?」というご質問です。
杉原:これはお客さまによってまったく違います。「Knowledge Connect」という商材のお話をしましたが、比較的簡易なものでよい場合は、商談を始めてから1ヶ月から2ヶ月で成約できるものもあります。
一方で、非常に大きなものになると、お客さまの製品を隅から隅まで知る必要があり、すぐにポンとできるものではないため、1年、2年、長ければ3年くらいかかるものもあります。
質疑応答:海外での営業受注状況について
司会者:「現在電気自動車は、自動車メーカーのみならず、中国等の新興メーカーや家電メーカーからも販売されており、裾野が広くなっているイメージがあります。そのようなところへの営業・受注状況はいかがでしょうか?」というご質問です。
杉原:こちらも具体的なお話はできないのですが、日本で販売を予定されているメーカーとは、お話をしているところがいくつかあります。これ以上は、申し訳ありませんが差し控えさせていただきます。
質疑応答:デジタル屋台について
司会者:「デジタル屋台のようなビジネスの展開はないのでしょうか? 御社とシナジーがあるビジネスだと思います」というご質問です。どちらかと言えば、ご提案ですね。
杉原:勉強不足で申し訳ありません。デジタル屋台とは、どのようなビジネスでしょうか?
司会者:「Google」で検索したところ、デジタル屋台とは、製造業においてセル生産方式の作業をITで支援する仕組みを指す言葉のようです。セル生産方式では、ラインで流れてきた製品に組付けを行う際に、1人、あるいは少数の作業者が組み立て作業から検査までを担当します。その組付け作業をITで支援するということですね。
杉原:製造現場におけるニーズも、非常に高まっています。まさに車の製造現場でも、大量の部品をラインで流していくかたちから、多品種少量になり、作り方も変わってきています。
また、車ではなく、精密製品等だったら、セル生産も非常に出ますので、おそらく私たちが取り組んでいる部分やIoTと呼ばれる部分との組み合わせになっていくと思います。さまざまなニーズを聞きながら、一部、実証実験をしているものもあるというイメージです。
質疑応答:DX認定取得のメリットについて
司会者:「DX認定を取得されたことについてうかがいます。取得している企業はとても少ないとのことですが、取得することでどのようなメリットがあるのでしょうか?」というご質問です。
杉原:私たちの取り組みを国に認定してもらうメリットの1つは、このようにIRでお話ができることです。さらに、今まで私たちはどちらかというと、大手のお客さまとしっかり作り込んでいくビジネスモデルでしたが、今後、サブスク型の数を獲得していくビジネスになった時にもメリットになると思います。DXや情報サービス業だと言いながらも、DX認定を取得していないところも多いため、差別化できる要因になると思っています。
杉原氏からのご挨拶
本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。みなさまから、さまざまなご意見をいただきました。今後の資本政策やIR、あるいは経営に活かしていけるようなお話もあったと思います。
本セミナーをきっかけに、私どもの企業にぜひ興味を持っていただき、みなさまが投資をお考えになる時に、頭の片隅にシイエム・シイという名前を思い浮かべていただけると幸いです。本日は本当にありがとうございました。